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*&ruby(きゅうまるしきせんしゃ){【90式戦車】}; [#i5977fbc]
[[陸上自衛隊]]の現行の[[主力戦車]]のひとつ。~
登場時点でやや時代遅れの感のあった[[74式戦車]]の後継として1977年に試作を開始、1990年8月に制式化された。~
デビュー当初は、デザインが良く似ていたことから、海外の一部では[[レオパルト2]]の[[コピー>リバースエンジニアリング]]と思われていた。~
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車体・[[砲塔]]共に全溶接構造を取り入れ、[[複合装甲]]を車体前面及び[[砲塔]]前面に初採用。~
試験で自身の発射した120mm[[APFSDS>装弾筒付翼安定式徹甲弾]]数発を受けても問題なく稼動するなど、強固な防御力を示している。~
また車体横にサイドスカートが装備されているなど、前2作の[[戦車]]に比べても大幅に生存性の向上が図られた。~
前世代で重視されていた[[避弾径始]]はほとんど考慮されておらず、形状は大きく変化している((当時、すでに[[APFSDS>装弾筒付翼安定式徹甲弾]]が実用化されており、[[避弾径始]]の意味は非常に薄れていた。))。~
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主砲はスタビライザー搭載で自動装填装置付き、発射速度は12発/分で大幅に射撃速度が向上、また装填手が不要となった。~
[[火器管制装置]]はデジタル化され処理高速化、照準器も[[レーザー]]レンジファインダーとパッシブ[[熱線>赤外線]]画像装置で野戦に対応している。((風向、風速、気温、湿度、弾薬温度など射撃に影響する要素を計算して極めて精度の高い攻撃を可能としており、アメリカに持ち込まれての演習では走りながら3km先の目標を破壊して軍関係者を驚かせた。))~
[[火器管制装置]]はデジタル化され処理高速化、照準器も[[レーザー]]レンジファインダーとパッシブ[[熱線>赤外線]]画像装置で夜戦に対応している((風向、風速、気温、湿度、弾薬温度など射撃に影響する要素を計算して極めて精度の高い攻撃を可能としており、アメリカに持ち込まれての演習では走りながら3km先の目標を破壊して軍関係者を驚かせた。))。~
照準の最優先は車長であるが、[[74式戦車]]と同じく砲手も照準を行うことが可能である。~
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また、照準用[[レーザー]]に反応して警報・照射源特定・煙幕弾発射を行うレーザー警戒装置を搭載。~
[[カタログスペック]]上での最高速度は70km/hとなっているが、島松演習場での実験で75km/h以上の速度を記録している。~
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[[エンジン]]は1,500馬力の出力を誇る[[液冷式>液冷エンジン]][[ディーゼルエンジン]]を採用((「満州には水が無いから」という理由で、[[旧軍>日本軍]]以来、日本の[[戦車]]には[[空冷エンジン]]を用いることが暗黙の伝統となっていたが、これは本車以後破棄されている。))。~
懸架装置は74式戦車より簡略化された油圧＋トーションバー方式で、前後に±5度、車高は＋170mm〜−255mmの範囲で変更可能（一方、左右の傾きは変更できない）。~
自動装填機構採用により、乗員は1名減って車長、砲手、操縦手の3名となった。~
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これら数々の新機軸の搭載により、同世代の[[主力戦車]]と全く遜色のない性能を備え、[[隊員>自衛隊員]]の練度も相まって極めて高い戦闘力を誇る。~
だが、その調達価格がネックとなり（8.9億円/両）、なかなか配備が進まなかったが、2009年の生産終了までに341両が生産された。~
隊員の間では「乗員が3名では車両故障等の緊急時に下車した時、周囲警戒が甘くなる」「転輪の交換等に人手が足りない」と言う声も出ている。~
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#ref(tyep90t004.jpg);
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**90式に対する批判 [#y5bb5722]
本車に関しては「世界一高価な戦車」「重すぎて橋を通れない」「贅沢にもエアコンが付いている」など、デビュー時より多くの批判を受けた。~
もっとも、それらの批判は綿密な解析に基づくものとは言い難い。
:''世界一高価な戦車''|本車の調達価格は当初12億円→現在8億円で、前作の[[74式戦車]]が約3億円であった事を考えれば確かに高価である((さらに本車のデビュー後、間もなくして「株・土地バブルの崩壊による不況」「米ソ冷戦の終結」「（[[仮想敵国]]とされていた）ソビエト連邦の崩壊」などもあってこの声が強まった感もある。))。~
