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*&ruby(みんかんぐんじかいしゃ){【民間軍事会社】}; [#za747386]
特定の国家・[[軍隊]]・組織・武装勢力などと契約を結び、人員やサービスを提供することで軍事的活動に参加する企業。~
Private Military Company(PMC)、またはPrivate Military Firms(PMF)とも呼ばれている。~
古代からある「[[傭兵]]」を現代化した組織ともいえるが、傭兵は国際的には非合法化されているため、表向きには「警備会社」や「人材派遣会社」などの合法企業に偽装していることが多い。~
*&ruby(みんかんぐんじがいしゃ){【民間軍事会社】}; [#za747386]
Private Military and Security Company(PMSC)~
Private Military Company / Private Military Contractor(PMC)~
Private Military Firm(PFM)~
Private Security Company / Private Security Contractor(PSC)~

>表記が一定しないのは法的なグレーゾーンに属し、制度的標準化が困難であるという事情に因る。

[[軍事]]的な人員・サービスを提供する企業。~
事実上は「組織化された[[傭兵]]の集団」であるが、[[傭兵]]は国際的に非合法であり、法的には警備会社・人材派遣会社・[[民兵]]組織などの名目を掲げる事が多い。~
独立採算制を採って複数の顧客と契約を結ぶ場合もあれば、専属の子会社・下請けとして活動する(企業やマフィアが私兵を擁している)場合もある。~
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20世紀末の米ソ[[冷戦]]終結前後、全世界規模での軍縮や[[低強度紛争>紛争]]の頻発に伴って出現した、とされている。~
[[国家総力戦]]思想の広まりと、それに立脚した[[国民皆兵制度>徴兵制]]の確立によって地位の低下した[[傭兵]]組織が、政府の警察力が機能しない地域に業務の中核を移したのが始まりと言われる。~
[[列強]]各国の資本家が[[植民地]]から富を吸い上げる過程ではどうしても軍事力・警察力が必要となり、それはしばしば民間軍事会社によって賄われていた。~
例えば南北アメリカやアフリカに置かれた農園・鉱山・油田、外洋交易船などは近年まで(場合によっては現代でも)事実上の無法地帯であり、財産を保護するために[[傭兵]]が必要であった。

>植民地開拓においては、先住民に対する強盗殺人などを行う者が後を絶たなかったが、その際の実働兵力も多くは[[傭兵]]によって提供されている。

「米ソ[[冷戦]]の終結前後、軍縮と地域間[[紛争]]の頻発に伴って出現した」と見る向きもあるが、これは必ずしも正しくない。~
実際にそのような経緯で設立された民間軍事会社も皆無ではないが、それら新興企業による供給を受け入れるだけの需要と市場はその時点ですでに存在していた。~
かつての[[植民地]]が独立・近代化して[[傭兵]]の需要が縮小し、民間軍事業界が転換期を迎えたために諸問題が表面化したものと見るべきだろう。~
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関連:[[エグゼクティヴ・アウトカムズ社]] [[ブラックウォーターUSA]]

**典型的な業務形態 [#b7b21fd2]
多くの民間軍事会社は退役した高級軍人が中核となって設立される。~
ただし、正規軍の経歴を必須とするような高度技能職を除けば、ほとんどの業務は現地で雇用・訓練された[[民兵]]レベルの人員によって行われる。~
大規模な企業、特に[[歩兵]][[部隊]]を擁する企業の全職員を退役軍人から調達するのは不可能である。~
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旧来の「傭兵」は、その活動を戦場での戦闘行為にほぼ特化していたが、民間軍事会社では、「直接的な戦闘行為への従事」や「重要施設の警備」といった従来の傭兵業務の他、軍隊自らが行ってきた[[兵站]]業務(補給・輸送・兵器整備業務など)の請負、部隊指揮官に対する[[参謀]]業務((佐官・将官クラスの退役軍人を社員として派遣して行う))、兵員の訓練請負など、幅広い分野での活動が見られる。~
従って、現地の[[民兵]]組織と民間軍事会社はしばしば区別が付かない。~
軍事力を維持するコストを誰かが支払わなければならない以上、庇護や護衛に際して報酬を要求せず、スポンサーの意向を真っ向から無視するような[[民兵]]組織は存在し得ない。~
また、準軍事組織に属する個人は支給される給与によって生活を営んでおり、組織全体の意向がどこにあろうと金銭目当てで行動する可能性が常にある。~
よって、組織に属する個人や一部署が営利目的で活動する事は、その組織が[[傭兵]]である事を意味しないのである。~
それが、民間軍事会社が「我々は[[傭兵]]ではない」と主張する根拠である。~
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また、民間軍事会社の全てが軍事作戦に直接関与するわけでもない。~
補給・輸送・兵器整備などの[[兵站]]業務のみを行うもの、訓練教官や[[参謀]]を派遣するだけの業態も見られる。~
特に零細な企業では、需要のある業務全てを包括的に行うことなど不可能なため、特定の業務のみに特化する企業はさして珍しいものではない。~
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関連:[[エグゼクティヴ・アウトカムズ社]]
比較的身近な例としては、[[紛争]]地域に赴く先進国の人間、例えばNPO団体やTVクルーなどの身辺警護も民間軍事会社の代表的な業務である。~
また、アメリカ国務省では、[[紛争]]地域に派遣される職員の護衛に軍人を割けないことを理由に、民間軍事会社の社員を必要に応じて雇い入れている。

