- 追加された行はこの色です。
- 削除された行はこの色です。
*&ruby(えーご){【A-5】}; [#u8ea28f5]
North american A-5 &ruby(ビジランティ){Vigilante};~
アメリカ海軍の[[艦上攻撃機]]。愛称は自警団員という意味。~
名目上は[[攻撃機]]だが、実質上は[[核兵器]]の投下のみを目的とした[[戦略爆撃機]]といえる。~
North American A-5（A3J） "&ruby(ヴィジランティ){Vigilante};(([[自警団>民兵]]の意。))".~
~
[[冷戦]]の初期において、[[相互確証破壊]]を担うのは[[航空機]]であり、特に迅速な攻撃をおこなうことのできる超音速機が重要になると考えられた。~
本機は[[空母]]より飛翔し、離れた場所を素早く核攻撃することを目的につくられた。~
1950年代に[[ノースアメリカン]]社が開発し、[[アメリカ海軍]]航空隊に実戦配備された[[艦上攻撃機]]。~
名目上は[[艦上攻撃機]]だが、実質上は[[核兵器]]の運用のみを目的とした[[戦略爆撃機]]といえる。~
~
[[マッハ]]2で連続飛行することが求められ、[[抗力]]を極限まで抑えるため、核爆弾や[[落下式タンク]]を胴体内に収納することはもとより、[[アレスティングフック]]までもが機内への引き込み式となった。~
また、[[F-15]]や[[MiG-25]]といった、後の[[マッハ]]2級[[戦闘機]]で主流となる二次元形空気取入口や全浮動式の[[水平>水平尾翼]]・[[垂直尾翼]]などをいち早く採用し、超音速飛行への適応性を高めた。~
しかし、本機のセールスポイントでもあった「連続超音速飛行」の実態は、いわゆる[[超音速巡航]]((実用化できたのは約半世紀後の[[F-22]]まで待たねばならなかった。))ではなく、双発で設けられた[[J79]][[ターボジェット]]の[[アフターバーナー]]を常時稼動させ続けるというものであったため、非常に燃費が悪く、大量の[[燃料]]を必要とした。~
[[冷戦]]初期において、[[相互確証破壊]]を担うのは[[航空機]]であり、特に迅速な攻撃をおこなうことのできる[[超音速]]機が重要になると考えられた。~
本機は洋上の[[空母>航空母艦]]から発進し、敵地内陸部の拠点を素早く核攻撃することを目的につくられた。~
~
本機のもう一つの特徴であった「リニア式爆弾倉」と呼ばれる[[ボムベイ]]兼燃料庫は、ユニークな構造をしていた。~
2基ある[[エンジン]]の間に2基の[[落下式タンク]]と核爆弾を格納し、目標上空で機尾を開き、ドローグガンで核爆弾を投下すると同時にタンクを投棄するというものである。~
[[マッハ]]2で連続飛行することが求められ、[[抗力]]を極限まで抑えるため、核爆弾や[[落下式タンク>増槽]]を胴体内に収納することはもとより、[[アレスティングフック]]までもが機内への引き込み式となった。~
また、[[F-15]]や[[MiG-25]]といった、後の[[マッハ]]2級[[戦闘機]]で主流となる二次元形空気取入口や[[全浮動式の水平・垂直尾翼>オールフライングテール]]などをいち早く採用し、超音速飛行への適応性を高めた。~
しかし、本機のセールスポイントでもあった「連続[[超音速]]飛行」の実態は、いわゆる[[超音速巡航]]((これを実用化できたのは約半世紀後の[[F-22]]まで待たねばならなかった。))ではなく、双発で設けられた[[J79]][[ターボジェット]]の[[アフターバーナー]]を常時稼動させ続けるというものであったため、非常に燃費が悪く、大量の[[燃料]]を必要とした。~
~
本機のもう一つの特徴であった「リニア式爆弾倉」と呼ばれる[[ウェポンベイ]]兼燃料庫は、ユニークな構造をしていた。~
2基ある[[エンジン]]の間に2基の[[落下式タンク>増槽]]と[[核爆弾>核兵器]]を格納し、目標上空で機尾を開き、ドローグガンで[[核爆弾>核兵器]]を投下すると同時にタンクを投棄するというものである。~
投下後は通常の[[飛行機]]と同様に機内の燃料タンクで飛行する。~
しかし、このシステムは[[カタパルト]]射出時の衝撃で燃料タンクが脱落するなどトラブルも多かった。~
また、核爆弾を搭載せず落下式タンクを3個搭載することも可能で、[[空中給油]]装置を搭載して[[空中給油機]]として運用することも可能であった。~
~
