【73式大型トラック】(ななさんしきおおがたとらっく)

陸上自衛隊で使用される汎用輸送車両。隊内では「3t半(さんとんはん)」や「カーゴ」とも通称される。
1973年にTSD 2t半ボンネットトラックの後継として制式化された車輌で、いすゞ自動車が製造を担当している。
2001年からは「3 1/2tトラック」の名称で調達が行われている*1

初期型・改良型・新型の三種類があり、それぞれエンジンや駆動方式などの設計で異なる。
陸上自衛隊の各部隊に配備されており、ダンプトラック型や地対空誘導弾の自走発射機型の他、キャブ部分に各種の装備を積載したバリエーションも数多く存在する。

2011年に発生した東日本大震災では、他の自衛隊車両が津波による水没で次々と行動不能になる中で唯一稼働でき、高い耐久性を証明した。

スペックデータ

タイプ初期型
(SKW-440・441)
改良型
(SKW-462〜464)
新型
(SKW-475・476)
乗員2名
全長7,030mm8,130mm7,150mm
全高3,080mm
全幅2,485mm2,470mm2,485mm
車両重量7,980kg8,570kg
積載量路外3.5t、路上6.0t
人員22名
エンジンいすゞ8P V型8気筒水冷ディーゼルいすゞ8P V型8気筒水冷ディーゼル
いすゞ6UZ 直列6気筒ターボディーゼル
(SKW-476)
出力240ps285ps
トランス
ミッション
2〜5速のみシンクロ化5速マニュアル6速オートマチック
最高速度95km/h105km/h
製造いすゞ自動車


バリエーション

  • 初期型(SKW-440・441):
    1973年から配備された基本型。
    前面に開口部があり、ラジエーターが露出しているのが特徴。
    エンジン停止には車両中央部の停止用スイッチを引く必要がある。

  • 改良型(SKW-462〜464):
    1997年から配備された型。
    キャビンの大型化やエンジンの出力増強、ハブリダクションの採用などの改良が施されている。
    また、タイヤもラジアルタイヤに変更されている。
    SKW-464では、ABSが装備されスロットルがドライブ・バイ・ワイヤに変更されている。

  • 新型(SKW-475・476):
    1999年から配備された型。
    変更点はキャビンの形状やエンジンの出力増強など。
    このタイプからキー操作でのエンジン停止が可能となっている。
    エンジン停止スイッチも装備されているが、キー操作でエンジンが停止しない等の緊急時用に限定される。
    SKW-476では、エンジンが直列6気筒ターボに変更されているとともにATの制御が変更されているほか、2012年より納入された車両は方向指示器が増設されている。

派生型

  • 3t半ダンプ:
    各種土木工事や陣地構築などに使用される。
    輸送科、施設科特科などに配備。

  • 軽レッカ:
    器材搬送、重量物据付、小型車両の牽引などに使用される。
    主に普通科連隊(整備班)や後方支援連隊の整備大隊等に配備。

  • 道路障害作業車:
    施設科装備で、敵の侵攻を遅滞させるために道路上に障害を構築するための車両。
    クレーン・アースオーガーアタッチメント、コンクリートカッター、チェーンソー、ブレーカ、タンパーを装備する。

  • 81式短SAM
    射撃統制装置を搭載した車両1台と、発射装置を搭載した車両2台で構成される。

  • 11式短SAM
    射撃統制装置を搭載した車両1台と、発射装置を搭載した車両2台で構成される。

  • 遠隔操縦観測システム(FFOS)
    無人ヘリコプター。
    機体運搬装置の牽引車や追従装置に使用されている。

  • 3t半燃料タンク車:
    補給車。
    主に普通科や特科、機甲科や後方支援連隊などに配備。

  • 3t半航空燃料タンク車:
    補給車。航空科や後方支援連隊などに配備。
    タンク後方に箱型の給油装置を装備しているため、3t半燃料タンク車と比べて積載量が1,100kg少ない。

  • 3t半水タンク車:
    給水車。災害派遣などで活躍する。

  • 1/2t水タンク車:
    給水車。災害派遣などで活躍する。
    後部にバー状のアタッチメントをつける事により散水車としても使用できる。

  • 野外手術システム:
    医療施設の無い場所での外科手術を行うことが出来るコンテナ式の医療システム。
    手術車、手術準備車、滅菌車、衛生補給車の4つの車両で1セットになっており、通常は車載されて使用されるが、コンテナ部分を切り離すこともできる。
    陸上自衛隊後方支援連隊の衛生科に配備されている。

  • 除染車:
    地域、施設等の大規模な除染作業に使用される。
    主に化学科に配備され、地下鉄サリン事件の際に出動した。
    また、阪神・淡路大震災の災害派遣においても防疫消毒作業に使用された。

  • 生物偵察車:
    生物兵器により汚染された地域の偵察に使用される。
    化学科の装備で、主に全国の特殊武器防護隊に配備。

  • 国際任務仕様:
    イラク派遣を機に配備されたモデル。
    フロントガラスを防弾ガラスに変更し、ドアと車体正面に装甲を装着している。

  • 暖房装置付:
    寒冷地での人員輸送用に荷台に暖房装置が装備された車両。
    主に北海道や東北方面の部隊に配備。

  • 有蓋車(シェルター車):
    整備のための工具・機材や各種装備などを格納したシェルター(箱)を搭載するための車両。

  • 作業装置付:
    作業用のクレーンが追加で装着されたモデル。
    遠隔操縦観測システムの作業車および機体運搬装置の牽引車としても使用されている。

  • ロング車:
    荷台を延長したモデル。
    通常のモデルより全長が1,000mmほど延長されている。

  • 対空戦闘指揮装置 JAN/TSQ-51C・JAN/TSQ-51-E:
    本装置の搭載用に設計された車両で、アオリのデザインが変更され、全長も通常より500mmほど延長されている。
    高射特科に配備。

  • 野戦特科射撃指揮装置 JGSQ-W3:
    81式野戦特科射撃指揮装置 JGSQ-W2の後継。野戦特科に配備。
    大隊指揮用装置は本車に搭載される。

  • 多連装ロケットシステム指揮装置:
    野戦特科部隊の多連装ロケットシステムMLRSが配備された隊に装備される。
    大隊指揮装置、中隊指揮装置、小隊指揮装置、各指揮装置データ伝送装置の各種がある。

  • 対空レーダー装置 JTPS-P14:
    中・高高度の目標探知用3次元レーダー。
    高射特科に配備。

  • 80式気象測定装置 JMMQ-M2:
    局地の気象状態を測定して弾道気象報などを作成するために使用する装置。
    特科部隊に配備。

  • 気象測定装置 JMMQ-M5:
    JMMQ-M2の後継。主に特科部隊に配備。

  • 教習用車両:
    助手席側にハンドルとブレーキ、スピードメーター、パワーステアリング切替装置などを装備した車輌。

  • 高踏破偵察車(特殊災害対策車):
    2013年に東京消防庁第九方面消防救助機動部隊に配備された特殊消防車。
    シャーシは本車両の物が使用され、障害物を突破するためバンパーが強化されている。
    NBC災害対策として車内陽圧機能を持つほか、車両外部に各種分析装置を設置し、車内でモニタリングを行う事ができる。
    また、被災現場に取り残された要救助者の救出、救助隊・資材の輸送も想定されている。


*1 「製造コストの削減」「部品の共通化」「民生品の活用」の観点から「制式化」の対象から外し、一段階低い水準の「防衛庁長官(→防衛大臣)の『部隊使用承認』」という形で使用されているため。

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