:''世界一高価な戦車''|本車の調達価格は当初12億円→最終8億円で、前作の[[74式戦車]]が約3億円であった事を考えれば確かに高価である((さらに本車のデビュー後、間もなくして「株・土地バブルの崩壊による不況」「米ソ冷戦の終結」「（[[仮想敵国]]とされていた）ソビエト連邦の崩壊」などもあってこの声が強まった感もある。))。~
しかし、ドイツの[[レオパルト2A6>レオパルト2]](10億円超)、英国の[[チャレンジャー2]](11億3800万円)、フランスの[[ルクレール]](9億7000万円）など、同世代の他国[[MBT>主力戦車]]に比べて高いとは言えない。~
（戦車に限った話ではないが）[[調達価格の高騰>金の壁]]が重大な問題なのは疑いないところであるが、それは「先進国」とされる諸国の[[軍隊]]でも大なり小なり抱えているものであり、おそらく回避不能な問題でもあった。
:''重すぎて橋が落ちる''|これは度を越した誇張ともいえるものであり、実際、日常的に車の走る公道であれば問題なく通過できる。~
しかし戦闘機動はともかく、戦車輸送車に積み込んだ状態で隊列を組んで橋を渡れるほど軽いものではなかったのも事実ではある。~
73式特大型セミトレーラの[[ペイロード]]限界を超えていたため、車体と[[砲塔]]を分離して運ぶ必要もあった。~
その重量ゆえ道路を傷める恐れがあり、公道での通過も厳しく制限されていた。~
このように、その重量は確かに運用上の問題をいくらか引き起こしていたが、それでも同世代の[[MBT>主力戦車]]の中では最軽量であったという((当時開発されていた他国の[[MBT>主力戦車]]は、重量が55t〜65tもあったという。))。
:''贅沢にもエアコンが付いている''|[[戦闘車輌>AFV]]におけるエア・コンディショナーは、[[NBC兵器]]から乗員の命を守るための設備であって、贅沢品ではない。~
暖房は[[エンジン]]の余熱を利用するもの、冷房は空気清浄機越しにホースで送風するものだが、どちらも快適性という点では生命維持装置の域を出ない。
**スペックデータ [#i953bf51]
|>|CENTER:90式戦車|
|乗員|3名（車長・操縦士・砲手）|
|全長|9.75m|
|全高|2.3m（標準姿勢）|
|全幅|3.33m/3.40m（サイドスカート含む）|
|戦闘重量|50.2t|
|懸架・駆動方式|ハイブリッド式（油気圧・トーションバー併用）|
|[[エンジン]]・変速機|[[三菱重工>三菱重工業]]製 10ZG32WG 2ストロークV型10気筒[[水冷>液冷エンジン]][[ターボチャージド>ターボチャージャー]][[ディーゼル>ディーゼルエンジン]]&br;三菱MT1500 オートマチックトランスミッション（前進4段、後進2段）|
|出力|1,500hp/2,400rpm（15分間定格出力）|
|排気量|21,500cc|
|登坂力|60%|
|登坂力|60％|
|超堤高|1.0m|
|超壕幅|2.7m|
|潜水能力|2.0m|
|最大速度|70km/h（路上）|
|[[行動距離>航続距離]]|320km|
|[[装甲]]|[[複合装甲]]（砲塔前面及び車体前面）|
|兵装|ラインメタル Rh120 44口径120mm滑腔砲×1門（砲弾40発）&br;[[12.7mm重機関銃M2>ブローニングM2]]×1挺（砲塔上面、弾数600発）&br;74式車載7.62mm機関銃×1挺（主砲[[同軸>同軸機銃]]、弾数4,500発）&br;4連装76mm発煙弾発射器×2基|
|製作|[[三菱重工業]]（砲塔および車体）、日本製鋼所（120mm滑腔砲）|
~
|>|CENTER:90式戦車回収車|
|乗員|4名|
|全長|9.20m|
|全高|約2.7m|
|全幅|3.40m（スペードなし）|
|戦闘重量|50t|
|懸架・駆動方式|トーションバー・油気圧ハイブリット式|
|[[エンジン]]|[[三菱重工>三菱重工業]]製 10ZG32WG 2ストロークV型10気筒[[液冷>液冷エンジン]][[ディーゼル>ディーゼルエンジン]]&br;（出力1,500hp）|
|登坂力|60%|
|登坂力|60％|
|超堤高|1.0m|
|超壕幅|2.7m|
|最大速度|70km/h（路上）|
|[[行動距離>航続距離]]|400km|
|兵装|[[12.7mm重機関銃M2>ブローニングM2]]×1挺&br;76mm4連装発煙弾発射器×2基|
|装備|大型ブームクレーン×1基&br;ウインチ×1基|
|牽引・吊り上げ能力|牽引力：50t&br;吊り上げ力：約25t|
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**派生型 [#l08cab6b]
-90式戦車回収車：~
本車の車体をベースに開発された戦車回収車。~
1990年に制式採用され、約30両が生産されている。~
25tブームクレーンやウインチ、各種の回収/整備機材を搭載している。~
また、[[78式戦車回収車>74式戦車]]と同様、車体後部上面にエンジンデッキがあり、予備もしくは故障/損傷車両から取り外したエンジンのほか、90式戦車の予備砲身を架装して運搬することが可能である。~
主に、90式を装備する[[戦車部隊>機甲部隊]]のある[[師団]]/[[旅団]]の後方支援部隊整備隊の戦車直接支援隊の他に[[戦車教導隊>富士教導団]]、[[武器学校]]等に配備されている。~
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