【防衛出動】(ぼうえいしゅつどう)

自衛隊法で定められた、自衛隊の行動に関する規定のひとつ。

外部からの武力攻撃、または武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると判断された際、日本国の独立を防衛するために、内閣総理大臣の命令に基づいて自衛隊の一部または全てが出動すること*1
内閣総理大臣は防衛出動を命じるに当たり、事前に安全保障会議と閣議を開催し、答申を得た上で国会の承認を得なければならない。
ただし、緊急の場合は国会の承認を事後に得ることを条件として、自衛隊の出動を命じることができる。

この規定が「武力攻撃」として想定しているケースは、主に「他国の正規軍による軍事行動(空爆・ミサイル攻撃・艦砲射撃もしくは地上部隊の着上陸侵攻)」であると見られ、ゲリラテロリスト特殊部隊による不正規戦については「国民保護等出動」により対応されるものと見られる。
これは、非正規戦が主体となった現代において、敵が明らかに所属の分かる正規軍でなければ出動できない法律の不備として指摘されることもしばしばある。

防衛出動が発令されれば、自衛官は定年・任用期間を延長され、予備自衛官は防衛招集を受ける。
さらに自衛隊の任務遂行上必要がある場合には、他の官公庁やインフラ維持に関わる民間企業*2に対しても物資の収用・業務従事命令等が発せられ、出動した部隊の自衛官は自衛隊法88条に基づき「我が国を防衛するため、必要な武力行使」として武器を使用することができる*3
防衛出動発令下での自衛官の離隊・抗命などは、自衛隊法により7年以下の懲役または禁錮の刑に処せられる*4

2013年の現在に至るまで、自衛隊に防衛出動が発令されたことはない。


*1 この他、任務によっては海上保安庁も防衛大臣の指揮下に入る。
*2 電力・水道・ガス供給事業者や報道機関(NHK)、鉄道・バス・海運・航空会社や物流業者など。
*3 海上保安庁が動員された場合、海上保安官の武器使用については警察官等職務執行法が準用される。
*4 自衛隊には軍法会議の規定がないためこうなっているが、他国での同様の事案では「敵前逃亡」として死刑・終身刑などの極刑に処せられるのが普通。

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