【053型】(ぜろごさんがた)

中国人民解放軍海軍で運用されているフリゲート
原型艦は1963年に就役し、改良型を含め、2005年までに40隻前後が建造された。
1980〜1990年代に退役した053型および053K型以外は、現在でも中国海軍の主力哨戒艦艇として多数が現役で、輸出もされている。

主な型式

  • 053型:
    原型艦。ソ連のリガ級(50型警備艦)フリゲートのノックダウン生産型である。
    NATOコードでは済南(ジンナン)型と呼ばれる。
    • 065型:
      中ソ対立によって、ソ連から艦船を入手できなくなったため、リガ級をリバースエンジニアリングしたもの。
      NATOコードでは江南(ジャンナン)型と呼ばれる。
      原型艦との違いとして、機関を蒸気タービンからディーゼルに変更したことにより砲配置が逆になっている点である(艦首側に1基、艦尾側に2基)。
      1980年代に全艦退役し、青島の海軍博物館に記念艦として保存されている。

  • 053K型:
    防空強化型で中国人民解放軍海軍初の艦対空ミサイル搭載艦。NATOコードでは江東(ジャンドン)級と呼ばれる。
    主兵装である艦対空ミサイル紅旗61B(HQ-61B)を搭載している。
    主砲にはソ連から供与された第二次大戦型のB-34 56口径100mm単装砲(M1940)の更新用に開発された79式56口径100mm単装砲(H/PJ-33)を搭載し、機関砲も新開発の76式37mm連装機関砲4基が搭載された。
    しかし、主兵装の艦対空ミサイルの性能不足もあって、建造は2隻で打ち切られた。
    1990年に退役し、青島の海軍博物館に記念艦として保存されている。

  • 053H型:
    対艦ミサイル搭載型。
    NATOコードでは江滬(ジャンフー)I型と呼ばれる。
    053K型の設計を踏襲しており、主兵装としてSY-1対艦ミサイル連装発射筒2基を搭載している。
    しかし、主兵装である対艦ミサイル以外の兵装は旧来より使用してきた機種を装備している。
    また、電子装備も簡素なものを搭載しており、全天候戦闘能力を持たない。
    14隻が建造された。

    • 053H1型:
      性能強化型。
      NATOコードでは江滬(ジャンフー)II型と呼ばれる。
      053H型をベースに、砲熕兵装を053K型と同様の新型とするとともに電子装備を強化、対艦ミサイルも改良型に変更したものである。
      また、343型(Wasp Head)射撃指揮装置の導入によって、射撃精度は格段に向上している。
      1982年〜1988年にかけて9隻が配備された。

    • 053H2型:
      設計を抜本的に見直した強化型。
      NATOコードでは江滬(ジャンフー)III型と呼ばれる。
      船型が平甲板船型から中央船楼型に変更されて艦容は大きく変化しており、戦闘システムや兵装も大幅に一新された。
      また、中国のフリゲートとしては初めてNBC防御が導入され、空調設備は集中制御式の強制通気式となっている。
      1986年〜1990年にかけて3隻が就役した。

    • 053H1Q型:
      実験型。
      NATOコードでは江滬(ジャンフー)IV型と呼ばれる。
      西側諸国から導入した新装備を実艦に搭載し、運用試験を実施するために053H1型の5番艦であった「四平(544)」を改装したものである。
      兵装やソナーシステムにフランスやイタリア製のものを搭載している。

    • 053H1G型:
      台湾海峡・南沙諸島情勢の緊迫に対応し、053H1型をベースに、053H2型で実用化された装備をバックフィットした「戦時急造艦」。
      NATOコードでは江滬(ジャンフー)V型と呼ばれる。
      船体設計としては、上部構造物を密閉構造として、NBC防護能力が付与されている。
      近接防空兵装には、全自動の076A型37mm連装機関砲に変更され、限定的ながらも対艦ミサイルに対する迎撃能力が付与された。
      また、対潜火力もより長射程で強力なRBU-3200に変更されている。
      対艦ミサイルはSY-1ASY-2を搭載するが、新型の鷹撃83(YJ-83)への換装が順次進められている。
      1993〜1996年に6隻が就役した。

  • 053H2G型:
    053H2型を基本としつつ、より先進的な兵器システムを搭載した型。
    NATOコードでは江衛(ジャンウェイ)I型と呼ばれる。
    戦術情報処理装置や砲システム、対艦ミサイルは053H2型のものを踏襲しているが、レーダーが強化されており、対空捜索レーダーは517型の強化型である517-H型を、低空警戒・対水上レーダーは360型を搭載している。
    また、機関砲を全自動の076A式37mm機関砲に変更し、近接防空能力が強化されている。

  • 053H3型:
    053H2G型の運用実績を踏まえて改良を施した型。
    NATOコードでは江衛(ジャンウェイ)II型と呼ばれる。
    砲熕兵器(艦砲、対潜迫撃砲)およびC4ISRシステムは、053H2G型のものを踏襲しているが、主砲射撃指揮装置は改良型の343GA型に変更されたほか、後期建造艦においては、戦術情報処理装置、主砲/SSMと機関砲用の射撃指揮装置がそれぞれ新型化されている。

