*&ruby(えーえいちいち){【AH-1】}; [#m525e724]
Bell AH-1 &ruby(コブラ){Cobra};~
アメリカの[[ベル]]社が1960年代に開発した、世界初の実用[[攻撃ヘリコプター]]。~
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先にベル社が納入していた汎用ヘリ・[[UH-1]]を改良する形で開発されたが、対地攻撃を主任務とするという新しい概念を取り入れたため大きく設計変更され、やや尾部に面影を残すのみである。~
特に胴体の幅は、できるだけ被弾面積を小さくしたため1m未満（幅990mm）しかない。（幅は型により異なる）~
胴体幅を狭くしたまま操作を[[パイロット]]と[[ガナー]]に分担したため、[[コックピット]]は[[タンデム]]複座式となり、武装は胴体横の[[スタブ翼]]に施した。以後このスタイルは[[攻撃ヘリコプター]]の一般的な構成となった。~
また[[機動力]]を重視したため、[[ローター]]から[[抗力]]の大きなスタビライザー・バーを廃し、かわりにドアヒンジローターを採用して速度を向上させた。~
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何度も改修されたため、後述のように様々なバリエーションが存在している。~
本家のアメリカ陸軍では後継の[[AH-64]]に主力の座を譲ったものの、[[海兵隊]]では最新型のAH-1Zが運用されており、初期のタイプと比べ武装から運動性能・整備性・生存性など、あらゆる能力を圧倒的に凌駕している。~
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日本の[[陸上自衛隊]]では、「近代化AH-1S（AH-1F）」または「AH-1F C-NITE」に相当するモデルを「AH-1S」として採用している。~
主武装には、20mmM197三砲身[[ガトリング砲>ガトリングガン]]・BGM-71（[[TOW]]）[[対戦車ミサイル]]・JM261ハイドラ70 2.75in[[ロケット弾]]ポッドを装備している。~
**開発の経緯 [#h6ace53d]
アメリカ陸軍は、ヘリコプターを航空隊に導入した1950年代の早い時期から「ヘリコプターに武装を施し、空中からの火力支援を行う『空飛ぶ砲兵』」としての使い方を模索していた。~
しかし、[[空軍>USAF]]が「[[攻撃機]]と任務が重複する」として難色を示していた((これは[[A-1]]、[[A-4]]、[[A-6]]、[[F-4]]といった独自の固定翼攻撃機を持つ[[海兵隊]]が[[ガンシップ]]導入を渋ったのと同じ理由である。))こともあって、汎用ヘリに[[機関銃]]やロケット弾、[[ミニガン]]などを搭載した「[[ガンシップ]]」という形で対応することにした。~
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そして、1960年代に勃発したベトナム戦争では[[UH-1]]のガンシップ型が作られ、ヘリボーン作戦の護衛や対ゲリラ掃討戦に投入されることになったが、実際に運用してみると~
「装備の積みすぎで速度・機動性が大きく削がれる」((ヘリボーン作戦の護衛任務の際、離陸のタイミングが少しでも外れたり、途中で対地攻撃をしたりすると、もうそれで護衛対象の輸送ヘリに追いつけなくなってしまった。))~
「生存性が著しく欠けていて、たった1発の[[拳銃弾]]でも[[パイロット]]が死亡・人事不省になって操縦不能になり、[[墜落]]してしまう」((ヘリコプターのパイロットは飛行中、[[サイクリック]]・[[コレクティブ]]という2本の[[操縦桿]]を使うため、両手が常にふさがっている。))~
といった欠陥が露呈してしまった。~
>これらについては「エンジン出力を強化した型を優先的にガンシップとして投入する」「[[コックピット]]の周りに装甲板や防弾ガラスを追加する」などの対策が採られたが、問題の根本的な解決には程遠かった。
そこで1960年代半ば、アメリカ陸軍は攻撃専門ヘリコプターの競争試作「AAFSS（新型空中火力支援システム）コンペティション」を実施、これに応えてロッキード社の提出した案をAH-56A「シャイアン」として採用することにした。~
しかし、AH-56Aは開発が進むにつれて納入価格や技術面での種々の問題が露呈して実戦化が難航してしまったため、陸軍は、インドシナ戦線向けに即時投入できる暫定的な代替機を各社に試作させた。~
この競争試作は、「既存の機体で、即時攻撃ヘリコプターに転用可能なもの」という条件で行われ、5機種((シコルスキー[[S-61>SH-3]]、カマン[[UH-2>SH-2]]、ボーイング・バートル[[ACH-47>CH-47]]、パイアセッキ16H、ベル209))がノミネートされたが、このうち、ベル社が提出した案「ベル209」を制式採用したのが本機である。((ただしベル209の開発そのものは、この競争試作より以前よりベル社が独自におこなっていた。))~
これは「場つなぎ」の採用になるはずだったが、その後、AH-56の実用化が断念されたため、本機は名実ともに世界初の[[攻撃ヘリコプター]]となり、長きに渡って使われることになった。~
**スペックデータ [#t555aaee]
|乗員|2名（前席：[[射撃手>ガナー]]、後席：[[操縦士>パイロット]]）|
|全長|16.18m|
|全高|4.09m|
|[[主ローター>メインローター]]直径|13.41m|
|回転円盤面積|141.2��|
|空虚重量|2,993kg|
