【AIM-7】(えーあいえむなな)

AIM-7 Sparrow(スパロー)*1
アメリカが開発した世界初の中射程空対空ミサイル

本ミサイルの歴史は、第二次世界大戦終結後の1946年、スペリー・ジャイロスコープ社がアメリカ海軍の「ホットショット計画」により開発着手したのに始まる。
開発着手から初試射まで約7年かかったこのミサイルは、当時はXAAM-N-2と呼ばれていた。
その後、1962年に正式名称がAIM-7A「スパローI」となり、以後、AIM-7B・AIM-7E・AIM-7F等多くのタイプが作られ現在までに至る。

誘導方式はセミアクティブレーダー誘導で、発射後は命中するまで敵機をレーダー照射していなければならなかったが、それでもデビュー当時は他の空対空ミサイルよりもはるかに射程距離が長かった。
しかし現在ではアクティブレーダー誘導中射程空対空ミサイルが主流となり、主役の座は奪われてしまったが、それでもまだ世界各地で使用されている。
さらに、一部には本ミサイルをベースに自国仕様に改修して使っている国もある。

また、艦対空ミサイル型のRIM-7「シースパロー」や、AGM-45「シュライク」対レーダーミサイルのベースにもなった。

いわゆる「ミサイル万能論」との関係

空対空戦闘におけるミサイル万能論を語る上で、ベトナム戦争初期の中距離空対空ミサイル――つまり、本ミサイルの非信頼性が例としてあげられる場合が多い。

これは、当時の「政治的事情」により、目視で敵を確認する以前の段階での発射を禁じられていた点が大きい。
政治家・官僚が現場へ不当に介入した結果、軍は元来目視外射程での交戦を想定して設計されていた本ミサイルを、正しい発射諸元を満たせない条件――目視内射程で使用せざるを得なくなってしまった。
また、部隊レベルでの保管・組み立て体制の不備、熱帯の高温多湿気候によるロケットモーターの劣化などで、いざ発射という時にロケットモーターが点火しないことも多かった。

その後、目視外射程での交戦が許可され、整備体制やロケットモーターの改善が進んだ戦争後期になると、本ミサイルの命中率は数倍にも向上し、最終的には、機関砲サイドワインダーを上回る撃墜戦果を記録した武器となった。

主な搭載機

スペックデータ

形式AIM-7AAIM-7BAIM-7CAIM-7EAIM-7FAIM-7M/P
全長3.74m3.85m3.66m
直径20.3cm
翼幅
(前部/後部)
0.94m/0.88m1.02m/-1.02m/0.81m
発射重量143kg176kg172kg197kg231kg
速度マッハ2.5マッハ4
推進方式固体推進ロケットモーター
エンジンエアロジェット
1.8KS7800
ロケットダイン
Mk.38/Mk.52
ハーキュリーズ
Mk58 Mod3/Mod4
射程10km7km11km30km70km
弾頭HE 爆風破片
(20kg)
Mk.38
(30kg)
Mk.71
(39kg)
WDU-27/B
(40kg)
誘導方式ビームライディングアクティブレーダーセミアクティブレーダー


主なバリエーション

  • AIM-7A「スパローI(XAAM-N-2)」:
    1948年に制式化された初期型。スペリー社が開発を担当した。
    誘導方式はビームライディング誘導だが、誘導方式からくる命中率の悪さから、後述のAIM-7Bが開発された。

  • AIM-7B「スパローII(XAAM-N-3)」:
    誘導方式をアクティブレーダー誘導に変更した型。ダグラス社が開発を担当した。
    当時の電子技術の限界からレーダーの小型化ができず大型化している。
    発射試験は行われたが制式化されず、1956年に開発中止となっている。

  • AIM-7C「スパローIII(XAAM-N-6)」:
    現在のスパローの基礎となった型。レイセオン?社が開発を担当し、1958年に実用化された。
    セミアクティブレーダー誘導(SARH)方式を採用している。

  • AIM-7D「スパロー(AIM-110)」:
    事前充填式の液体燃料モーターを使用した型。

  • AIM-7E「スパロー」:
    固体燃料モーターを使用した型。1963年から生産が開始された。
    最高速度もM3.7と上がっている。

  • AIM-7E-2「スパロー」:
    機動性を向上させ、最小交戦範囲を狭くした型。

  • AIM-7F「スパロー」:
    小型の半導体を使用した事により、その分スペースに大型モーターと弾頭をつけた型。

  • AIM-7G「スパロー」:
    F型の誘導装置を改良した型。試作のみ。

  • AIM-7H「スパロー」:
    G型の誘導装置を改良した型。試作のみ。

  • AIM-7M「スパロー」:
    新型シーカーを搭載し、ECCM能力や信頼性が向上した型。

  • AIM-7P「スパロー」:
    1990年から開発が開始された型。
    新型信管・電子機器を搭載し、小型目標に対する迎撃能力が向上している。
    また、ブロック2からは中間アップデート用のデータリンク受信機が搭載され中間コースでのアップデートが可能となった。

  • AIM-7R「スパロー」:
    赤外線+モノパルスシーカーや新型信管を採用したほか、処理能力の向上や対電子妨害能力が強化された型。
    1993年に試射されたが、のちに開発中止。

派生型


*1 英語で雀もしくはスズメ科に属する鳥類全般を意味する。

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