莫大な[[燃料]]を抱えるため、[[艦上機]]としては非常に大きな[[高翼]]式[[クリップトデルタ]]の機体であった。このため母艦として[[フォレスタル]]級以降の、いわゆる[[スーパーキャリアー]]を必要とする。~
しかし、このシステムは空母から発進する際、[[カタパルト]]射出時の加速で燃料タンクが脱落するなどトラブルも多かったほか、核爆弾を1発しか搭載できないため、汎用性がないという問題があった。~
~
莫大な[[燃料]]を搭載するため、[[艦上機]]としては非常に大きな[[高翼]]式[[クリップトデルタ]]の機体であった。~
このため、母艦は[[フォレスタル級>フォレスタル]]以降の、いわゆる[[スーパーキャリアー]]に限定された。~
~
[[主翼]]は低速での揚力を得るために[[吹き出しフラップ>BLC]]を装備している。~
[[エルロン>補助翼]]は、[[フラップ]]部分を大きくするために省略されており、[[水平尾翼の差動>テイルロン]]と左右各3枚の[[スポイラー]]の協調動作で[[ロール]]制御を行う。~
核戦争を前提とした多くの[[軍用機]]がそうであるように、核爆発の閃光から機体を守るために白く塗装されている。~
~
[[核戦争]]を前提とした多くの[[軍用機]]がそうであるように、核爆発の閃光から機体を守るために白く塗装されている。~
また、[[キャノピー]]は前後席が独立したクラムシェル式キャノピーで、後席は大半が白く覆われており、両側面に小型窓を持つ。~
~
やがて[[核兵器]]の運用主体が[[飛行機]]から[[戦略潜水艦]]へ移ると、多くの[[戦略爆撃機]]がそうであったように、本機も元来の任務から解かれた。~
その後本機は、通常兵器の運用能力を持たなかったため、[[速度]]と長大な航続能力を活かして[[偵察機]]型のRA-5Cへと改修され、1979年の退役まで、その寿命をまっとうした。~
やがて、[[核兵器]]の運用主体が[[飛行機]]から[[大陸間弾道ミサイル]]・[[戦略潜水艦]]へ移ると、多くの[[戦略爆撃機]]がそうであったように、本機も本来の任務から外された。~
その後本機は、通常兵器の運用能力を持たなかったため、[[速度]]と長大な航続能力を活かして[[偵察機]]型のRA-5Cへと改修され、1979年の[[退役>用途廃棄]]まで、その寿命を全うした。~
**スペックデータ（A-5A）[#vef61f5f]
|乗員|2名|
|全長|23.32m|
|全高|5.91m|
|翼幅|16.16m|
|[[主翼]]面積|65.1��|
|空虚重量|14,870kg|
|総重量|21,605kg|
|最大離陸重量|28,615kg|
|兵装搭載量|2,270kg（最大）|
|[[エンジン]]|[[GE>ジェネラルエレクトリック]] [[J79-GE-8>J79]][[ターボジェット]]×2基|
|[[推力]]|48kN（[[ドライ>ミリタリー推力]]）/76kN（[[アフターバーナー]]時）|
|最高速度|[[マッハ]]2.1|
|[[戦闘行動半径]]|1,804km|
|フェリー[[航続距離]]|2,909km|
|[[実用上昇限度>上昇限度]]|15,900m|
|[[海面上昇率>上昇率]]|41m/s|
|[[翼面荷重]]|393kg/��|
|[[推力重量比]]|0.007kN/kg|
|固定武装|なし|
|兵装|胴体内ウェポンベイ：&br;Mk.27（B27）・Mk.28（B28）・Mk.43（B43）[[熱核爆弾>水素爆弾]]×1発&br;主翼下[[パイロン]]：&br;Mk.43（B43）熱核爆弾または通常爆弾（[[Mk.83またはMk.84>Mk.80シリーズ]]）×2発、[[増槽]]等&br;[[偵察]]機器一式（RA-5C）|
|[[アビオニクス]]|A-5、RA-5C：&br;AN/ASB-12爆撃/航法レーダー&br;サンダース AN/ALQ-41 Xバンドレーダージャマー&br;モトローラ AN/APR-18 電子偵察システム&br;&br;RA-5C：&br;[[ウェスティングハウス]]AN/APD-7 [[SLAR]]&br;サンダース AN/ALQ-100 E/F/G/Hバンドレーダージャマー&br;AIL AN/ALQ-61 ラジオ/[[レーダー]]/[[IR>赤外線]] [[ECM]]受信機&br;リットン ALR-45 "COMPASS TIE" 2-18GHz[[レーダー警戒受信機]]&br;マグナボックス AN/APR-27 [[SAM>地対空ミサイル]][[レーダー警戒受信機]]&br;Itek AN/APR-25 S/X/Cバンドレーダー検出誘導セット&br;AN/AAS-21 [[赤外線]][[偵察]]カメラ|
