【無煙火薬】(むえんかやく)

火砲発射薬(ガンパウダー)として広く用いられている爆発物の一種。
商品名から「コルダイト」と呼ばれる事も多いが、製品毎に規格は様々で、必ずしも同一の化学物質ではない。

黒色火薬の「大量に煙を出す」という欠点を改善するものとして登場したため「無煙」と称される。
灰や煤をほとんど出さないが、完全に無煙なわけではない*1
また、静電気火災を防止するために黒鉛が添加されるため、黒色火薬と比べても大差ない程度に黒色である。

様々な規格があるが、綿火薬(ニトロセルロース)を基剤とするものが一般的。
綿火薬は植物繊維(セルロース)を硝酸に漬けたもので、それ自体がきわめて可燃性の強い火薬である。

2007年には綿火薬を『ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン』爆薬に置き換えた「無煙火薬以上に無煙の火薬」も登場している。
これは旧来よりも高火力で小さくて軽く、煙や閃光もさらに少ないが、当時既存の弾薬・銃砲とは互換性がない。

これを溶剤などでゼラチンのように練り合わせ、成形・裁断して乾かしたプラスチック状の粒を薬莢などに充填して用いる。
化学的に同質でも粒の形状によって燃焼速度が変わり、燃焼が遅すぎると爆発事故を招く一方、燃焼が速いと初速が低下する。
このため、重厚な大口径砲では燃焼が遅くなるよう大きめに、華奢な小銃などでは速く燃えるように細かく裁断する。

主な規格

シングルベース
ニトロセルロースをエーテルなどの溶剤で練り合わせたもの。
最も一般的な規格で、拳銃小銃などに用いられる。
ダブルベース
溶剤の代わりにニトログリセリンで練って"二種類の火薬"を混合したもの。
シングルベースより強い推進力を与える反面、焼食が強く砲身命数に良くない。
トリプルベース
ニトロセルロース、ニトログリセリン、ニトログアニジンを混ぜ合わせる"三種類の火薬"の混合物。
安定性が高く、燃焼温度が低いため砲身命数が比較的長くなる。

*1 一切の煙を生じない完全無煙火薬「オクタニトロキュバン」も実験室環境でなら存在する。
  しかしそのコストは同重量の純金に匹敵し、量産する方法も開発されていない。


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