【特殊潜航艇】(とくしゅせんこうてい)

Midget submarine(ミゼット・サブマリン)

潜水艦の亜種で、小型の艇体を生かして敵地での隠密任務を目的としたもの。

敵軍港や泊地に停泊する敵艦への魚雷攻撃や、敵支配地域への潜入などに用いられる。
艇体が小さいため航続力搭載量は非常に限られており、作戦海域近くまでは水上艦または潜水艦に搭載されて運ばれることが基本である。*1

アメリカ独立戦争で使われた史上初の潜水艇「タートル」以来、潜水艇はその隠密性を生かして敵艦へひそかに接近し、機雷などを仕掛けて攻撃するのが基本であった。
やがて離れた敵を雷撃できる魚雷が発明されたものの、初期のものは海流に流されてしまい命中精度は低かった。
またジャイロにより魚雷が直進できるようになって以降も、敵艦が航行中であれば変針して避けられてしまう場合もあった。
このため、大型で外洋航行性に優れる潜水艦が就役した後も、可能な限り停泊中の敵に近づいて魚雷を撃つことのできる特殊潜航艇は必要と考えられ、第二次世界大戦ごろまで多用された。

しかし航行力が低いため事故に遭う可能性が高く、ひとたび敵に発見されれば撤退も困難で撃沈されるリスクも大きく、多数が採用された割に戦果は少なかったといわれる。
またソナーを内蔵した誘導魚雷が実用化され、さらには長射程の艦対艦ミサイルが普及したりすると、敵艦に近づいて雷撃をするメリットは薄れ、この目的での特殊潜航艇は陳腐化した。

現代では、敵支配地域へ工作員特殊部隊を揚陸する目的で用いられることが多い。

主な特殊潜航艇

  • 日本
    • 甲標的
    • 蛟竜
    • 海龍
  • イギリス
    • X艇
    • XE級潜水艦
    • スティクルバック級潜水艦
  • ドイツ
    • ビーバー
    • モルヒ
    • ネガー
    • UボートXXVII型*2
    • デルフィン(試作のみ)


*1 例外としては自軍の軍港と敵地が近接している場合があり、北朝鮮は多数の「半潜水艇」を韓国へ潜入させたとされている。
*2 ヘヒトやゼーフントとも呼ばれる。

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