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*&ruby(ほうわこうげき){【飽和攻撃】}; [#w3ef5474] Saturation attack.~ 相手の対処能力を上回る攻撃をかけること。~ [[軍事]]用語では、対艦戦闘や[[弾道ミサイル]]迎撃など様々な所で出現する。~ ~ 現代の[[ミサイル]]は一発でも敵を行動不能に陥らせる。~ [[核弾頭>核兵器]]ならば一発の撃ち漏らしも許されない。~ そこで、敵が10発まで迎撃できるのならそれ以上の手数をかければ命中するはず、という、至極まっとうな理屈である。~ 敵の妨害が想定される状況で、敵の妨害能力を超えた数の戦力を集中投入する事。~ ~ 実行には、攻撃をかける各部隊の連携が重要となる。~ 通常の攻撃に比べ防御は難しく、コストがかかるが非常に有効である。~ 敵の迎撃用[[ミサイル]]の在庫が100発なら、101発以上撃てば最後には迎撃が来なくなる。~ 敵が同時に10発の[[ミサイル]]を迎撃できるなら、同時に11発以上撃てばいずれかは迎撃をくぐり抜ける。~ 同じ人間の殴り合いであるなら、1人の敵を10人で囲めば容易に仕留められる。~ ~ [[冷戦]]期、ソ連の[[空軍]]・[[海軍]]が連携した[[機動部隊]]に対する対艦飽和攻撃は、[[アメリカ軍]]にとって脅威であった。~ 当時、[[アメリカ海軍]]の持っていたほとんどの水上艦は、短射程の[[艦対空ミサイル]]を同時に1発しか誘導できなかったため、自艦を守るのが精一杯であり、対空任務艦でも2発までが限度であった。~ 勿論、迎撃したところで必ず成功する保証もなければ、飛来するミサイルだけでなく、それを撃ってきた敵のミサイル母機・母艦も攻撃しなければならない。~ そこで登場したのが[[イージス艦]](「[[タイコンデロガ]]」級ミサイル[[巡洋艦]])である。~ この艦は同時に16発のミサイル誘導が出来、(限度はあるものの)飛来する[[ミサイル]]を余裕を持って迎撃が出来る。~ また、高度な情報処理能力・長視程の[[レーダー]]を持ち、艦隊全体の戦闘を指揮できる。~ [[兵站]]への負荷は莫大なものになるが、実行可能な状況が整えば[[防御]]側に為す術はない。~ 敵の[[防御]]能力が飽和するほどの数の戦力を投入すれば、どんな[[防御]]も粉砕されてしまう。~ ~ ただし、これを実際に行おうとすると大きな問題が生じる。~ 前述のとおり、飽和攻撃に必要な莫大な戦力は、管理運用を行う[[兵站]]に甚大な負荷をかけるからだ。~ この負荷は[[戦略]]的な[[機動力]]を著しく低下させ、また兵器の世代交代をも困難にする。~ 敵の3倍の兵器を有しているなら、[[ドクトリン]]更改に伴う兵器更新の予算も3倍になるのが道理だ。~ 同等以上の国力を持つ敵に飽和攻撃を仕掛けようとすれば、軍備に圧迫されて国家経済が衰退するだろう。~ ~ 軍事以外でも、広く一般的に使われる用語であり、例えばインターネットをサービス不能に陥れる[[DoS攻撃>サイバーテロ]]も飽和攻撃の一種である。~ また、敵の[[防御]]能力が飽和する臨界点は、たいていの場合に定かでない。~ 飽和攻撃を[[戦略]]の中心に据えるなら、事前の[[スパイ]]活動で正確な敵情を把握する事が不可欠である。~ ~ 関連:[[イージス艦]] [[DoS攻撃>サイバーテロ]]