【無反動砲】(むはんどうほう)

野戦砲の一種で、発射時の反動を少なく抑え、制退器や固定砲架などに固定せずに運用できるようにしたもの。
英文では「Recoilless rifle」と呼び、一般にはこれを訳して「無反動砲」と呼んでいるが、「『無反動』は誤訳であり、『Recoilless』は『低反動』『小反動』と訳すべき」という見解もなくはない*1
口径は小さなもので40mm、最大では主力戦車に匹敵する120mmまで。

同威力の砲よりも小型軽量に作れるため、専門の砲兵ではなく歩兵による運用を想定して作られる。
特に機械化部隊において車載兵器として運用される事が多く、車両への攻撃や陣地への制圧射撃煙幕弾・信号弾・照明弾などの非破壊的な砲弾の運用に用いられる。
近年では対戦車ミサイルにシェアを奪われているが、未だ歩兵支援火器の主流の一つである。

反動低減のメカニズム

無反動砲は、砲弾と同等の運動エネルギーを後方に向けて発射・噴射することで、物理法則の「作用・反作用の法則」により反動を減少させている。
当初の無反動砲では、このために砲弾と同質量の油脂と鉛の塊(バラスト)を後方に撃ち出していたが、近年では砲弾の発射ガスを後方に噴射する方式が主流となっている。
また、プラスティックや木製のチップ(カウンターマス)を用いるものや、砲弾にロケット弾を用い、最初は低い初速で発射し、後からロケットで加速する方式もある。

何れにせよ、発射すると砲身の後方から高熱・高速の気流「バックブラスト(back blast)」が発生するため、砲の真後ろ数メートル以内に人がいた場合、その人間はまず間違いなく死亡する。
同様の理由から、砲身を上に向けたり、すぐ後ろに壁がある屋内で使用するのは極めて危険である。

近年ではトーチカや市街地での運用を想定し、バックブラストを抑える工夫が施されている。

各国の主な無反動砲

関連:バズーカ

recoilless.jpg
60式106mm無反動砲(陸上自衛隊


*1 実際、訓練されていない射手が扱えば転倒してもおかしくない程度には反動がある。

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