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*&ruby(まるさんしきちたいくうゆうどうだん){【03式地対空誘導弾】}; [#v8fb82cd]
[[陸上自衛隊]]で1960年代から使用されてきた、アメリカ製の中距離[[地対空ミサイル]]・[[MIM-23「ホーク」>MIM-23]]の後継として開発された国産の中距離[[地対空ミサイル]]。~
略称は「SAM-4」で、通称「中SAM」と呼ばれる。~
2009年現在、世界最新鋭の[[地対空ミサイル]]でもある。~
[[陸上自衛隊]]で運用されている中距離[[地対空ミサイル]]。~
略称「SAM-4」。現場では「中SAM」などと呼ばれる。~
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[[自衛隊]]では、それまでホークに改良を加えて能力向上を図ってきたが、原設計が1950年代のミサイルであったことから、1990年代にはとうとうそれにも限界が見えてきた。~
この状況は西側諸国でも同様であったことから、[[NATO>北大西洋条約機構]]参加諸国は[[パトリオット>MIM-104]]の後継として「[[MEADS]]((Medium Extended Air Defense System:中距離拡大防空システム))」という新型ミサイルの共同開発に着手することになり、日本にもプロジェクトへの参加が呼びかけられた((アメリカ・ドイツ・フランス・イタリアが参加したが、フランスは後にプロジェクトから脱退。))。~
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しかし、開発当時の日本政府は「兵器の国際開発も[[武器輸出三原則等]]に抵触する((その後、2011年12月の閣議決定で「国際共同開発プロジェクトへの参加」が除外されることになった。))」としてプロジェクトへの不参加を決定し、その結果、ホークの代替となる次世代対空ミサイルがなくなってしまったため、日本独自に開発することとなった。~
1996年からミサイルの開発が始まり、発射器、管制装置、通信機器など6つのフェーズに渡って開発が進められ、2003年に制式化された。~
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1950年代に開発されたアメリカ製[[地対空ミサイル]]・[[MIM-23「ホーク」>MIM-23]]の後継として日本国内で開発された。~
1996年から開発が始まり、発射器、[[管制]]装置、通信機器など6つのフェーズに渡って開発が進められ、2003年に[[制式]]化された。~

>なお、1990年代は[[NATO>北大西洋条約機構]]各国で相次いで[[地対空ミサイル]]の陳腐化・新型への更新要求が生じていた。~
このため、[[NATO>北大西洋条約機構]]内各国共同での新型ミサイル開発計画「[[MEADS]]」が提唱され、日本にも参画が打診された。~
当時の日本政府はこれを謝絶し(当時の[[武器輸出三原則等]]に抵触したため)、必然的に[[MEADS]]の成果となる次世代[[地対空ミサイル]]が入手不能となった。~
結果、日本国内で独自に[[地対空ミサイル]]を開発・調達する必要が生じ、SAM-4の開発の契機となった。~

1個群を構成する武器システムにかかる価格は約470億円で、同規模の[[ペトリオットPAC-2>MIM-104]]の調達価格である約850億円より低く抑えられている。~
しかし、21世紀以降の慢性的な財政難・防衛予算削減によって配備は進まず、改良ホークからの更新が進んでいない。~
そのため、調達単価を抑えた改修モデル「03式中距離地対空誘導弾(改)」が開発され、2017年から調達が始まっている。~

**性能 [#y2496a39]

開発に当たっては、以下のような点が考慮された。

-同時多目標対処能力
-対低空目標能力の向上
-対[[巡航ミサイル]]能力の向上
-[[ECCM]]能力の向上
-対処時間の短縮
-機動性の向上
-[[見通し外>目視外射程]]射撃能力
-整備性の向上
-補給性の向上
-省人化
-低コスト化

システムは、発射器、[[レーダー]]装置、[[射撃管制装置>火器管制装置]]、対空戦闘指揮装置に分けられ、それぞれが自走可能となっていることで、従来のホークに比べて展開・撤収に要する時間が短縮され、操作要員もホークが50人体制であったのに対して20人体制となり、省力化されている。~
また、[[対レーダーミサイル]]から守るための[[デコイ]]システムもあると言われており、生残性が向上した。~
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[[レーダー]]は[[アクティブ・フェイズドアレイ>フェイズドアレイレーダー]]方式で、捜索・追尾・誘導をこれひとつでこなすことができ、他のレーダーやシステムと情報を相互に授受することによって、広範囲かつ対妨害性に優れた性能を有している。~
また、ECCM能力や見通し外射撃能力、同時多目標対処能力などが向上し、[[空対地ミサイル]]や[[巡航ミサイル]]への対処能力も有するとされている。~
将来的には、現在開発中の対空戦闘指揮統制システムや、[[航空自衛隊]]が擁する[[E-767]][[AWACS]]等との[[データリンク]]による戦闘能力向上も考慮されている。~
~
発射器は重装輪車(重装輪回収車と車体部分が共通)に搭載した6連装の[[キャニスター]]式となっており、整備性、補給性共に向上した。~
射撃時にはこれを垂直に立てるようになっており、車両を停めるスペースさえあれば市街地や森林などでも射撃することが可能となっている。~
また、捜索兼射撃用[[レーダー]]装置車、運搬・装てん装置車及びレーダ信号処理兼電源車も同様に重装輪車が使われている。
~
対空戦闘指揮装置は[[73式大型トラック]]、幹線無線伝送装置、幹線無線中継装置及び[[射撃管制装置>火器管制装置]]は[[高機動車]]に搭載された状態で運用され、小回りが利くとされている。~

