【殲撃7】(せんげきなな)

中国国産の超音速戦闘機
中国語では殲-7(殲撃7)を「ジエン・チー」と呼ぶ。また、「J-7」や「F-7」とも言う。

本機は旧ソ連(ロシア)のMiG-21コピーしたもので、オリジナルMiG-21の基本性能の良さと、中国初のマッハ2級超音速戦闘機と言うこともあり、中国独自の発展型が数多く作られた。

基本的な性能はMiG-21と大して変わりがないが、初期型の殲撃7I型は、30I型30mm機関砲を2門装備し、国産の成都 渦噴13(WP-13・A/B64.7kN)を搭載した事によりエンジン推力は5%向上している。これらがMiG-21との違いである。
本機は2500機以上が生産され、中国空軍・海軍で使用されている他、後述の通りアジア・アフリカ各国へも輸出されている。
輸出型には、使用国ユーザーの要望で搭載機器の一部(計器類、射出装置、通信機材等)が西側の製品に転換されているものもある。

また、湾岸戦争イラン・イラク戦争などの実戦にも使われた。(結果はMiG-21と一緒で惨敗であった。)

本機は、今後も海外への売り込みを続けると思われるが、次世代の戦闘機に比べると能力がかなり落ちている。
しかし、価格的に新鋭機を買う余裕が無い国にとっては、お手ごろの値段となっている。

開発の経緯

本機は前述の通り、MiG-21をベースとして開発されたが、その経緯は複雑であった。

当初、本機はライセンス生産機として開発がはじまった。
1961年、その第一段階として、生産技術を習得するためにMiG-21のノックダウン生産契約がソ連との間で締結された。
しかし、計画が起動した初期に中ソ関係が悪化し、ロシア人技術者が全員帰国してしまう。
中国技術陣は、不完全な形で残された技術資料からリバースエンジニアリングを行い、原型機の生産にまでこぎつけた。

そして1966年に原型機が初飛行したが、その直後に文化大革命が勃発。
この政変で、エリートや知識人層に対する大規模な追放が行われ、その結果、航空産業を含めた中国の工業技術は長期間の停滞を余儀なくされた。

こうしたさまざまな事件に巻き込まれたことにより、量産第1ロットの生産開始は1968年、中国空軍で最初の実戦部隊が編成完結したのは1972年と大幅に遅延してしまった。

因みに南昌飛機製造公司が開発したJ-12は、当機の就役の遅れを補う目的で開発されたが低性能だったため、結局物にならなかった。

主な採用国

中国、北朝鮮、ミャンマー、バングラデシュ、スリランカ、パキスタン、タンザニア、スーダン、ジンバブエ、イラク、エジプト、イエメン、イラン、アルバニア、ナイジェリア

性能諸元

乗員1名
全高4.10m
4.11m(殲撃7II/殲撃7E)
全長14.9m
全幅7.15m
8.32m(殲撃7E)
空虚重量5,068kg(殲撃7I)
5,375kg(殲撃7II)
5,270kg(殲撃7III)
5,292kg(殲撃7E)
通常離陸重量7,531kg(殲撃7II)
7,540kg(殲撃7E)
最大離陸重量7,850kg(殲撃7I)
7,500kg(殲撃7III)
9,100kg(殲撃7E)
最大兵装搭載量1,000kg(殲撃7)
1,400kg(殲撃7E)
機内燃料搭載量2,385ℓ
機外燃料搭載量1,800ℓ(増槽搭載時(800ℓ×1+500ℓ×2または500ℓ×3))(殲撃7/殲撃7I)
1,780ℓ(増槽搭載時(800ℓ×1+500ℓ×2または500ℓ×3))(殲撃7E)
エンジン成都 渦噴7B(WP-7B)ターボジェット×1基(殲撃7/殲撃7II)
成都 渦噴7(WP-7)ターボジェット×1基(殲撃7I)
成都 渦噴13A(WP-13A)ターボジェット×1基(殲撃7III)
成都 渦噴13F(WP-13F)ターボジェット×1基(殲撃7E)
出力
(通常/アフターバーナー
43.15kN/59.83kN(殲撃7)
38.90kN/49.20kN(殲撃7I)
43.15kN/59.83kN(殲撃7II)
3,800kg/6,100kg(殲撃7III)
4,400kg/6,500kg(殲撃7E)
最高速度M2.04(殲撃7)
M2.1(殲撃7III)
航続距離1,740km
上昇限度18,200m(殲撃7II)
18,800m(殲撃7III)
17,500m(殲撃7E)
最大上昇力9,000m/min(殲撃7)
10,800m/min(殲撃7II)
11,700km/min(殲撃7E)
固定武装30I型30mm機関砲×2門(装弾数60発)
兵装ハードポイント2箇所(殲撃7Eは5箇所)に下記兵装を搭載可能。
霹靂5霹靂7霹靂8赤外線誘導空対空ミサイル×2
霹靂9R-550AIM-9×4(殲撃7E)
通常爆弾
雷霆2型(LT-2)レーザー誘導爆弾
HF-7Cまたは90I式ロケット弾ポッド×2〜4基
(55mmまたは57mm空対地ロケット弾×18、90mm空対地ロケット弾×7)

