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【半自動式拳銃】 †
Semi-automatic Pistol
発砲後、空薬莢の排出と次弾の装填を人力を介さず自動的に行う機能を備えた拳銃。
装填・排莢に必要な動力は、初弾発射時の反動(リコイル)を利用するタイプが主流*1。
19世紀末に登場し、「弾切れまでは引き金を引く以外の操作を何もしなくて良い」という革新的な機能をもって登場した。
ほぼ同時期にダブルアクション式の回転式拳銃もほぼ同等の機能を実現し、以降の拳銃は連射できる事が当然の前提となった。
その後の20世紀の拳銃の歴史は、信頼性で優れる回転式拳銃と、装填弾数の多い半自動式拳銃との技術競争の様相を呈する事となる。
21世紀に至っては技術向上で信頼性を高めた半自動式拳銃がほぼ全てのシェアを独占し、回転式拳銃を実戦の舞台から駆逐しつつある。
弾薬は箱型の弾倉に収められてグリップに差し込まれ、グリップ越しに掌で弾薬を包むような形になる*2
。
このデザインによって、拳で握って振り回せるサイズを維持しつつ、回転式拳銃を上回る装弾数を実現している。
内部機構が複雑なため操作や保守整備も複雑になりがちで、総じて取り扱いが難しく訓練に時間を要する。
また、その複雑さゆえ黎明期には故障が頻発しており、機械的・社会的な信頼性を確立するまでは長い試行錯誤の歴史があった。
現代の最新モデルは適切に整備されている限りほとんどトラブルを起こさないが、逆に言うと、整備不良を防ぐための時間的投資が必須である。
加えて、銃器としては例外的に民生用途での需要を多く見込めるため、新機種の登場頻度が非常に高い。
売り上げを見込んだ個性化や新機軸の導入が進んでいる事もあって、未知の機種を実戦で混乱なく使いこなすためにはそれなりの訓練を要する。
もっとも、そうした商業的需要ゆえ人間工学的な研究も進んでいるため、一般人が一通り使いこなすのに必要な最低限の手間は少ない。
民生用途 †
サイズが小さく持ち運びが容易なので、民間人や警察官など護身用の武器として、また隠し持って犯罪に用いる凶器としてよく見られる。
かつて護身用武器としては回転式拳銃が使われていた時代もあるが、現代では護身用としても凶器としても大半が半自動式拳銃である。
半自動式は回転式拳銃より装弾数が多く、これは個人レベルの白兵戦では非常に致命的な優位となるためである。
このため、銃規制においても装弾数の多寡が議論される場合がある。もちろん「装弾数は問題の本質ではない」という批判もあるが。
軍事的用途 †
軽い弾丸と短い銃身のために有効射程は不十分で、このため軍事的需要は多くない。
射撃場での練習なら30〜50mで命中する事もあり、誤射についても同程度の配慮を要する。
戦闘中の強度ストレス環境に置かれている場合、10m先を狙い撃って命中を期待できる射手は多くない。
その程度の射程でも素手や刃物・鈍器に対しては十分に有利であるが、散弾銃や小銃に比べれば圧倒的に劣る。
人間に対する殺傷力も十分であるとは言いがたい。
人体に穴を開けて激痛を与え失血死させるには十分だが、防弾チョッキやボディアーマーに防がれた場合はまず致命傷に至らない。
また、極度の戦場ストレスや覚醒剤などで変性意識状態にある人間は拳銃弾を受けてもほとんど苦痛を示さず戦闘を続行する事がある。
人間を即時確実に制圧できる大口径・大威力の半自動式拳銃もいくつか開発されたが、大型化しすぎて拳銃である意味が薄かった。
そもそも隠蔽困難な大型拳銃を大っぴらに持ち歩けるなら、自動小銃・散弾銃・短機関銃などのもっと強力な武装も用意できる。
このため、軍隊に配備される場合の主たる用途は、非戦闘員や主武装喪失時の護身用である。
大規模な正規戦においては実用上の意味がほとんどなく、士気を維持するためだけに配備される装備であった。
もっとも、近年の対テロ戦争では市街地における乱戦も想定され、実際に活用される機会も増えている。
偵察などの隠密行動では、減音器など特殊な補記類を使いやすい拳銃が有利な場合もある。
*1 一部の大型拳銃で発射ガスの圧力を利用するものもある。ただしそうした大型拳銃の主たる用途は遊興であり、実用面では多大な疑問の余地がある。
*2 念のため付記しておくが、フィクションなどで見られる「拳銃の持ち手の下に挿し込む部品」は弾を入れるケース(弾倉)であり、電池ではない。
もっとも、モーターやガスボンベで駆動する遊戯用の模造銃に関してはこの限りでない。