【An-124】(あんとのふひゃくにじゅうよん)

1980年代に旧ソ連のアントノフ設計局によって設計・開発された、世界最大の実用輸送機
民間貨物機としても運用されている*1
愛称は"Руслан(ルスラーン)"。NATOコードは「コンドル」。

An-22「アンテーイ」?の後継機で、アメリカのC-5と同等の輸送機として設計された。
カタログスペックC-5を大幅に上回る。

45m幅の滑走路でも運航が可能なよう、主脚の間隔を限界まで狭めてある。
また、操縦系統は完全なフライバイワイヤーシステムを搭載し、低速での飛行性能に優れる。
重量物を搭載するために貨物室には10,000kg容量の可動式クレーン2基と3,000kg容量の2連ウインチを備える。

ペイロードは約120トンで、旧西側最大の機体であるB747-400Fを僅かに超える程度である。
搭載重量に比して容積が大きく、貨物の積み下ろしに特別な機材を必要としない点で運用性に優れる。
量産機の中では世界最大であり、C-5B747-400Fと並んで重宝される航空機である。

日本にも貨物機として頻繁に来日している。
また、軍事用途でも2003年に陸上自衛隊のイラク派遣に際して兵站輸送を請け負った*2

スペックデータ

乗員4〜6名
(操縦士2名(機長副機長)、航法士1名、航空機関士1名、航空通信士1名、ロードマスター2名)
搭乗者数88名
全長69.1m
全高21.1m
全幅73.3m
空虚重量175,000kg
最大離陸重量405,000kg
最大搭載量150,000kg
エンジンイーウチェンコ=プロフレース D-18T?ターボファン推力23,400kg)×4基
速度
(最大/巡航)
865Km/h / 800Km/h
実用上昇限度10,000m
航続距離4,500km(最大ペイロード)/15,700km(燃料最大時)


派生型

  • An-124:
    初期生産型(生産前機含む)。

  • An-124-100:
    純民間向けモデル。
    最大ペイロードは120tに減少している。

    • An-124-100M:
      民間型の近代化改修型。
      西側製アビオニクスや衝突回避警報システムなどを搭載し、搭乗員を航法士と通信士を省いた4名に削減した。
      また、エンジンは騒音の少ないD-18Tシリーズ3を搭載している。

    • An-124-100M-150:
      民間型の近代化改修型。
      エンジンをD-18Tシリーズ4に換装し、120tに制限されていたペイロードを150tに戻している。

  • An-124-111VD:
    ヴォルガ・ドエプニル航空向け改修型。
    エンジンをFADEC装備のD-18Tシリーズ3Mに変更して信頼性、寿命、騒音と燃費を改善。
    ペイロードは150tとなった。グラスコックピット化により乗員数は3名となっている。

  • An-124-130/135/150:
    提案のみ。

  • An-124-200:
    エンジンをGE社製CF6-80(推力27,000kg)に変更したモデル。
    提案のみ。

  • An-124-KC:
    旅客機型。

  • An-124FFR:
    200トンの水を投下することができる消防機モデル。

  • An-124-210:
    エアバスA400M配備までの繋ぎとなる戦略輸送機としてイギリス空軍に提案された型。
    ロールス・ロイス RB211-524H-Tエンジン(推力264kN)とハネウェル製のアビオニクスを搭載した。
    C-17A「グローブマスターIII」に敗れ不採用。

  • An-124-300:
    新造機。
    エンジンをD-18Tシリーズ5に変更し、ブレーキを強化した。
    また、APUなどの各種コンポーネントも新型のものが搭載される。
    それ以外の内容はAn124-111VDに順ずる。ペイロードは150t。


*1 民間ではヴォルガ・ドニエプル航空、ポリョート航空、アントーノウ航空、他数社で運用されている。
*2 政治的制約と戦略の関係上、現在の航空自衛隊は長距離の戦略輸送に対応する能力を持っていない。

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