殲撃7の主な種類

  • 殲撃7(J-7):
    MiG-21F-13に準じた初期型。12機製作。

  • 殲撃7I(J-7I):
    成都による初期生産型で、1門だった30I型30mm機関砲を2門にした昼間戦闘機型。
    少数生産。

  • F-7A:
    J-7I型の輸出型。渦噴7エンジンを渦噴7Bに換装。
    アルバニアとタンザニアに輸出された。

  • 殲撃7II(J-7II):
    J-7I型の改良型。
    キャノピーを再設計し射出座席を装備したほか、エンジンを渦噴7Bに換装、機内燃料タンクを増設などが行われている。
    人民解放軍空軍の主力となった他、同海軍にも配備されている。

  • F-7B:
    J-7II型の輸出型。
    AIM-9や仏製R550?AAMを運用できる。
    エジプト、イラク、スーダンに輸出された。

  • 殲撃7IIA(J-7IIA):
    J-7II型の改修型。
    FCS等のアビオニクスは西側製の物を搭載しピトー管が機種下面から同上面に移設された。

  • F-7M:
    J-7IIA型の改良輸出型。
    バングラデシュ(F-7MB)、イラン(F-7N)、ミャンマー、ジンバブエに輸出された。

  • F-7IIN:
    F-7M型の改良型。JL-7Aレーダーを搭載。ジンバブエに輸出された。

  • F-7B:
    輸出型。AIM-9R-550AAMの運用が可能。
    北朝鮮、イラク、エジプト、スーダンへ輸出された。

  • F-7BS:
    J-7IIA型の輸出型。
    中国製アビオニクスを装備するが、HUDは未装備。
    戦力増強のためにスリランカに輸出された。

  • F-7NI:
    ナイジェリアへの輸出型。

  • Super-7(超七):
    米グラマン社と共同の改修計画。天安門事件により中止。
    のちにFC-1(JF-17)?へと発展。

  • 殲撃7IIH(J-7II):
    J-7II型の対地攻撃能力強化型。

  • F-7M「エアガード」:
    F-7IIA型ベースの改良輸出型。
    主に射出座席をさらに改善し、ハードポイントを4ヶ所に増設した型。
    バングラデシュ(F-7MB)、イラン(F-7N)、ミャンマー、ジンバブエ、イエメン共和国に輸出されている。

  • F-7P「エアボルト」:
    M型のパキスタン空軍型。
    AIM-9「サイドワインダー」AAMを4発搭載できる。

  • F-7MP「エアボルト」:
    P型の改良型。
    各種新型アビオニクスを搭載し、多種多様な兵装を搭載できるように、パイロンを2個増加、後方視界用リアビューミラー?を搭載している。

  • 殲撃7III(J-7C):
    Mig-21MF相当の改良型。全天候作戦能力を持つ。
    性能不良で少数のみ生産。

  • 殲撃7IIIA(J-7D):
    J-7III型の改良型。性能不良で少数のみ生産。2011年11月27日に全機が退役。

  • 殲撃7E(J-7E):
    J-7IIの改良型。主翼をダブルデルタ翼に全面改修し、電子装備を改良。
    全天候運用能力を持つ。中国空軍向け。

  • 殲撃7EH(J-7EH):
    J-7Eの海軍航空隊向け改修型。
    洋上飛行に備えて機体やエンジンの各部に防錆防塩処理が施されている。

  • 殲撃7EB(J-7EB):
    J-7E型ベースのアクロ機。
    中国空軍のアクロバットチーム「空中儀仗隊」に配備された。

  • F-7MG:
    J-7Eの輸出型。

  • F-7PG:
    J-7MGのパキスタン空軍型。0-0射出座席、ECM装置等を備える。

  • 殲撃7FS(J-7FS):
    エア・インテイクを下部に移し機首上面にレーダーを搭載したテスト機。

  • 殲撃7G(J-7G):
    J-7Eの改良型。KLJ-6Eパルスドップラー・レーダーを装備。

  • F-7BG:
    J-7Gのバングラデシュ空軍型。

  • F-7BGI:
    F-7BGの発展型。2012年から運用予定。

  • F-7NM:
    J-7G型のナミビア空軍型。F-7NGの名称もある。

  • 殲撃7GB(J-7GB):
    J-7Gベースのアクロ機。
    J-7EBに替わって「空中儀仗隊」に配備された。

  • 殲教7(JJ-7):
    MiG-21Uに準じた複座練習機型。
    ベース機体の違いにより数種類の派生型が存在する。

  • FT-7:
    JJ-7の輸出型。

  • 殲教7A(JJ-7A/FT-7A):
    J-7A/F-7Aの複座練習機型。

  • 殲教7B(JJ-7B/FT-7B):
    J-7B/F-7Bの複座練習機型。

  • 殲教7M(JJ-7M/FT-7M):
    F-7Mの複座練習機型。

  • FT-7P:
    F-7Pの複座練習機型。23mm連装機関砲を装備するために胴体が延長されている。

  • FT-7PG:
    パキスタン向け輸出型。

  • FT-7NI:
    PG型のナイジェリア向け輸出型。

  • F-7MF:
    多目的戦闘機型。
    FC-1の輸出向け廉価版として開発されている。

  • F-7MS:
    レーダー試験機型。
    F-7MF用のレーダーをテストした。

    J-7E.jpg

Photo:Chinese Defence Today

関連:MiG-21


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