【特殊部隊】(とくしゅぶたい)

Special Forces, SF/Special Operations Forces, SOF

軍隊法執行機関?において、偶発的に必要になる事があるが、常に必要なわけではない特殊な任務を担当する部隊
通常業務の範疇外の業務を行うため、特殊な技術やノウハウを習得した専門家により構成される。
一般の将兵・捜査官から必要な資質に秀でた者を選抜して訓練を施すのが普通である。

その性質上、任務に駆り出される頻度が低く、執務時間の大半が訓練で占められるという。

軍事特殊部隊(軍事SOF)

軍隊では、何らかの特殊な能力を持った者で構成された少数精鋭の部隊を指す。
広義には構成員が何か特殊な能力を持っていれば、どのような部隊でも「特殊部隊」となり得る*1
この意味での特殊部隊としてはグリ−ンベレーSEALsなどが特に著名。

ただし、一般には戦闘員スパイの境界領域に属する特殊作戦を担当する部隊を指す。
主任務は情報収集・民衆の煽動・物理的破壊工作・暗殺・敵地潜入など。
必要な技能は現地語での交渉術・狙撃・徒手格闘・爆発物取扱・野外生存術・心理操作など。

こうした技術は国内のテロリストへの対処にも応用される場合がある。
とはいえ、交渉や逮捕は司法機関の領分であり、軍事SOFの投入はおおむね犯人の射殺を意味する*2

ほとんどの国家政府は、いわゆる「特殊作戦」と、それを担当する特殊任務部隊(SMU)の存在を公式には認めない。
存在が公表されている軍事SOFも、その大半は表向き「カウンターテロ任務」を掲げている。
国際問題になるような違法行為に従事する卑劣な部隊など存在するはずがないのである、公式には。

なお、任務の性質上、野戦砲戦車攻撃機などの支援を受けられる事はまずない。
このため、直接的な戦闘能力に関してはどうあっても少人数の歩兵の域を出ない。
特殊部隊は一般に「タフで優秀な兵士」の集まりであるが、それは近代戦では誤差以上のものではない。
彼ら彼女らがタフなのは「孤独と疲労に耐えるため」であって、銃弾に耐えるためではない。

当然のことであるが、人は銃砲に撃たれれば傷つくし、場合によっては死ぬ。
機関銃で蜂の巣にされたが日頃の鍛錬のおかげで生き延びた」などという事は決して期待できない。
同様に「榴弾砲制圧射撃を飛び跳ねて避ける」などという事もできない。

もちろん、戦術次第ではフィクション作品のように「正規部隊を向こうに回して大立ち回り」もできるかもしれない。*3
事実、特殊作戦中の交戦で誇るべき戦果を挙げたケースはある。
とはいえ本来の任務は戦う事ではなく、交戦が不可避な状況でのみ、止むを得ず暴力を行使する。

本来の任務は偵察かもしれず、暗殺かもしれず、人質救出かもしれず、現地人との会談かもしれない。
そのいずれにせよ、誰かの襲撃や妨害を受けない限り銃器が必要になる事はない。
特殊部隊は常に襲撃や妨害を想定して任務に臨むが、交戦を回避できる時はそのために最大限の努力を払う。

警察治安特殊部隊(警察SF)

法執行機関?における特殊部隊は、法令の執行に際して能動的に暴力を行使するために編制される。
主任務は臨検・武装した犯罪者の拘束・人質救出など。
必要な技能は狙撃・徒手格闘技・交渉術などとされる。

一般的な警察官は、正当防衛の必要性は承知していても、自分から暴力を振るう事は想定しない。
不審者に殺される可能性があったとしても、先制攻撃で道行く不審者を殺す事は許されない。
またもちろん、殺傷せずに取り押さえて逮捕すれば良いというものでもない。
「推定無罪」の原則に則り、法的に犯罪者であると確定するまで、人を犯罪者として扱ってはならないからだ。

これは必然的に「能動的な暴力の行使」を前提とするような訓練も許されないという事である。
よって、暴力が必要な場面では、一般的な警察官の規範をあえて逸脱した特殊部隊が投入される。

とはいえ、特殊部隊であっても法執行機関?の基本的な原則は遵守される。
法執行機関が暴力を行使する目的は第一に「市民の保護」、第二に「容疑者を拘束して裁判に出頭させる事」である。
正当防衛や市民の生命などに関わる深刻な事態でない限り、容疑者の殺害はやはり許されない。

