【有事法制】(ゆうじほうせい)

ある国と他国との紛争が武力衝突に発展し、相手国の軍隊が自国領内へ侵攻する*1ような事態に陥った際、自国軍隊(日本では自衛隊)のとるべき行動を規定する法制度。
国家・国民にとって急迫不正の侵害があり、通常の憲法秩序では安全を保てない非常事態に際し、憲法の全部または一部の効力を一時的に停止して最終的には国家・国民の安全、憲法秩序の回復を図る「国家緊急権」という思想から生まれた非常事態立法のひとつである。

日本においては「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(武力攻撃事態法)」(2003年施行)、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)」(2006年施行)を中核とし、これに付帯関連する諸法令をあわせてこう呼ぶ。

このような法制度は、外国ではそれぞれの国情に合わせて整備されていることが多いが、日本では
「『平和主義』を定めた憲法との矛盾」
「国民の基本的人権が(一時的とはいえ)強制力をもって停止される*2
などの理由から(革新政党やその影響下にある市民団体・労働組合・一部の知識人・文化人などによる)「法整備」そのものへの反対意見が根強く、長らく整備されてこなかった。

しかし、20世紀末期からの米ソ冷戦終結とそれによって起きた日本周辺での政治・軍事情勢の流動化(北朝鮮によるテポドン事件や日本人拉致の発覚、不審船問題など)に加え、9.11事件によって顕在化したテロリストの脅威などもあって、ようやく整備が始まったが、有事における自衛隊の交戦規則の問題など、いまだ整備途上の問題も残されているのが実情である。

関連:全国瞬時警報システム


*1 内乱やテロ活動・大規模暴動などが発生した場合も含まれる
*2 そのことから、満州事変〜日中事変〜大東亜戦争への流れを連想し、「侵略戦争への備え」と主張する人々もいる。

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