【拿捕】(だほ)

船舶の内部に突入し、必要なら白兵戦を経た上で船内を制圧する事。
調査目的の一時的な拿捕*1は「臨検」、ある海域を通過する全ての船舶を拿捕する場合は「海上封鎖」と表記する。

国際法に基づく慣習として、司法・軍事上正当な理由なく船を拿捕する事は認められていない。
つまり、合法的に拿捕を行う船舶は軍隊もしくは法執行機関として所属を明らかにしていなければならない。
また、軍隊は交戦国の戦闘艦艇を含む船団、または戦時禁制品に類する品目を搭載した船のみ拿捕できる。
法執行機関は自国の領海内または海賊との遭遇時のみ、犯罪容疑者の逮捕拘束および捜査に必要な場合に拿捕を行う事ができる。

拿捕は原則として非武装の民間船のみを対象とし、艦載砲機関砲で武装された船舶は原則として対象としない。
これは、そのような船の拿捕が事実上不可能なためである。
海上では歩兵機動力が著しく損なわれる上、船の構造自体が障害システムとして機能するため、武装して船内に立て籠もる船員を歩兵によって制圧することは極めて困難である。
このため、そのような船舶にはまず武装解除を呼びかけ、これに応答しない場合は機関砲雷撃艦対艦ミサイルなどで船ごと撃沈・殺害する*2

戦時には敵国の補給艦および商船を拿捕・鹵獲する通商破壊戦がごく一般的である。
各国の海軍はまずもって敵国の通商破壊、あるいはこれを防止する抑止力としての役割を期待される。*3
戦闘艦艇鹵獲して船員を捕虜とする事もあるが、上記の理由から降伏した後にのみ行われる。

関連:鹵獲 海兵隊


*1 無論、調査結果に問題がある場合はその限りでない。
*2 人質救出などのために止むを得ず拿捕する事もあるが、これは特殊部隊が損耗を覚悟して行う極めて危険な任務である。
*3 1930年代〜1940年代の日本海軍は作戦・用兵において海上兵站を軽視したため、国家経済の崩壊に至るほどの大損害を被った。
  とはいえ、艦隊決戦のみに特化しなければ各個撃破され海軍が壊滅していたであろう事も疑いないのだが。


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