【放射性物質】(ほうしゃせいぶっしつ)

自己の質量の一部を崩壊させて放射線に変換する性質(放射能)を持った物質の総称。
広義の放射性物質は自然界のどこにでも存在し、炭素14やカリウム40等の生物に必須な元素も含まれるし、考古学的な年代測定の手法として物体が含有する放射性物質の質量を調べる事も広く行われている。
ただし、報道などでこの語を用いる場合は放射線によって生体を短期間で死に至らしめるものだけを指す。

被曝による危険性に関してはおおむね以下の通り。
2.5ミリシーベルト:自然界で1年間生活した場合の平均的な被曝量。
4ミリシーベルト:レントゲン撮影1回分の被曝量。
50ミリシーベルト:放射線業務1年あたりの許容被曝量。この限度を超えると遺伝病のリスク大。
0.1シーベルト:胎児の致死量。受精直後であれば即死。発達段階に応じて奇形、知能障害、発育障害など。
0.25シーベルト:短期間に浴びると急性障害が発生。主な症状は悪心、嘔吐、全身倦怠など。
1シーベルト:短期間に浴びると造血障害による免疫不全、それに伴う感染症を発症。
2シーベルト:短期間に浴びると水晶体の混濁(白内障)が発生。最悪は失明に至る。
3シーベルト:短期間に浴びると皮膚細胞が壊死。脱毛や皮膚の紅斑などが発生する。
5シーベルト:短期間に浴びると小腸が壊死。重篤な下痢および細菌感染を伴い、ほぼ生還の見込みなし。
7シーベルト:短期間に浴びると皮膚が表面から皮下脂肪に至るまで壊死し、水疱・腫瘍を形成。
15シーベルト:短期間に浴びると脳を含む中枢神経に障害。5日以上生存する事はまれ。

狭義の放射性物質は核兵器の原材料として有名である。
ただし、これらの物質が地球で発生しうる自然環境で核爆発を起こす事はない。濃度などを調節して外部からエネルギーを加える事で初めて起爆する。
原子炉を利用する発電所・大型船舶についても同様で、このような施設・兵器が破壊されたからといって数千メガトンの大爆発が生じる事はない。
原子力での事故で起こりうる最も悲惨な事態は、放射性物質が粉塵などに混ざって大気中に拡散したり、生物の体内に吸収されたり、紛失して知識のない民間人に回収される事による放射線障害である*1

特に問題なのは、何らかの用途に使用された後の放射性廃棄物の処理である。
ほとんどの工業用途では、放射性物質がまだ十分な放射能を維持したままの段階で利用不可能になって廃棄されるので、それら廃棄物を環境汚染を引き起こさずに廃棄する特別な処理が必要とされる。
一般的な処置としては漏出しないよう固形化した上で放射線の届かない地中奥深くなどに廃棄されるが、比較的安全な廃棄物は劣化ウラン弾などの使い捨て同然の用途に転用される事もあり、湾岸戦争症候群とは別の視点から環境問題としても議論をかもしている。


*1 レントゲン機材として使われる少量の放射性物質でも、ろくな防護をせずに持ち歩けば数日で1000ミリシーベルトに達する

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