【日本軍】(にほんぐん)

日本国の正規軍。
時代によって、以下の二つのいずれかがこう定義されている。

大日本帝国軍

1868年〜1945年までの日本(大日本帝国)の正規軍。
下記の「戦後の『日本軍』」と区別する必要のある時は「旧軍」とも呼ばれる。

明治維新の中心勢力となった薩摩藩・長州藩を主力とした官軍の流れを汲み、その創設に当たって、陸軍はドイツ(当初はフランス)を、海軍はイギリスを模範とした。
欧州各国軍隊のノウハウや各種の技術を積極的に取り入れ、(平安時代末期以来700年余り続いた)武士階級による戦闘集団から近代的な国民軍への転換を目指した。
社会制度改革などと合わせた各方面の努力の甲斐もあって、後の日清戦争、日露戦争第一次世界大戦では戦勝国となり、イギリスやアメリカと並ぶ「列強国」として知られるようになるなど、有色人種国の中で唯一西洋と対等に渡り合えるアジア最強の軍隊*1に成長した。
しかし、そのことがかえって他国の警戒感や反発を招き、第二次世界大戦の泥沼に巻き込まれていく事になり、終戦後の1945年11月30日、ポツダム宣言の規定により連合国軍総司令部(GHQ)によって廃止された。

関連:IJA IJN

陸軍と海軍との不仲について

どの国でも、伝統的に陸軍海軍は(そして空軍も)仲が悪いものだが、こと大日本帝国軍に関しては、後世の視点から見れば異常とも感じられるほどの有様であった。

1936年の「2.26事件」では、連合艦隊旗艦であった戦艦長門」が東京に主砲を向け、東京の中心部を占拠していた陸軍の叛乱部隊を攻撃しようとしたことは有名であるが、これ以外にもさまざまな例がある。

  • 海軍が陸上の航空基地から展開する四発大型爆撃機(連山)や爆撃機護衛のための長距離単発戦闘機(零戦?)を開発した一方で、陸軍が航空母艦オートジャイロ搭載母艦)や揚陸艦、(人員・資材輸送用の)潜水艦を建造・運用*2した。
  • 同口径の航空機搭載用機関砲機関銃を、それぞれバラバラに開発した。(しかも弾薬に全く互換性がなかった)
  • 同一メーカー・モデルの外国製航空機エンジンの生産権を、陸海軍で個々に買い付けてライセンス生産していた。
  • 陸軍がcm(センチメーター)を「センチ」と呼ぶから海軍は「サンチ」と呼ぶ。

など、まるで子供やヤクザの意地の張り合いかの如き様相を呈していた。

軍解体後の残務処理について

帝国陸海軍の監督官庁であった「陸軍省」「海軍省」は軍の解体後、「第一復員省」「第二復員省」と改められ、内外に残留していた将兵の復員・帰郷や日本列島周辺に散布された機雷の掃海といった残務処理に従事した。
その後、数度の改編を経て、現在は以下のように引き継がれている。

未処理のままとなっている機雷の探知・除去
防衛省海上自衛隊
軍人恩給の支給
総務省人事・恩給局*3
元将兵及び軍属の軍歴に関する資料の保管・証明書の発行
陸軍将兵・軍属*4:(当該人物が本籍を置いている)各都道府県
海軍将兵及び陸軍高等文官・従軍文官:厚生労働省社会・援護局
日本国内及びその周辺部の測量、地形図・海図の作成など
陸上における大規模三角測量及び地形図の作成(陸軍参謀本部陸地測量部所管):国土地理院
海図の作成、潮流の観測、海底地形の測量など(海軍水路部所管):海上保安庁海洋情報部
戦傷者及びその家族・戦死者の遺族・未帰還者の留守家族に対する援護(生活支援)など
厚生労働省社会・援護局(下記以外の残務処理)
財務省(金銭的補償として交付される国債(記名国債)の発行・交付)
ゆうちょ銀行・郵便局*5及び日本銀行(記名国債の償還金の支払)

現代の日本軍

1952年(サンフランシスコ講和条約発効)以後の現代においては、自衛隊のことをこう指す。
国内において、憲法上の問題から様々な見解主張があるため「軍隊ではない」と主張しているが、海外のメディア自衛隊を表す場合に用いる言葉はJapan Army、Japan Airforce、Japan Navyである。
自衛隊の公式英名である"Self Defence Force"を用いられることは友好国の軍関係者でもあまりなく、公式的なコメントや文書に辛うじて見ることができる程度である。
ただし、最近は徐々にとは言えどもSDFの名称が広がりつつある。

"Self Defence Force"は"Army"などの純軍事用語を避けるための苦肉の策であり、対外的にも「決して"Army"ではなく"Self Defence Force"だ」と広報しているが、"Force"という単語には「力」、「圧力」、「威力」などと同時に「武装集団」や「軍隊」という意味が込められており、英語圏の人々は"Self Defence Force"から容易に「国防軍」を連想するために軍隊ではなく自衛隊だという主張をしても全く理解されていない。
また、かつての所轄官庁である防衛庁(現在の防衛省)が公式英名を"Defence Agency"としていたが、政府機関で"Defence"を用いた場合は「軍隊を管轄する官庁」と言う意味に直結するため、決して「自衛隊を管轄する防衛庁(機関)」と理解されることはなく、「日本軍を管轄する国防省」という意味で認知されていた。

関連:よい説明の書き方

各国における軍隊管轄機関の名称例

なお、日本以外の各国における国防・軍事に関する官庁の英名の一例を以下に述べる。

イギリス
Ministry of Defence
アメリカ
Department of Defense
カナダ
Department of National Defence(カナダ軍:Canadian Forces
オーストラリア
Department of Defence

これ以外にも大半の国では英名を「 〜 of Defence」としており、皮肉にも「防衛庁」を直訳したがために軍隊のイメージを決定的に印象付けてしまっている、という状況であった。

(その後、防衛省への改編に伴って上記の英国と同様の英訳名になった)


*1 現在に至るまで、アメリカ本土に対する空爆を行った軍隊は日本軍が唯一であり、世界最強のアメリカ軍に未だに破られていない史上最悪の損害を負わせたのも、他ならぬ日本軍であった。
*2 当初、これら船舶の運用は工兵科の将兵が「船舶工兵」として担当していたが、後に「船舶兵」という独立の兵科となった。
*3 これは、軍以外の他官庁からの退職公務員と同様の扱いである。
  なお、国家公務員は1958年、地方公務員は1962年から共済年金制度に移行したため、現在は移行時点で受給権が発生していた退職者にのみ支給されている。

*4 高等文官・従軍文官、造兵廠等所属の雇傭人・工員を除く。
*5 旧郵政省→郵政事業庁→日本郵政公社からの承継。

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