**メリット・デメリット [#p74116b6]
-主なメリット
--「(常備軍を創設・養成・維持することに比して)トータルコストが低く済み、それでいて即応性・戦闘能力も高い」
--「人的損害が出ても『公式の』戦死傷者にカウントされないため、国内世論の批判をかわしやすい((そのため、政治的・技術的な面から正規軍を投入することが難しいミッションにも投入しやすい))」
>現実問題として、そのような人々が職業軍人なり[[傭兵]]なりの力を借りずに目的を達して生還するのは不可能に近い。

-主なデメリット
--「[[ハーグ陸戦条約]]や[[ジュネーブ条約]]などの戦時国際法の縛りがなく、戦争犯罪的行為を助長しやすい((正規兵だと[[軍法会議]]で処罰されるが、民間軍事会社の社員は処罰が軽くなってしまう))」~
--「社内での待遇問題や保障問題などでストライキを起こされたり、会社の判断で一方的に契約を破棄されるリスクがある」
--「[[特殊部隊]]隊員や[[パイロット]]など、軍が国防のために国費で養成した優秀な人材が、30代半ばの脂の乗り切った時期にそうした企業に引き抜かれてしまうことにより、(結果的に)訓練予算の浪費を招く」((アメリカ陸軍の特殊部隊「グリーンベレー」隊員の年収は5万ドル程度といわれているが、この部隊にいたという肩書があればイラクでは1日1,000ドルは稼げたともいう。))((部隊の運用に無理解な上層部に愛想を尽かした現役軍人が、同様の経験をした退役軍人の経営するこうした企業に「転職」するケースもあるという。))~
--「現地で死傷したり敵対勢力の捕虜になった社員が[[非合法戦闘員]]とみなされ、戦時国際法上の保護を受けられない危険がある」~
**法的・倫理的問題 [#d9ca6cf9]
民間軍事会社を雇う主な利点は、「正規軍を正規の作戦行動として派遣できない場合でも軍事的支援を要請できる」という点にある。~
そして、不正規な軍事行動はほとんどあらゆる場合に政治問題の種となる。~
民間軍事会社は根本的には[[傭兵]]であり、歴史的に[[傭兵]]が差別され排除されてきた事由は全て民間軍事会社にも当てはまる。~
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最も根本的な問題として、民間軍事会社は戦時国際法において[[非合法戦闘員]]とみなされる。~
酒に酔って現地人と喧嘩して軽傷を負わせた場合から、敵中に孤立した職員を見捨てる場合まで、政治的[[管制]]の不在はあらゆる戦争犯罪を助長する。~
加えて、民間の労働契約以外に任務に就く上での強制力がないため、倫理的に見て[[敵前逃亡]]としか言いようのない状況でも契約破棄が発生し得る。~
~
また、民間軍事会社は退役軍人に軍事的キャリアを活かせる就職先を提供するが、そうした転職先の存在は、当然ながら正規軍からの退役・転職を促進する。~
人材を厚遇できない腐敗した組織から人材が流出するのは当然の経済的帰結だが、国防のための公的組織を”自由経済”の渦中に置いてよいものかは議論の余地がある。

**主な民間軍事会社 [#oc445b6e]
-アメリカ
--ATAC
--ダインコープ・インターナショナル
--ドラケン・インターナショナル
--コンステリス・ホールディングス(旧トリプル・キャノピー)
--Academi(旧[[ブラックウォーターUSA]])~
~
-ロシア
--スラヴ軍団
--ワグナー・グループ(ワグネル)~
~
-イギリス
--G4S
--イージス・ディフェンス・サービシーズ
--アーマー・グループ
--エリニュス・インターナショナル
--サンドライン・インターナショナル(解散)~
~
-南アフリカ
--[[エグゼクティヴ・アウトカムズ社]](解散)~
~


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