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*&ruby(りょうしんてきへいえききひ){【良心的兵役忌避】}; [#obdd08ee]
Conscientious objection(英).~
[[徴兵制]]が敷かれている国で、本来、兵役につく義務を負わねばならないとされる成年国民が、個人の良心に基づいて自発的に徴兵や戦争への参加を拒否する行為。~
「良心的兵役(徴兵)拒否」ともいう。~
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理由としては、当人の宗教的な信念に基づくものが多数であるが、民族的な問題(その国の社会で差別の対象となりうる少数民族の出身であること等)や政治的・哲学的な信念に立脚するものもある。~
また、国家の外交・軍事政策に反対する意志表明の手段として兵役を拒否する者もいるという。~
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かつて、良心的兵役忌避者は犯罪者とみなされて([[軍隊]]における命令不服従・脱走・[[敵前逃亡]]などと同様、[[軍法会議]]で死刑や終身刑に処されるなど)厳しい刑事罰を科されたり、公的サービスの提供や地域社会での交際・就職・婚姻などを拒絶・制限されるなど、差別の対象として厳しく扱われてきた。~
しかし、前世紀末になってからは行為そのものを基本的人権のひとつである「良心の自由」として認め、合法化している国も出てきている((合法化している国は欧州諸国に多い。))。~
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良心的兵役忌避を合法化している国では、(高齢者介護など)社会福祉事業や環境保護・消防活動などへの従事という「代替措置」を政府が用意し、兵役につかないことを選んだ者にはこれらの役務(市民労役)への参加を強制するケースが多い((これにより、兵役と同様に社会貢献をしているものと解される。))。~
国民が個人的かつ正当な理由で法律上の義務を拒否する事。~
「正当」とは行政・司法において正当な手続きを踏んで拒否する事を意味し、倫理思想上の正当性を意味しない。

**ドイツにおける問題 [#mea4332d]
[[第二次世界大戦]]後、その結果として東西に分割されたドイツでは、(朝鮮半島と同様に)米ソ[[冷戦]]の最前線であったことから東西共に[[徴兵制]]が採用されていた。~
しかし、旧西ドイツでは法令により「良心に従って」兵役を拒否することが認められており、その場合には高齢者介護などの福祉業務に13週間服役することとされていた。~
>原義ではあらゆる法的義務に適用されるが、日本語訳では軍事的文脈に限定されている(反戦運動家が語彙を濫用した形跡がある)。~
とはいえ、実情として大半の事例が[[徴兵制]]に対する拒否で占められているのも統計的事実ではある。

**徴兵拒否 [#ob191465]
[[徴兵制]]は個人(この場合、それまで私兵を囲っていた有力者)の意志を無視して強制的に兵員を供出させるための制度である。~
兵役が望ましいものか否かは元々の経済状況で異なるが、兵士より豊かな層が兵役を拒否するための努力を尽くしてきたのは万国共通の傾向である。~
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やがて、東西の統一や冷戦の終結などといった情勢の変化にしたがって徴兵制を維持する必要性が薄まり、また、(本来は兵役の代替役務であったはずの)福祉業務に従事することを選ぶ兵役対象者が増加し、ついには兵役従事者を上回るまでになった((兵役対象者のうち、実際に入営する者は20%前後という。))。~
そのため、徴兵廃止が議論として上がることもあるが、そうした場合に、福祉業務に従事する人材の供給源が容易に確保できないことから、いまだに徴兵を廃止できないという。
ところで、正当な理由もなく義務を拒否する者が反逆者として処罰・差別されるのは制度上避けられない。~
従って、兵役拒否者は古くから教養の限りを尽くして自己正当化の努力を続けてきた。~
自称される動機として最も多いのは宗教的な信念、特に殺人への嫌悪であるという(ただし、これは歴史的に異端・邪宗ないし個人の悪徳と見られてきた)。~
民族や思想上の理由から「差別的な人々」との共同生活に耐えられない、として兵役を拒否する人々もいる。~
また、政府の外交・[[軍事政策>軍政]]に対する批判や哲学的な信念などの表明として兵役忌避を行う者もいる。

>何を言い繕おうとも結局はお前個人が死にたくないだけだろう、というのが一般的な社会的偏見であり、これを論駁できた例はほとんどない。~
現代においても「良心」「正当」とは兵役忌避を歓迎する人々の阿諛であって、思想哲学として考えるなら特に良心的とも倫理的に正当とも言えない。~
義務を拒否するために[[クーデター]]を企てて[[紛争]]・[[内戦]]・圧政を引き起こすという本末転倒な事例も歴史上散見される。

何をもって正当とするのか、という法的な規定は国によって異なる。~
良心的兵役忌避に関する規定がなく、徴兵拒否を全て[[敵前逃亡]]として扱い死刑・終身刑を宣告する国家もある。~
法的処罰が軽微な国であっても「前科者」「臆病者」として著しく不名誉な扱いを受け、差別により行政処理・地域交際・就職・結婚に支障が生じる事も珍しくない。~
宗教団体などによる組織的な兵役拒否は、属する組織自体が何らかの法的な制裁を受ける事になる。~

>一方、徴兵を拒否しつつ自発的・能動的に社会奉仕活動を行った宗教団体・徴兵拒否者支援団体もある。~
そうした集団は「敬意に価する例外」としての立場を勝ちとり、良心的兵役忌避の制度を作る中核ともなった。~
社会的有力者たちが我が子を兵役から逃れさせるための陰謀の駒として利用したという考え方もできる。

兵役拒否が「良心的」に行われうる、という政治思想は20世紀末から制度として具体化した。~
今日では欧州諸国を中心に、基本的人権の一部である「良心の自由」に基づいて兵役拒否を認める国も出てきている。~
ただしこれは政情の安定した地域のみに限られた傾向で、[[紛争]]地帯においては全く顧みられていない。

>「政情が安定すると[[軍政]]は失権する」というのは歴史的によくある傾向で、その逆もまたよくある傾向である。~
良心的兵役忌避も含めて、近年の[[平和主義]]は戦乱の時代が訪れたら御破算となる可能性が高い。

なお、[[徴兵制]]を敷く国家における兵役は憲法に明記された国民の義務である場合が多い。~
その場合、兵役忌避の法的処理は「法的には兵役に従事したものとみなせる」ものでなければならない。~
これは普通、兵役の代替措置として政府が定めた事業に従事し、一定期間の労働を行う事を意味する。~
兵役の代替に何が行われるかは国によって異なるが、以下のような事業が一般的。

-高齢者介護などの社会福祉事業
-環境保護事業
-消防・防災活動
-その他、各種行政サービスに関する労役
-スポーツの国際競技会、およびそのために必要な試合・練習
--国家代表選手およびその候補生が、技量維持と競技会出場を理由として兵役を拒否する
--軍の内部に競技会のためだけのスポーツ部隊が用意されていて、軍属として競技に出場する


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