【無防備都市宣言】(むぼうびとしせんげん)

他国と交戦中である国が、ジュネーブ条約(正確にはその追加議定書)に基づき、特定の都市・地域について、自国軍隊の駐留やその支援活動を行わない「無防備地域」とし、相手国による占領を無条件で受け入れるとする宣言。
正確には「無防備地区宣言」という。

戦闘による地域の破壊を(政治的な理由により)避けたい場合や、戦略的・戦術的に価値の低い地域の防衛負担を軽減するなどの目的で行われるが、これを行ったからといって遵守される保障はない(事実、かつての歴史上においても何度となく破られている)
また、この宣言で抑止されるのは都市・地域への直接的な攻撃だけであり、相手国による占領やその後の軍事基地化を防ぐことはできない点に注意が必要である。

近年、日本では一部の革新系市民団体の主導により、いくつかの地方自治体で「無防備都市化条例」を制定させようとする活動が行われているが、以下にあげるような種々の問題により全て否決されている。

  • そもそもこの宣言は「戦時における地域単位での降伏宣言」であり、世界のどの国とも交戦状態にあるわけではない現在の日本では無意味。
  • 防衛政策は国(政府)の専管事項であり、地方自治体は関与できない。
    (ただし、他国からの武力侵攻により政府機構が崩壊してしまった場合には自治体の首長や軍司令官に権限が与えられる、と解されるが、これはあくまでも非常時の措置であることに注意が必要である)
  • 将来、日本がどこかの国と紛争状態に陥り、その国に占領される危険が迫った際に、住民が起こすレジスタンス運動を「条例で」防ぐことはできない。
  • 交戦相手国がジュネーブ条約(とその追加議定書)の未参加国またはゲリラ・テロリストである場合には全く無意味となる。
  • ジュネーブ条約そのものが「地上部隊同士の近接戦闘」を想定しているものであり、航空機による空爆弾道ミサイルによる攻撃には対応が困難となる。第一次世界大戦時、無防備都市宣言していたラインラントやドルトムントは空襲に晒され、第二次世界大戦時にはドレスデンへの苛烈な空襲により数万〜数十万の命が失われ、街は灰塵に帰した。
  • その地域で大地震・風水害などの大災害が起きても、自衛隊の災害派遣出動による救援を受けることができなくなり、人的・物的損害を無用に増やしてしまう恐れがある。(一度出した宣言を解除する方法がないため)
  • 刑法の「内乱罪(国内で政府に対して武力闘争を起こし、政府機構を破壊しようとする罪)」「外患誘致罪(外国が日本へ武力侵攻を行うよう仕向ける罪)」「外患援助罪(日本へ武力侵攻を行う外国軍隊に戦闘員として参加したり、武器・弾薬・燃料・物資・資金などを援助したりする罪)」に該当する恐れがある。
    (万が一外国の武力侵攻が起きた際には当該自治体の首長が上記の罪に問われる可能性がある、とされている)

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