【B-36】(びーさんじゅうろく)

Consolidated Vultee B-36 "Peacemaker".

アメリカのコンソリデーテッド・ヴァルティ(コンベア)社が1940年代に開発し、アメリカ陸軍航空隊空軍で使用していた六発の超大型爆撃機戦略爆撃機)。
それまで「超重爆撃機」と呼ばれていたB-29に替わる大型機で、6基のレシプロエンジンを後ろ向きに取り付けた(プッシャー式)独特の形状をしていた。

本機は当初、アメリカ本土から大西洋を横断してヨーロッパを戦略爆撃できる機体として構想された*1
開発そのものは「テン・テン・ボマー(10,000ポンドの爆弾を搭載し、往復10,000マイルを無着陸で飛べる爆撃機)」として第二次世界大戦中に始められていたが、開発中に対戦相手の枢軸国降伏したため完成は急がれず、初飛行は1946年になった。
量産機の部隊配備は1948年から始められた*2が、現場では推力速度の不足*3などから評判はあまり芳しくなかった。

部隊配備中に朝鮮戦争が起きていたが、核戦争の勃発に対する備えが必要とされていた*4ことと、レシプロ推進のB-29B-50が共産軍のジェット戦闘機・MiG-15に翻弄され、多数撃墜されていたこともあって「戦術爆撃機」としての実戦投入は見送られた。
その後、亜音速で飛ぶことのできる純ジェット推進のB-47B-52が登場すると居場所を失い*5、1959年に全機が退役した。

スペックデータ

乗員15名
全長49.40m
全高14.25m
全幅70.10m
自重77,580kg
発動機P&WR-4360-53「ワスプ・メジャー」空冷4重星型28気筒×6基(出力:3,800馬力)
ジェネラルエレクトリックJ47?ターボジェット×4基(推力:23kN)
最大速度685km/h
航続距離11,000km/16,000km(フェリーフライト
武装M24A1(イスパノ・スイザ HS.404)20mm機関砲×16門、爆弾39,000kg


派生型(カッコ内は生産・改修機数)

  • XB-36(1機):
    非武装の試作原型機。
    エンジンはR-4360-25(3,000馬力)6基を搭載。
    この機体のみ突出しない操縦席風防を持つ。

  • YB-36(1機):
    増加試作機。
    機首形状が改良され、コックピットは上方に突き出した形状となった。

  • YB-36A:
    YB-36の降着装置?をシングルタイヤ式から4輪式に改装したもの。
    後にRB-36Eに改装された。

  • B-36A(22機):
    初期生産型。
    乗員訓練および試験用の機体で非武装。
    後に地上試験用の初号機を除き、RB-36Eに改装された。

  • XC-99(1機):
    B-36の主翼を流用して製作された超大型貨物輸送機。
    試作機1機のみが製作されたが輸送部隊に実戦配備された。

  • B-36B(62機):
    引き込み式銃座を搭載した改良型。
    エンジンはR-4360-41(3,500馬力)を6基搭載。
    一部発注機体はRB-36D、もしくはB-36Dとして完成した。
    後にB-36Dへ改装された。

    • RB-36B(39機):
      カメラを臨時に搭載した偵察型。

  • YB-36C:
    B型にR-4360-51エンジン(4,300馬力)を6基搭載し、プロペラを牽引式とした機体。
    計画のみ。

  • B-36C:
    YB-36の量産型。
    B-36Bとなり、製造されず。

  • B-36D(26機/B型67機):
    B型にJ47-GE-19ターボジェット4基を追加装備した型。
    エンジンは主翼端に2基ずつポッド装備された。

    • RB-36D(17機/7機*6):
      戦略偵察機型。
      第1爆弾倉が与圧カメラ区画であり、ほかに電子偵察機材も搭載していた。
      当初は核爆撃能力を有さなかったが、後に改装により付与された。

    • GRB-36D(10機):
      「FICON(戦闘機運送機)」計画のため搭載母機として改装された型。
      寄生戦闘機偵察機)としてGRF-84F「サンダーストリーク」を胴体下に搭載した。

  • RB-36E(21機):
    YB-36AおよびB-36AをRB-36D相当に改装した型。

  • B-36F(34機):
    D型のエンジン換装型。
    R-4360-53エンジン(3,800馬力)6基およびJ47-GE-19ターボジェット4基を搭載。

    • RB-36F(24機):
      RB-36Dと同様の戦略偵察機型。
      後に核爆撃能力付与。

    • GRB-36F(1機):
      GRB-36Dと同等の機体。試験用として改装された。

  • B-36H(83機):
    コックピット内を改装した型。
    搭載レーダーと内部システムを改良した。
    他はF型と同等。

    • RB-36H(73機):
      偵察型の最終モデルでRB-36Dと同様の戦略偵察機型。
      後に核爆撃能力付与。

  • B-36J(33機):
    最終生産モデル。
    搭載燃料増大、降着装置強化などを実施した。

  • DB-36H:
    GAM-63「ラスカル」空対地ミサイル搭載試験機。

  • NB-36H:
    原子力飛行機の実証研究機。
    「P-1」加圧水型原子炉が搭載され*7放射線遮蔽シールドのテストに用いられた。

  • X-6:
    原子力エンジン搭載の提案モデル。実現せず。

  • YB-36G/YB-60(2機):
    純ジェット化した次世代型。
    エンジンはプラット・アンド・ホイットニー J57-P-3ターボジェットを8発搭載した。
    競争試作でB-52に敗れ採用されず。


*1 当時は米国の同盟国である英国がドイツに敗れてしまう可能性が考えられ、そうなった際に既存のB-17B-24ではヨーロッパ大陸に届かなくなるからであった。
*2 この頃、空軍は海軍と「核兵器プラットフォームには何が適任か」というテーマで論争をしており、海軍の「ユナイテッド・ステーツ」級大型空母のカウンターパートとして本機が担ぎ出されていた。
*3 これについては、B-47と同型のターボジェットエンジンを追加で増設して「10発機」とすることで解決しようとしていた。
  しかしそれでも、水素爆弾の炸裂によって起きる爆風や衝撃波から逃げるには遅いといわれていた。

*4 当時の核兵器はまだまだ大きくかつ重く、特に水素爆弾は本機にしか搭載できなかった。
*5 寄生戦闘機の搭載母機に改造されたり、爆弾搭載量を減らして偵察カメラを積んだ「長距離偵察機」に改造された機体もあった。
*6 B型より発注切り替え。
*7 飛行中の動力としては使用せず、着陸後、地上で試運転されていた。

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