【領土】(りょうど)

ある国家が軍事的、経済的な支配下に置き、他国の人間が許可なく滞在できない地域の事。
言い換えれば「どの地域まで侵入したら侵略または不法入国とみなすか」を決定するために国が定めた境界線(国境)の内側にある土地の事。

紛争地域や戦場において、ある土地がどの国の領土なのかはしばしば定かでなくなる。また、領土に関する法的主張はそれ自体が紛争の引き金になる。特に仮想敵国との間で土地の領有権について完全な合意が取れていない場合、その土地がどの国の領土かは「どの国がその地域を軍事的占領下に置いているか」が決めてしまう。
占領できていない側の国家に領地を「奪還」する意志があるかないかに関わらず、そのような地域では多かれ少なかれ軍事的な緊張が発生し、当該地域は正常な経済活動を行えない紛争地帯になる事も少なくない。

このような事情があるため、どこに国境を置くかは主に軍事上の要求によって定められる。
古来もっとも一般的な国境は河川や山岳である。これは軍隊の行軍を妨げる地形的な要害であるため、侵略に対抗するための兵員と要塞を配置するのに都合が良い。
さらに険しい山脈、密林、湖、海洋なども、軍隊の通過がほとんど不可能に近いため事実上の非武装地帯、すなわち国境として定められる事が多い。近代以降は戦略爆撃海兵隊空挺降下などによって過去の戦略的前提が崩れた事例も多いが、それでもなお地形的な通行障害は一定の戦争抑止効果を発揮する。
また、休戦や講和を結んだ結果、戦争の途中で引かれた便宜上の国境がそのまま固定されてしまう事もある。このような国境は防衛戦に適しているとは言い難い場合が多く、その国境を防備するために比較的多くの軍事的投資が必要になる。この事は不利な状況で戦端を開く事を忌避して紛争を抑止する事もあれば、国境線の状況を改善するために再び紛争を引き起こす場合もある。

領有する事が不可能に近いため、事実上どの国の領土でもない地域も存在する。例えば公海や南極大陸*1をその代表例に挙げる事ができる。
これらの地域は、領有する事で多大な国益を生み出す潜在的可能性を秘めているものの、人間が生活するには極度に不向きな環境である事、紛争テロリズムへの対処が必要になった場合の兵站確保が極端に困難である事などの理由から、積極的に領有を目指す動きは今のところない。

関連:領空 領海 無防備都市宣言


*1 アルゼンチン、イギリス、オーストラリア、チリ、ニュージーランド、ノルウェー、フランス、ブラジルは、南極大陸の一部に領有権を主張しているが、実効支配している国は無く、国際的な承認も受けていない。

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