【燃料気化爆弾】(ねんりょうきかばくだん)

揮発性及び引火性の高い液体(酸化プロピレン等)を空気中で放出して霧状にし、適度な濃度で起爆して衝撃波を発生させる爆弾。危害範囲は広範囲に渡り、直撃を避けた人間や軟目標にも多大な被害を与えられる。
クラスター爆弾と同様の「非人道的兵器」として廃棄運動も行われており、戦術核に次ぐ威力を持つという一部の人々の見解から「貧者の核爆弾」という言葉もある。
この「威力」が何の事なのかは必ずしも明瞭ではないが、危害範囲の半径がしばしば数百メートルに及ぶというだけで民間人や歩兵にとって「常軌を逸した『威力』」なのは間違いない。
戦術核との比較に関して言えば、そもそもどちらの兵器も(記録されている限り)対人殺傷目的で使用された事はないので、比較する事自体にあまり意味はない。
むしろ、一般人が兵器に対して抱く抽象的な「おぞましさ」の比喩表現として「核」という言葉が使われているのだと考えるのが適切だろう。

ベトナム戦争でアメリカ軍が実用化し、それ以後湾岸戦争やイラク戦争でも使用されたと言われる。その爆発を見たイラク兵のみならず、イギリスの特殊部隊「SAS」の隊員までもが核兵器と勘違いをした程である。また、その後イラク軍の前線に「同じ爆弾を投下する」といったビラをまいたところ大勢のイラク兵が投降したという逸話がある。

一部書籍などに「残忍さ」の一例として
「周りの酸素を奪い、生物を苦しませながら窒息死させる」
と書かれている場合があるが、実際には地上で爆発の衝撃と熱を受けた者はその時点でほぼ死滅すると考えられ、爆発で生き残った者が窒息死するかどうかは定かではない。
しかし、地下壕や洞窟などの中に入っていて衝撃を免れ生き延びた場合、爆発によって奪われた酸素は直後に周りから流れ込んでくるため、「酸欠で」死ぬことはありえないと考えられる。

なお、BLU-82、通称デイジーカッターが燃料気化爆弾であるという情報が多々見られるが、BLU-82はあくまでも通常爆弾であり、燃料気化爆弾ではない。おそらく、スラリー爆薬の原料中に燃料気化爆弾で使用されるものが含まれている事がこの誤解の原因だと思われる。
同様に信頼性の疑わしい風説には「粉塵爆発を利用したタイプも存在する」「湾岸戦争で死のハイウェイを作り出した原因である」などというものもある。

BLU-73/B 100lb型(クラスター用子弾)
BLU-95/B 500lb型
BLU-96/B 2000lb型


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