【塹壕戦】(ざんごうせん)

当事国同士が長大な塹壕を築城し、互いに相手の塹壕を突破できずに長期に渡って戦線が膠着した状況。俗に第一次世界大戦を指す。

これを引き起こしたのは効率的な障害システムによる足止めと、発達した機関銃による猛烈な弾幕である。
これは現代の基準で考えても歩兵による突破は不可能な布陣であり、有効な対抗戦術が確立されていなかった当時ではおよそ難攻不落以外の何物でもなかった。
両軍の将兵は無謀な突破行を試みては壊滅し、あるいは無謀だからと占領を試みずに間接砲撃だけを無意味に繰り返し、結果として史上空前の膨大な戦死傷者を生み出す事になった。

しかし機関銃では破壊不可能な装甲を持つ戦車と、地形に左右されない機動力を持つ爆撃機の登場によって塹壕戦は早くも短い歴史に終わりを告げることになる。

塹壕戦の短い歴史は、しかし間違いなく当時の史上空前の惨劇であり、「世界大戦」という異常事態を人類史最大の汚点として世界に知らしめたものである*1
その衝撃と畏怖がいかほどのものだったかは、その後の国際連盟?不戦条約の動きなどをみても明らかだろう。いわゆる人権運動、平和主義は全て塹壕戦の惨禍に対する厭戦感情から始まったと見る向きさえある。
実際、その戦禍のあまりの恐ろしさゆえに当時の有識者達でさえ「第一次世界大戦を上回る戦争はもう二度と起こらないだろう」と予測していたほどだったのだ。


*1 わずか四半世紀後には第二次世界大戦がすべての記録を塗り替えてしまったのだが……。

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