【複合装甲】(ふくごうそうこう)

Composite Armor.

装甲のうち、様々な物質を複合的に用いて形成されているものの総称。
合金のように原料段階で混ぜ合わせているのではなく、各素材で板を作ってから重ねているのが特徴。
密度・硬度・強度・靭性・延性などの物性が異なる複数種類の物体を重ね合わせ、個々の素材の質的弱点を補い合う。

現時点では最も質量効率の良い装甲を実現できる手法で、特に戦車運用において革新をもたらした。
主力戦車においては、複合装甲の登場以前を第2世代、複合装甲を採用した車種が第3世代以降に分類される。

主力戦車の第2世代は冶金学の技術的限界に直面していた世代であり、RPG対戦車ミサイルで容易く撃破された。
翻って第3世代主力戦車の場合、歩兵レベルの対戦車火器では車体正面の複合装甲を貫通できない。

冶金学・材料工学の複雑な知見が応用されており、最新の軍事科学が投入されている機密性の高い分野でもある。
このため、公表されている資料から性能を推し量るのは難しい。
また、同じ複合装甲でも用途や製造年代によって性能や特性が異なるし、異なる特性を付与しやすい。

ほぼ全ての複合装甲に言える総体的な特徴として、以下のような特性が上げられる。

  • セラミックなど硬く割れやすい素材が含まれるため、抗堪性(劣化しにくさ)では鋼板に劣るものと推定される。
  • 抗堪性の低さからか、近代化改修を踏まえてか、装甲材の交換を容易に行える構造で設計されている事が多い。
  • 複数の素材を個別に用意してから成型する製造工程の関係上、曲線的な形状を実現するのが著しく困難。
    • この性質のため避弾径始を実現できず、複合装甲を持つ兵器は丸みのない角張った形状になりがち*1

関連:主力戦車 中空装甲 爆発反応装甲


*1 とはいえ、それでも十分な防御力が確保出来る場合が殆どで、複合装甲が想定する兵器には避弾径始が通用しないものも多い中あえて丸みを持たせる理由は失われている

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