【放射性物質】(ほうしゃせいぶっしつ)

自己の質量の一部を崩壊させて放射線に変換する性質(放射能)を持った物質の総称。
広義の放射性物質は自然界のどこにでも存在し、炭素14やカリウム40等の生物に必須な元素も含まれるし、考古学的な年代測定の手法として物体が含有する放射性物質の質量を調べる事も広く行われている。
ただし、報道などでこの語を用いる場合は放射線によって生体を短期間で死に至らしめるものだけを指す。

自然界で生活すると年間約2.5ミリシーベルト、レントゲン撮影1回で4ミリシーベルトほど被曝すると言われる。
放射線業務に従事する場合は一般に年間50ミリシーベルトまでが許容範囲とされる。
短期間に250ミリシーベルト以上被曝すると白血球の減少を初めとする健康被害が確認され初め、
1000ミリシーベルト以上で重篤な急性放射線障害を引き起こす。
2000ミリシーベルト以降は脱毛、生殖細胞の損傷、白内障などの永続的な後遺症を伴う致死的な症状が発生し、
7000ミリシーベルトを越える被曝から人間が生還した事例は知られていない。

狭義の放射性物質は核兵器の原材料として有名である。
ただし、これらの物質が地球で発生しうる自然環境で核爆発を起こす事はない。濃度などを調節して外部からエネルギーを加える事で初めて起爆する。
原子炉を利用する発電所・大型船舶についても同様で、このような施設・兵器が破壊されたからといって数千メガトンの大爆発が生じる事はない。
原子力での事故で起こりうる最も悲惨な事態は、放射性物質が粉塵などに混ざって大気中に拡散したり、生物の体内に吸収されたり、紛失して知識のない民間人に回収される事による放射線障害である*1

特に問題なのは、何らかの用途に使用された後の放射性廃棄物の処理である。
ほとんどの工業用途では、放射性物質がまだ十分な放射能を維持したままの段階で利用不可能になって廃棄されるので、それら廃棄物を環境汚染を引き起こさずに廃棄する特別な処理が必要とされる。
一般的な処置としては漏出しないよう固形化した上で放射線の届かない地中奥深くなどに廃棄されるが、比較的安全な廃棄物は劣化ウラン弾などの使い捨て同然の用途に転用される事もあり、湾岸戦争症候群とは別の視点から環境問題としても議論をかもしている。


*1 レントゲン機材として使われる少量の放射性物質でも、ろくな防護をせずに持ち歩けば数日で1000ミリシーベルトに達する

トップ 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS