【74式戦車】(ななよんしきせんしゃ)

61式戦車に代わる、陸上自衛隊主力戦車
1964年に基礎開発が開始され、1974年9月に制式採用。1975年から1989年にかけて873両が配備された。
90式戦車の登場後に年間40両程度のペースで退役しているが、2010年時点でも陸上自衛隊の主要な機甲戦力を占めている。

設計思想は61式戦車と同じく、戦車駆逐車に近い待ち伏せ主体のものとなっている。
全般的に、61式で生じた設計上の問題を解決する目的で設計されている。

車体は全溶接、砲塔は鋳造。車体は避弾径始を重視した低く滑らかな形状。
主砲はスタビライザー?が搭載され、行進間射撃が可能。
火器管制装置として弾道計算機?レーザーレンジファインダー?テレスコープ?ペリスコープ?を装備する。

また、砲塔の横に赤外線投光器を搭載する事で夜戦に対応できるようになっている*1
この投光器は、赤外線フィルターを外すと夜間1500メートル先でも本が読める程度の光量と、フィルター越しでも至近距離で浴びると低温やけどを負うほどの熱量を持つ。
1993年に起きた雲仙普賢岳噴火災害の際、この投光器の性能が買われ、戦車としては異例*2の災害派遣に出動して火砕流の監視に貢献した。

61式戦車で大不評を買った操縦性も改善され、超信地旋回も可能。
また、シュノーケルを使っての潜水渡河能力もある。
加えて、油圧懸架装置?のシリンダーによって上下200mm、前後6度、左右9度まで車体を傾ける事が可能で、これにより遮蔽の確保が容易になっている。

このように、前作の61式に比して様々な改善が加えられた本車であるが、唯一改善が及ばなかったのは装甲防御であった。
これは、鉄道による戦略輸送等への考慮から重量が38t程度に抑えられていたためである。
結果、主力戦車に必須の能力である対応防御を達成できず、「自身の主砲によって撃破可能」という最大の欠陥が残ってしまった。

前述のように老朽化(特に酷使されている足回り部分)に伴って、年間40両ほどのペースで退役が進んでいる。
また、改良を加えられてきたとはいえ現代戦を戦うには限界であったことも手伝って、順次、後継の10式戦車に交代する予定である。

参考リンク http://www.jda.go.jp/jgsdf/info/so13.html

74tk.jpg


スペックデータ

乗員4名(車長、操縦手、砲手、装填手)
全長9.41m
全幅3.12m
全高2.25m(標準時)
戦闘重量38t
エンジン三菱重工製10ZF22WT 2ストロークV型10気筒空冷ディーゼルエンジン(出力720hp)
登坂力60%
超堤高1.0m
超壕幅2.7m
潜水能力2.0m
最大速度53km/h(路上)
航続距離300km
携行弾数50発(105mm砲)
600発(12.7mm機銃)
4,500発(7.62mm機銃)
兵装L7A1 105mmライフル砲×1門
12.7mm重機関銃×1挺(砲塔上面)
74式7.62mm車載機関銃×1挺(主砲同軸)
60mm3連装発煙弾発射器×2基

主な改修型

  • 初期生産型:基本型。
  • B型:初期生産型にAPDS及びHEPの2弾種に加え、APFSDSを運用できるようFCSや弾薬架を改良した物。
  • C型:B型の迷彩をOD色一色から濃緑色と茶色の2色迷彩に変更した物。
  • D型:C型以前の物に砲身にサーマルスリーブを装着した物。
  • E型:D型以前の物にHEPの代わりにHEAT-MPを射撃できるようFCSを改良した物。
  • F型:92式地雷原処理ローラを装備できるようにした物。
  • G型:パッシブ式暗視装置やレーザー警戒機、サイドスカート等を装備した物。(量産4輌+試作1輌のみ。)

派生型

  • 91式戦車橋
    本車をベースに開発された自走戦車橋。詳しくは項を参照。

  • 78式戦車回収車
    戦車回収車型。20t吊りのブームクレーンやウインチ、各種回収/整備機材を搭載している。

  • 87式自走高射機関砲
    自走対空砲型。詳しくは項を参照。

*1 IRST赤外線誘導などの普及に伴って撤去されている。
*2 その後、2011年の東日本大震災に伴って起きた福島第一原子力発電所事故に際しても、放射性物質に汚染された瓦礫を除去するため出動した。

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