【迷彩】(めいさい)

人間の色彩感覚を迷わせて誤認させる塗装・染色。
厳密には狩りなどで動物の視覚を惑わせるものもあるが、基本的には人間から隠れる事を想定する。

自然に形成されやすい斑模様・斑点・縞模様などで描かれる事が多く、近年は自然のみならず人工物にも対応したパターンが開発されている。
色彩は活動する土地柄に合わせて選択され、雪原なら雪、熱帯雨林なら樹木や濃緑、砂漠なら砂岩の色を摸す。
夜間活動を行う場合や、環境が事前に予想できない場合は黒いものが選ばれる事が多い。
想定外の環境で用いていると不自然な色彩が浮き上がる事になり、かえって目立ってしまう事も多い。*1

本来の機能とは別に、独特の模様から「軍隊的」な一種の象徴としても広く知られている。
完全な迷彩塗装・迷彩服は戦闘員である事を示すものとされ、隠密行動が必要な場合でも非合法戦闘員は着用を避ける傾向にある。

また逆に、自分達が軍隊である事を周囲に示すために意図して不適切な迷彩を着用する事もある。

例えば、陸上自衛隊では出動に際し、ほぼ常にこの用途で迷彩服を用いている。
それが制式の作業服であるから、という事情もあるが、そもそも「目立つ」事が必要な任務が多いためである。
災害派遣や民生支援を行うにあたり、近隣住民の視覚を惑わし正体を隠す事には何のメリットもない。
むしろ自衛隊員である事を公にし、助けを求める市民から見てすぐに識別できる服装であった方が良い。

2000年代、自衛隊がイラクで人道支援を展開した際には、砂漠では極度に目立つ「肩に日の丸をあしらった緑の迷彩服」をわざわざ特注して持ち込んだ。
アラブ圏で「高貴で美しい色」とされる緑を纒い、かつ「日本の兵隊」である事を周知徹底する意図があったという。


*1 色柄だけではなく、形も目立つ要素となる。そのため演習や実戦で使用する迷彩服はアイロンもかけない事が多い。

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