スペックデータ

排水量
基準/満載
1,425t/1,662t(053H型)
1,420t/1,700t(053H1型)
1,550t/1,860t(053H1Q型)
1,700t/2,100t(053H2型)
1,674t/1,960t(053H1G型)
2,180t/2,250t(053H2G型)
2,250t/2,393t(053H3型)
全長103m
112m(053H2G/H3型)
全幅10.8m/12.1m(053H2G/H3型)
喫水4.3m(053H2G/H3型)
機関ディーゼルエンジン×2基 2軸推進
12E390Vディーゼル(053H型)
12PA68TC/12E390VAディーゼル(053H1/H1Q型)
12E-390VAディーゼル(053H2/H1G型)

CODAD方式 2軸推進(053H2G/H3型)
18E390VA ディーゼル×2基
MTU ディーゼル×2基
機関出力7,000hp(12E390V)
8,000hp(12PA68TC/12E390VA)
16,000hp(12E-390VA)
14,000hp(18E390VA)
8,840hp(MTU)
最大速力26ノット
航続距離2,700mn(053H/H1/H2/H1G型)
4,000nm(053H1Q型)
4,000nm/18ノット(053H2G/H3型)
乗員053H型:190人(うち士官30名)
053H1型:175人
053H1Q型:185人
053H2/H1G型:200名(うち士官30名)
053H2G/H3型:168人(うち士官30名)
砲・機関砲B-34 56口径100mm単装砲(M1940)×2基(053H型)
79式56口径100mm連装砲×2基(053H1型)
T100C 55口径100mm単装速射砲×2基(053H1Q型)
79A式 56口径100mm連装砲×2基(053H2/H1G/H2G/H3型)

61式37mm連装機関砲×6基(053H型)
76式37mm連装機関砲×4基*1(053H1Q/H2型)
76A式37mm連装機関砲×6基(053H1G型)
76A式37mm連装機関砲(ダルドCIWS)×4基(053H2G/H3型)
対艦ミサイルSY-1 連装発射筒×2基(053H/H1型)
SY-1A 連装発射筒×1基(053H1Q型)
YJ-8 4連装発射筒×2基ないし連装発射筒×4基(053H2型)
SY-1A/SY-2 連装発射筒×2基*2(053H1G型)
YJ-83 3連装発射筒*3×2基(053H2G/H3型)
艦対空ミサイルHQ-61M 6連装短SAM発射機×1基(053H2G型)
HQ-7 8連装短SAM発射機×1基(053H3型)
対潜装備65式対潜ロケット5連装発射機(RBU-1200)×2基(053H型)
81式対潜ロケット5連装発射機(RBU-1200)×2基(053H1/H1Q/H2型)
87式対潜ロケット6連装発射機×2基(053H1G/H2G/H3型)
B515型 3連装短魚雷発射管×2基(053H1Q型)
64式爆雷投射機(BMB-24)×2基(053H/H1/H1Q/H2G型)
爆雷落射機×2基(053H/H1/H1G型)
機雷敷設軌条×2基(機雷24発)(053H/H1/H1G型)
艦載機Z-9C対潜ヘリコプター×1機(053H1Q/H2G/H3型)
C4IシステムCIC非設置(053H/H1/H1Q型)
ZKJ-3A戦術情報処理装置(053H2/H1G型)
ZKJ-3戦術情報処理装置+HN-900戦術データリンク(053H2G/H3型)
ZKJ-4B/6(053H3型(後期建造艦))
レーダー517型長距離対空レーダー(053H1/H2型)
517H型長距離対空レーダー(053H1G型)
517H1型対空捜索レーダー×1基(053H2G/H3型)
354型対空・対水上レーダー(053H/H1/H1Q/H2型)
360型対空・対水上レーダー(053H1G/H2G/H3型)
RM-1290航海レーダー
FCS352型(SSM用)×1基(053H/H1/H1Q/H2型)
343G型(主砲・SSM兼用)×1基(053H1G型)
343型(主砲用)×1基(053H/H1/H1Q/H2型)
NAJA光学FCS(053H1Q型)
341型(機関砲用)×1基(053H1型/H1Q/H2型)
347G型(機関砲用)×1基(053H1G型)

053H2G型:
342型(短SAM用)×1基
343G型(SSM・砲用)×1基
341型(CIWS用)×1基

053H3型:
345型(短SAM用)×1基
343GA型(SSM・砲用)×1基
344型(SSM・主砲用)×1基(後期建造艦)
341型(CIWS用)×1基
347型(CIWS用)×1基(後期建造艦)
ソナーEH-5(053H型)
DUBA-25(053H1Q型)

053H1型:
SJD-5中深度捜索用
SJC-1B 偵察用
SJX-4 通信用

053H2/H1G型:
SJD-5 中深度捜索用
SJC-1B 偵察用
SJX-4 通信用

053H2G型:
SJD-5B 捜索用
SJC-1F 偵察用
SJX-4C 通信用
SJD-7(053H3型)
電子戦
・対抗手段
RWD-8ECM(053H型)
931-1型ECM(053H1型)
RWD-8ECM(053H1Q/H2/H1G型)
923型ESM(053H2型)
981型ESM/ECM(053H2型)
651A型IFF(053H2型)



*1 053H2型は6基。
*2 一部艦ではYJ-8SSM 4連装発射筒×2基に換装。
*3 053H3型は4連装発射筒×2基。

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