主な特殊部隊

部隊名職域管轄国籍
デルタフォース軍事アメリカ陸軍アメリカ合衆国
グリーンベレー軍事アメリカ陸軍アメリカ合衆国
第75レンジャー連隊軍事アメリカ陸軍アメリカ合衆国
SEALs軍事アメリカ海軍アメリカ合衆国
DEVGRU軍事アメリカ海軍アメリカ合衆国
フォース・リーコン?軍事アメリカ海兵隊アメリカ合衆国
TACLET?司法警察?アメリカ沿岸警備隊アメリカ合衆国
SWAT*4司法警察?アメリカ合衆国の各警察アメリカ合衆国
HRT(Host Rescue Team)司法警察?FBI(アメリカ連邦捜査局)アメリカ合衆国
SAS軍事イギリス陸軍グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国
中央即応集団軍事陸上自衛隊日本国
特殊作戦群軍事陸上自衛隊日本国
冬季戦技教育隊軍事陸上自衛隊日本国
西部方面普通科連隊軍事陸上自衛隊日本国
対馬警備隊軍事陸上自衛隊日本国
特別警備隊?軍事海上自衛隊日本国
基地警備教導隊軍事航空自衛隊日本国
特殊急襲部隊?(SAT)司法警察?警視庁および(一部)道府県警察日本国
SIT司法警察?警視庁および各道府県警察日本国
皇宮警察特別警備隊司法警察?皇宮警察本部日本国
総理大臣官邸警備隊司法警察?警視庁日本国
原子力関連施設警戒隊司法警察?一部の道府県警察*5日本国
銃器対策部隊司法警察?警視庁及び各道府県警察*6日本国
海上保安庁特殊警備隊SST司法警察?海上保安庁日本国
フランス外人部隊?軍事フランス陸軍フランス共和国
国家憲兵隊治安介入部隊
(GIGN)
司法警察?フランス国家憲兵隊フランス共和国
GSG9司法警察?ドイツ連邦警察局ドイツ連邦共和国
スペツナズ*7軍事ロシア連邦内の各機関ロシア連邦
オスナズ
SIGINT特殊部隊)
軍事ロシア連邦軍ロシア連邦
第45独立親衛特殊任務連隊軍事ロシア空挺軍ロシア連邦
第45自動車化狙撃師団特殊任務大隊
(通称ヴォストーク(東)大隊)
軍事ロシア陸軍ロシア連邦
第45自動車化狙撃師団特殊任務大隊
(通称ザーパド(西)大隊)
軍事ロシア陸軍ロシア連邦
アルファ部隊
(対テロ特殊部隊)
司法警察?ロシア連邦保安庁
特殊任務センター
ロシア連邦
ヴィンペル部隊
(原子力施設防護特殊部隊)
司法警察?ロシア連邦保安庁
特殊任務センター
ロシア連邦
ザスローン部隊
(破壊工作特殊部隊)
司法警察?ロシア対外情報庁ロシア連邦
第八特殊軍団軍事朝鮮人民軍朝鮮民主主義人民共和国
Su Alti Savunma軍事トルコ陸軍トルコ共和国

*1 自衛隊アメリカ軍との合同演習の際、迫撃砲の命中率が異常に高い事から砲撃専門の特殊部隊だと疑われた事がある。
  ちなみに、射撃を行ったのは一般の隊員であった。

*2 デルタフォースに曰く、「死人に手錠は必要ない」。
  とはいえ、身柄確保を任務とする時は手錠などの捕獲装備が別途に用意される。

*3 一般的な兵士の数倍の訓練と経験を積んだ部隊であれば、当然照準は正確であるし高度な連携も可能なので、大人数の敵と戦いになっても有利になるだろう。
  しかし空爆砲撃で攻撃されたらなす術はない。

*4 各州ごとに呼称が異なる場合がある。
*5 常設組織として保有しているのは福井県警のみ。他は管区機動隊から隊員が出向している。
*6 警視庁(銃器対策レンジャー部隊)・埼玉県警(RATS)及び静岡県警(SRP)には専従組織がある。
*7 ロシア語で「特殊部隊」の意。ロシア国内に設立された雑多な特殊部隊の総称であって、特定の部隊を指す語ではない。

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