|最大離陸重量|4,536kg|
|[[エンジン]]|ライカミング T53-L-703[[ターボシャフト]]（推力962kW）×1基|
|[[速度]]|123kt（最大）|
|海面[[上昇率]]|494m/min|
|実用上昇限度|3,710m|
|[[ホバリング]]高度限界|3,720m（IGE）|
|航続距離|275nm|
|兵装|M134 7.62mm機関銃×1門またはM129 40mmグレネードランチャー×2門（AH-1G）&br;M197 3砲身20mm機関砲×1門（AH-1S）&br;[[TOW]][[対戦車ミサイル]]×最大8発&br;JM261 ハイドラ70ロケット弾ポッド（[[ロケット弾]]19発）×2基等|
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**バリエーション（陸軍型） [#if61c427]
-AH-1G~
初期型。愛称は「ヒューイコブラ」。((これまで米陸軍の制式採用ヘリには、大陸原住民の種族名が愛称として採用されていたが、本機ではこの慣例が破られた。))~
ベトナム戦争における対ゲリラ戦闘に対応した兵装が搭載されていた。~
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-TH-1G~
G型に複操縦装置を搭載した[[練習機]]型。~
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-AH-1Q~
旧東側（[[ワルシャワ条約機構]]）各国軍（[[ソ連軍]]・東ドイツ軍など）との対戦車戦闘向けに改修された型。~
[[TOW]]対戦車ミサイルの運用能力を有し、機関砲をターレット状に変更している。~
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-AH-1R~
G型のエンジン出力向上型。S型のテストベッド機。~
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-AH-1S~
AH-1GとAH-1Qを改修した型。~
[[エンジン]]やトランスミッションが強化された他、風防形状の変更や搭載機器の改良等の改修が行われた。~
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-AH-1P~
AH-1S準拠の新造機で、[[キャノピー]]と計器を改善した、旧称「量産型AH-1S」~
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-AH-1E~
旧称「アップガンAH-1S」~
[[機関砲]]と照準器を[[ターレット]]に装着して攻撃の自由度を強化した型。~
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-AH-1F~
旧称「近代化AH-1S」~
[[赤外線抑制装置]]の追加やレーザー測距器、火器管制装置を搭載して隠密性を向上させるなどした型。~
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-AH-1F C-NITE~
AH-1Fに暗視照準器を追加した夜間戦闘対応型、通称「コブラナイト」~
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-TH-1S~
S型を[[AH-64]]の操縦士訓練用に改修した練習機型。~
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-YAH-63~
ローターブレードを4枚化するなどした発展型試作機。[[AH-64]]に破れ不採用。
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**バリエーション（海兵隊型） [#h70facab]
-AH-1J~
愛称「シーコブラ」~
海上飛行を考慮して[[エンジン]]を双発にし、出力の増加を行った型。~
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-AH-1T~
エンジン出力の強化やBGM71 [[TOW]]対戦車ミサイル発射機能の付加、胴体を延長して[[燃料]]搭載量が増加した型。~
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-AH-1W~
愛称「スーパーコブラ」~
[[エンジン]]を[[UH-60]]や[[AH-64]]と共通のT700にした型。~
[[AIM-9サイドワインダー>AIM-9]]、[[FIM-92スティンガー>FIM-92]]、[[AGM-122 サイドアーム>AGM-122]][[対レーダーミサイル]]、[[AGM-65マーベリック>AGM-65]]空対地ミサイル、[[AGM-114ヘルファイア>AGM-114]][[対戦車ミサイル]]の運用が可能。~
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-AH-1Z~
愛称「ヴァイパー」~
AH-1Wの改修型で、[[ローター]]を4枚ブレードにして飛行能力を強化、[[MFD]]や新型照準器（AN/AAQ-30ホークアイ目標照準システム(TSS)）の搭載などにより戦闘力の強化が行われている。
参考リンク：http://www.mb-aero.net/contents/products/bell_defense/ah-1z.html
#ref(ah1.JPG)
AH-1S(JGSDF)
