【排水量】(はいすいりょう)

Displacement tonnage

船を水に浮かべた時に押しのけられる水の重さ。おおむね船の重量に等しい。
トン単位で表記するため「排水トン数」と表記する事もある*1
船の状態の違いによって、以下のような区分けがある。

基準排水量
条約や内規など定義不明瞭な「基準」での測定。満載排水量から燃料と予備缶水(水)の重量を差し引いた値である場合が多い。
満載排水量
燃料・水・弾薬などの消耗品を最大限搭載した状態を想定。単に「排水量」と称される場合はふつう満載排水量を指す。
常備排水量
軍艦においては「乗員と弾薬は定数を、燃料・水・糧食は2/3を搭載した状態」を仮定したもので、軍艦が戦闘状態にあることを想定した数値*2
軽荷排水量
軍艦においては「乗組員だけを搭載し、弾薬・燃料を一切搭載しない」と仮定した数値。
商船では貨物・燃料を搭載しないと仮定した数値。
補填軽荷排水量
軽荷排水量の状態にバラストタンクに注水した容量を足した値*3
公試排水量
竣工後に公試(試運転)を実施する際の排水量。公試に際して何をどれだけ搭載しているべきかについて明示された国際基準はない。

現代の科学において、排水量は船舶の重量を類推するもっとも的確な方法とされる。
船は推定重量1万トンを超える事も珍しくない巨大構造物であり、その重量を機械的に測定するのは不可能であるからだ。

排水量の計測法

実のところ、船体重量の機械的測定が不可能なのと同じ理由から、排水量を正確に測定することも不可能である。
排水量は船の進水後、その船体構造と喫水(水面下に沈んだ部分の高さ)から数学的に推定されている。
この計算は極めて複雑であり、実のところ、相当に誤差が大きいと考えられている。
誤差の要因となるパラメーターを挙げれば、代表的なものだけでも以下のようなものがある。

  • 船体の形状
  • 部品の配置と構造
  • 溶接による歪み
  • 船体の傾き
  • 素材の復元性
  • 波の影響
  • 海水の成分濃度

*1 民間船舶で単に「トン数」と言った場合、船体の容積から換算される単位であり、排水量とは定義が異なる。
*2 英国ではかつて「積載排水量」と、大日本帝国海軍ではこの状態を「公試排水量」と称していた。
  なお大日本帝国海軍では、大正末期まで「弾薬3/4、燃料1/4、水1/2を搭載した状態」を「常備排水量」と呼称していた。

*3 軽荷排水量の状態で航行すると復原性が下がるため。

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