【A-1】(えーわん) †

Douglas A-1 Skyraider(スカイレイダー).
第二次世界大戦末期に開発されたアメリカ海軍の単発レシプロ艦上攻撃機。
空軍との形式名称統合前は「AD*1」と呼ばれていた。
また、開発当初は「BT2D"デストロイヤー��"」と呼ばれていた。

1940年代まで、航空母艦に搭載される艦載機は主として次の3タイプがあった。

艦上戦闘機
主に機関銃で武装し、自艦隊上空及び攻撃目標周辺の航空優勢を獲得・維持する。
艦上爆撃機（急降下爆撃機）
爆弾で武装し、急降下爆撃によって目標（敵艦隊・地上目標など）を攻撃する。*2
艦上攻撃機（雷撃機）
航空魚雷もしくは爆弾で武装し、敵艦艇に対する雷撃、もしくは艦船・地上目標に対する水平爆撃を行う。

しかし、艦船の対空防御力が強化されるにしたがって、急降下爆撃機に搭載できる程度の爆弾では艦船の甲板を破ることが難しくなってしまい、また、雷撃機にも対空火器の火線をかいくぐれる敏捷性が求められるようになってきた。
加えて、陸上の飛行場よりも狭い空間である航空母艦の艦内に多種多様な機体を搭載することによって起きるさまざまな不都合も問題となってきた。
そこで、これらの問題を解決すべく、艦上爆撃機と雷撃機の2機種を統合した機体として「BT2"デストロイヤー"」という機体が1943年にデビューした*3が、この機は重量オーバーによる操縦性の悪化が欠点となり、28機で生産が打ち切られた。
本機は、これを教訓に根本的な改良を加え、汎用攻撃機（マルチロールアタッカー）として開発された。

日本との交戦中であった1945年3月に試作機が初飛行した本機であるが、実戦配備は対日終戦後の1946年12月にずれ込み、太平洋戦争には間に合わなかった。


本機最大の特徴は、単発レシプロ機としては桁外れのペイロードにある。
主翼下及び胴体下部、合計15ヶ所のハードポイントに、（四発の重爆撃機にも匹敵する）最大3.1トンもの兵装を搭載でき、これにより、非常に高い攻撃力と汎用性を得ることができた。*4

当時、本機を評する言葉に「キッチン以外に運べないものはない」というものがあり、それを受けて、朝鮮戦争では実際に流し台を搭載して飛び、投下したことがある。
また、後のベトナム戦争時には更にここから発展して「この機が運んだことがないのはトイレぐらいであろう」というジョークが語られ、それならばと、信管をつけた洋式便器を搭載して飛んでみせた、という逸話もある。

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戦果 †

上記の通り、第二次世界大戦には間に合わなかった本機であるが、1950年に勃発した朝鮮戦争では、大きなペイロードと戦闘機なみの空戦能力を生かして、海軍航空隊・海兵隊の主力攻撃機として活躍した。
（この戦争中、空母「プリンストン」の搭載機が北朝鮮領内のダムを航空魚雷で攻撃する戦果を上げたが、これは世界軍事史上最後の「無誘導魚雷による攻撃」となっている）。

その後、1960年代にはジェット機の発達で旧式化したかに見えたが、ベトナム戦争では（ジェット機と比較して）小回りのきくことと大きなペイロードを買われ、ヘリボーン部隊の護衛やCSAR（戦闘捜索救難）といった任務で活躍した。
特に後者では、救難ヘリの到着に先立つ要救助者の位置特定、要救助者を捕虜に取ろうとする敵に対する火力制圧、救難ヘリの誘導・護衛といった重要な役目を担っていた。
また、この任務中には、救難活動の妨害に襲来した北ベトナム空軍のMiG-17を2度も撃墜するという戦果を上げている。

海軍・海兵隊では1968年までに第一線を退いたが、空軍ではベトナム戦争の最末期である1970年代半ばまで使われ続けた。
また、アメリカ軍以外には英国・フランス・カンボジア・ガボン・チャド・中央アフリカ・フィリピン・南ベトナムの各国軍でも使用されていた。

関連：サンディ

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スペックデータ †

全長11.84m
全幅15.25m
全高4.78m
翼面積37.19��
エンジンライトR-3350・空冷星型18気筒レシプロエンジン(2,800馬力)×1
最大速度518km/h（高度5,500m）
巡航速度319km/h
航続距離最大4,800km
武装20mm機関砲×4
航空魚雷または増槽（胴体下パイロン）
爆弾・ロケット弾など（主翼下パイロン（14ヶ所））
*1 AD-1〜AD-7までのタイプがあった
*2 アメリカでは艦隊前方海面における敵艦隊の捜索任務も割り振られていた。
*3 同じ頃、日本海軍でも同様のコンセプトを備えた「流星」が開発されている。
*4 胴体下部にレドームを搭載した早期警戒機型や電子戦ポッドを吊り下げた電子戦機バージョンも作られ、また、戦術核兵器の搭載能力を実装したモデルも作られた。

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