**主な配備部隊 [#t75a3fba]
-教育訓練研究本部
--開発実験団
---装備実験隊(実用試験用)
-陸上自衛隊高射学校
--高射教導隊第4高射中隊(教育訓練用)
-陸上自衛隊武器学校(整備士教育用)
-第2高射特科群([[東部方面隊]]直轄)
--第334高射中隊
--第335高射中隊
--第336高射中隊
--第337高射中隊
-第8高射特科群([[中部方面隊]]直轄)
--第338高射中隊
--第339高射中隊
--第340高射中隊
--第343高射中隊
-第2高射特科団([[西部方面隊]]隷下)
--第3高射特科群
---第344高射中隊
---第345高射中隊
---第313高射中隊
--第7高射特科群
---第346高射中隊
---第348高射中隊
--第102高射特科隊
-第15高射特科[[連隊]]([[第15旅団>第15旅団(自衛隊)]]隷下)
--第2高射中隊
--第3高射中隊
~
2012年現在、開発実験団の装備実験隊(実用試験用)・高射教導隊(教育訓練用として保有)・第2高射特科群(3個中隊)・第6高射特科群([[第15旅団>第15旅団(自衛隊)]]隷下)・第8高射特科群に配備されている。~
しかし、21世紀以降の急速な財政悪化による防衛予算の削減で遅々として配備が進まず、改良ホークからの更新が進んでいない。~
そのため、2010年度(平成22年度)から2016年度(平成28年度)までに取得コストを抑制しながら、[[巡航ミサイル]](低空目標)や[[空対地ミサイル]](高速目標)への対処能力の向上させ、ネットワーク交戦能力の向上により防衛範囲を拡大させた「03式中距離地対空誘導弾(改)」を開発することが決定している。
***配備部隊(中SAM改) [#xfc54bdb]
-陸上自衛隊高射学校
-第15旅団([[西部方面隊]]直轄)
--第15高射特科[[連隊]]
---第1高射中隊(2020年12月に配備開始)~
~
**車輛構成 [#ddebd9ef]
-対空戦闘指揮装置([[73式大型トラック]]に搭載)
-幹線無線伝送装置・幹線無線中継装置・[[射撃管制装置>火器管制装置]]([[高機動車]]に搭載)
-捜索兼射撃用[[レーダー]]装置・発射機・運搬装填装置及びレーダー信号処理兼電源車([[重装輪車>重装輪回収車]]に搭載)

**スペックデータ [#i381c7cd]
|全長|約4.9m|
|直径|約0.32m|
|重量|約570kg|
|直径|約0.32m/約0.28m(改善型)|
|重量|約570kg/約460kg(改善型)|
|弾頭重量|約73kg|
|射程|50km以上|
|射程|60km以上|
|誘導方式|中間指令誘導+[[アクティブレーダー誘導]]|
|価格|約470億円(1セット(1個群))|
|車輌構成|・対空戦闘指揮装置([[73式大型トラック]]に搭載)&br;・幹線無線伝送装置・幹線無線中継装置・[[射撃管制装置>火器管制装置]]([[高機動車]]に搭載)&br;・捜索・射撃用[[レーダー]]装置・発射機・運搬装填装置・レーダー信号処理兼電源車(専用車両に搭載)|
|価格|約470億円(1個群)|
|主契約社|三菱電機|
~
**派生型 [#g7f6b4df]
-03式中距離地対空誘導弾(改善型)(中SAM改):~
調達単価の抑制を主目的とする改修モデル。以前は03式中距離地対空誘導弾(改)と呼ばれていた。~
[[地形追随飛行]]する[[巡航ミサイル]]や、高速の[[空対地ミサイル]]への対処能力の向上も計られているほか、[[データリンク]]機能の改善により、[[ミサイル防衛]]における[[有効射程]]圏が拡大している。~
システム面では、低空目標用に窒化ガリウム増幅器を使用した補助[[レーダー]]が追加されている。~
~
-03式中距離地対空誘導弾(能力向上型):~
新型の[[短距離弾道ミサイル(SRBM)>弾道ミサイル]]と[[極超音速滑空体]](HGV)への対処能力を高めたモデル。~
2023年度から2028年度にかけて開発する予定。~
~
-新艦対空誘導弾(A-SAM):~
2017年度から2023年度まで開発が進められている[[艦対空ミサイル]]。~
03式中距離対空誘導弾(改)を基に[[レドーム]]を変更し、[[中間誘導]]用[[データリンク]]とブースタ([[07式垂直発射魚雷投射ロケット]]の技術を活用)とブースタ分離装置が付加される。~
[[もがみ型>最上]][[護衛艦]]にバックフィットする形で搭載するとみられている。~
~

http://www4.plala.or.jp/klesa108/diary/20070429/03launcher.jpg ~
中SAMの発射装置


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