【AGM-84】 †
AGM-84 Harpoon
1970年代に開発された、アメリカの空対艦ミサイル。
後に水上艦発射型のRGM-84や、潜水艦発射型のUGM-84などといった派生型を生み出し、「ハープーン」シリーズとして西側諸国軍の主力対艦ミサイルになった。
プラットフォームが航空機であるため初速は十分に確保できるので、RGM-84やUGM-84についているブースターは無い。
また細いキャニスターや魚雷発射管に入れる必要もなく、ただハードポイントに取り付けるだけでよいので、主翼とフィンも最初から展開されている。
飛翔パターンは大別して2つあり、一つは従来のミサイルと同じく、目標に向かい突入するパターン。
これは迎撃されやすい反面高速で飛行でき、射程距離も伸びる利点がある。
もう一つはシースキミングで突入するパターンで、レーダーによる被発見率を低下させ、迎撃されにくい利点を持つが、射程が著しく短くなる欠点がある。
誘導方式は他のハープーンと同じく中間誘導は慣性誘導、終端誘導はアクティブレーダー誘導で行われる。
弾頭は、爆速9000m/秒+を誇るオクトーゲン(HMX)を装備。
また、その長射程を活かした派生型として、空対地ミサイル型のSLAM?*1シリーズが存在する。
これはAGM-137「TSSAM」?の開発が遅れたために、既存の部品を組み合わせることでスタンドオフ攻撃が可能なミサイルを急遽開発することになったという経緯がある。
スペックデータ †
AGM-84D |
全長 | 3.79m |
直径 | 34.29cm |
重量 | 515.25kg |
翼幅 | 91.44cm |
推進方式 | ターボジェット |
エンジン | テレダイン J402-CA-400 ターボジェットエンジン(推力2,935N) |
速度 | 遷音速(約970km/h) |
弾頭 | HE 貫通/爆風弾頭 |
弾頭重量 | 224kg |
射程 | 約124 km以上 |
誘導方式 | 慣性+アクティブレーダー |
AGM-84E SLAM |
全長 | 4.45m |
直径 | 34cm |
重量 | 620kg |
翼幅 | 91cm |
推進方式 | ターボジェット |
エンジン | テレダイン CAE J402ターボジェットエンジン |
弾頭 | HE 爆風貫通効果弾頭 |
弾頭重量 | 221.6kg |
射程 | 約95km |
誘導方式 | 画像赤外線シーカー+データリンク 慣性+GPS |
AGM-84H SLAM-ER |
全長 | 4.35m |
直径 | 34cm |
重量 | 635kg |
翼幅 | 2.18m |
推進方式 | ターボジェット |
エンジン | テレダイン CAE J402-CA-400ターボジェットエンジン |
弾頭 | WDU-40/B 爆風破片弾頭 |
弾頭重量 | 360kg |
射程 | 250km以上 |
誘導方式 | 統合誘導航法装置(GPS付INS)、データリンク付赤外線シーカー(終末誘導) |
バリエーション †
- A/R/UGM-84 Harpoon block IA:
基本型。
- A/R/UGM-84C Harpoon block IB:
ポップアップモードを搭載しない型。
A型よりわずかに低い高度で巡航する。
- A/R/UGM-84D Harpoon block IC:
改善されたECCMや中間INS誘導機能の追加した型。
射程が約220kmに延伸したとの情報もある。
- A/RGM-84F Harpoon block ID:
射程220〜315kmの射程延伸型。
レーダー作動時に標的が捉えられない場合、クローバー形の飛行経路を描いて自動再捜索/再突入を行う機能を持つ。
1991年に初飛行したが、冷戦が終焉したため1993年に開発が中止された。
- AGM-84E SLAM:
1990年に開発された、AGM-84などがベースの空対地ミサイル。
ハープーンの弾体に中間誘導用としてAGM-62「ウォールアイ」?のGPSやデータリンク機器を追加し、終端誘導をAGM-65Fと同じ赤外線画像誘導に置き換えている。
- AGM-84H SLAM-ER:
SLAMの射程延伸型(Expanded Response)。
トマホーク巡航ミサイルのものを改造した主翼を装備しているのが特徴。
その他、射程の延長や誘導装置の改善などの改良が施され、移動目標への攻撃が可能になり、電波妨害に対しても強くなった。
- AGM-84K SLAM-ER ATA*2:
H型の自立攻撃能力を強化した改良型。
シーカーに画像の自動照合機能を追加し、パイロットの負担を軽減した。
また、状況に応じてパイロットが目標の選択を行うことができる。
- AGM-84L Harpoon block II:
中間誘導にGPSを併用し、誘導精度を高めた型。
- AGM-84L Harpoon block III:
L型の戦術データリンク搭載型。
長射程での誘導や発射後の誘導の自由度を高めている。
block ICに対するアップグレードキットとして、2011年の初期作戦能力獲得を目指し開発中である。
参考リンク:http://strike-eagle.masdf.com/agm84.html
- AGM-84L
- AGM-84H
Standoff Land Attack Missile.
Automatic Target Acquisition.