【要塞】(ようさい)

Fortress.
塹壕地雷原・対戦車壕などの障害システムと各種火砲を組み合わせ、敵の行軍を阻止・遅延させるために設置された軍事施設。
特に、戦略的見地から兵員の居住施設や兵站拠点を兼ね備えた形で設置される半永久的な施設をこう呼ぶ。
類義語に「砦」「城砦("城塞"とも)」「城」「堡塁」などがある。

行軍経路を見渡せる山地・丘陵地に掩蔽壕を構築し、ここに「要塞砲」と呼ばれる大型の火砲を筆頭に各種の砲とその操作要員となる砲兵、及び兵站施設を収容するのが基本的なつくりである。
そして、敵が近辺を通過しようとした際には設置された砲によってトップアタックをかけて行軍を阻止・妨害し、後方から駆けつけてきた増援部隊と共同して敵を撃退する。

なお、海岸付近の山や内海の島に設置して艦船に対応する要塞の場合は、魚雷堡や機雷堰、防潜網などの障害システムを構築する。

また、味方が攻勢に出ている際には指揮統制や火力支援、前線での戦闘で消耗して後送されてきた部隊や兵員の休養・再編成の拠点ともなる。


一方、攻撃する側は正面から攻略しようとしても消耗が激しくなるだけなので、下記のようなさまざまな対抗戦術を以って対処するのが普通。

  • 工兵に後方から要塞の真下までトンネルを掘らせ、爆薬を仕掛けて爆破する(あるいは攻略部隊を送り込む)。
  • バンカーバスターなどの特殊爆弾で構造物を直接破壊する。
  • 化学兵器生物兵器を散布して守備兵を無力化する。
  • 戦闘工兵を含む)少数の精鋭部隊で一角を攻め取り、そこを発起点にして後続部隊を突入させる。
  • 包囲して兵站を断ち、食料や水の備蓄を消耗させて降伏に導く。
  • 守備兵に流言を流して動揺させ、士気を低下させる。

このようにして活用された要塞であるが、20世紀後半以後、軍の機械化航空機の発達*1により軍事的価値を失い、多くが廃止された。

現在、軍の管理下で残存している要塞施設は、指揮統制兵站の拠点などとして活用されることが多い。


*1 空挺降下ができるようになって背後への浸透が容易になった。

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