**派生型（カッコ内は生産・改修機数、モデル名および旧呼称） [#r9c62570]
-XA3J-1/YA3J-1（NA-247）（2機）：~
試作機。1機はRA-5Cに改造された。~
~
**スペックデータ [#vef61f5f]
全幅：16.15m~
全長：22.31m~
全高：5.91m~
[[主翼]]面積：71.4��~
空虚重量：17,000kg~
最大離陸重量：31,750kg~
最大兵装搭載量：2,270kg~
エンジン：GE製[[J79-GE-10>J79]][[ターボジェット]][[エンジン]]（[[推力]]79.6kN）×2基~
最高速度：[[マッハ]]2.1~
上昇限度（実用/限界）：14,800m/28,000m~
海面[[上昇率]]：2,438m/min~
[[戦闘行動半径]]：2,026km~
最大[[航続距離]]：2,908km/5,150km (外部増槽使用時) ~
乗員：2名~
兵装：固定武装なし、胴体内にMk.27・Mk.28・Mk.43熱核爆弾×1発、翼下パイロンにMk.43熱核爆弾×2発または通常爆弾、偵察機器一式（RA-5C）、[[増槽]]等~
-A-5A（A3J-1）（57機）：~
量産型。以下の3タイプがある。~
--NA-247（9機）
--NA-263（14機）
--NA-269（34機）~
~
**派生型（カッコ内はモデル名および旧呼称） [#r9c62570]
-YA3J-1（NA-247）~
試作機。2機製造。~
-A-5B（NA-269、A3J-2）（6機）：~
胴体上面への[[燃料]]タンク追加や[[ハードポイント]]の増加、高揚力装置の加除などが行われた型。~
~
-A-5A（A3J-1）~
量産型。57機製造。~
-XA3J-3P（YA-5C）（5機）：~
偵察機型試作機。A3J-2から改造。~
~
-A-5B（NA-269、A3J-2）~
胴体上面への燃料タンク追加や[[ハードポイント]]の増加、高揚力装置の加除などが行われたモデル。6機製造。~
-RA-5C（A3J-3P）（新造91機+A型改修43機）：~
偵察機型。燃料タンクの追加、各種[[偵察]]用カメラ（可視光線・[[赤外線]]）やAN/ALQ-61電子偵察システム用のPECM((Passive electronics countermeasures.))アンテナ、AN/AAS-21[[赤外線]]センサー、AN/APD-7[[側方監視レーダー>SLAR]]などを搭載するカヌー型フェアリングの胴体下面への装着が行われた。以下の3タイプがある。~
--NA-269（12機）
--NA-279（20機）
--NA-283（23機）~
~
-RA-5C（A3J-3P）~
偵察機型。91機が新造された他、A型43機が改修された。~
-RA-5C Phase�供�NA-316）（36機）：~
空気取り入れ口の改良及び翼とナセルへのフィレットの追加が行われた型。~
~
-RA-5C Phase II（NA-316）~
空気取り入れ口の改良及び翼とナセルへのフィレットの追加が行われた型。36機製造。~
-発展型
--NA-247"Retaliator"：~
[[F-102「デルタダガー」>F-102]]の後継として[[アメリカ空軍]]に提案された高速迎撃機/[[戦闘爆撃機]]型。~
YA3J-1(NA-247)を基に、リニアボムベイにブースターとしてロケットダインXLR46-NA-2[[ロケットエンジン]]を搭載し、兵装は機体下面に搭載する方式に変更する構想となっていた。~
縮小モデルのモックアップが製作されたのみで実機は製作されず。~
~
--NA-349：~
アメリカ空軍が1970年に[[F-101「ヴードゥー」>F-101]]および[[F-102]]/[[F-106「デルタダート」>F-106]]の後継機の開発計画として企画したIMI((Improved Manned Interceptor（改良型有人要撃機）の略。))構想に提案された超音速迎撃機としての発展型。~
リニアボムベイを廃し、その場所に[[J79]][[エンジン]]を追加、機体上面に左右分割式の空気取り入れ口を新設して3発機とし、機首部分を再設計して[[AIM-54「フェニックス」>AIM-54]][[空対空ミサイル]]の運用能力を追加するというもの。~
AIM-54は胴体下面に並列2発を3列、計6発を搭載できる構想であった。~
IMI構想の中止により提案のみ。~
~
