【防護巡洋艦】(ぼうごじゅんようかん)

Protected Cruiser.

19世紀末〜20世紀初頭に存在した戦闘艦の分類法。

巡洋艦のうち、機関室上部・砲塔・艦橋にのみ装甲を施した艦。
これに対して船体全周を装甲化したものを「戦艦」「装甲艦」「装甲巡洋艦」などと称した。

世界最初の防護巡洋艦は、1884年にチリ海軍向けに竣工した「エスメラルダ」*1
以後「大型の装甲巡洋艦1隻分の予算で小型・高速の防護巡洋艦が3隻建造できる」として各国が建造していった。

装甲のない部分には石炭庫を設けて中空装甲のような防御区画を設けていたが、防御面に深刻な問題があった事は疑いない。
この設計の根底には、全周に装甲を配した重い船体を動かすだけのエンジン出力確保が難しかったという当時の技術的限界があった。

やがて艦船用蒸気タービンの登場により、装甲化された重い船体にも耐えられる強力なエンジンが登場。
また、石油燃料が使用されるようになった事で、被弾による引火爆発の危険が飛躍的に増大*2
それらの理由から全周装甲は必須事項となり、軽度の装甲を持つ軽(装甲)巡洋艦へと発展していった。

関連:軽巡洋艦 重巡洋艦


*1 同艦は翌1885年に日本海軍が購入し、「和泉」として就役した。
*2 揮発性を持つ石油燃料と違い、石炭は被弾しただけで誘爆するほど不安定な物質ではない。
 安定した固体であるがゆえに、燃料としての利便性で石油由来の液体燃料に劣る。


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