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*&ruby(とうごうぐん){【統合軍】}; [#a770fdf9]
[[軍隊]]において、[[陸>陸軍]][[海>海軍]][[空>空軍]]の各軍種を統合した組織の一部または全部のこと。~
Unified Command.~
~
近代に入り、各軍種の専門化や高度化が進み、大規模作戦や[[国家総力戦]]においては軍種を超えて統合指揮を行う必要が出てきた。~
また、官僚化した軍種間の競合(([[陸軍]]・[[海軍]]・[[空軍]]相互の対立は、どの国においても大なり小なり存在しているという。))が軍の効率的な運用((幹部教育や[[兵站]]、兵器開発など。))を妨害していると判断された場合や、軍縮により軍の規模を小型化し、より効率性を求めた場合にも陸海空軍などを統合し、国軍としての統合軍が編成される場合もある((ベルギー軍は2002年に統合軍化し、陸上・海上・航空・医療の4部隊に再編された。))。~
[[軍隊]]において、[[陸>陸軍]][[海>海軍]][[空>空軍]]の各軍種を統合して一つの指揮系統にまとめなおす事。~
主として以下の理由から組織される。

-ひとつの軍種では対処不能なほど複雑ないし大規模な[[作戦]]を実行する、またはそうした[[作戦]]が想定される
-軍種間の競合関係や官僚制度的対立が[[軍政]]の効率的運用を妨げている
-軍縮により高級軍人のポストが減らされ、軍種の差異を無視して職責が統合された

**各国における統合軍 [#s8392229]
ここでは、各国の軍隊における「統合軍」について述べる。

***アメリカ合衆国 [#z843325a]
[[アメリカ軍]]においては~
「作戦行動中に軍種によって指揮系統が分かれることが作戦の阻害要因にもなり、軍種を超えた''統合司令部''を設置することが望ましい」~
という考えに則り、2つ以上の軍種を地域別あるいは機能別に統合した統合軍を編制、設置している。~
地域別統合軍の司令官は、各方面で主力となる軍の[[将官]]が務めていたが、2000年からは四軍((2019年からは[[宇宙軍>アメリカ宇宙軍]]を加えた五軍。))の持ち回りになっている。~
~
現時点での編成は以下の通り。
-地域別~
&ref(http://img.weblio.jp/ic/?u=http%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fwikipedia%2Fcommons%2Fthumb%2Fe%2Fe6%2FUnified_Combatant_Commands_map.png%2F330px-Unified_Combatant_Commands_map.png);
--[[アメリカ北方軍]]→北米担当
--[[アメリカ中央軍]]→中東担当
--[[アメリカアフリカ軍]]→アフリカ担当
--[[アメリカ欧州軍]]→ヨーロッパ担当
--[[アメリカ太平洋軍]]→アジア・太平洋地域担当
--[[アメリカインド太平洋軍]]→アジア・太平洋およびインド洋地域担当
--[[アメリカ南方軍]]→中南米担当
--[[アメリカ宇宙統合軍]]→宇宙空間担当
-機能別
--[[アメリカ特殊作戦軍]]
--[[アメリカ戦略軍]]
--[[アメリカ輸送軍]]
--[[アメリカ特殊作戦軍]]→[[特殊作戦]]担当
--[[アメリカ戦略軍]]→[[戦略核兵器]]の管理・運用担当
--[[アメリカサイバー軍]]→サイバー戦担当
--[[アメリカ輸送軍]]→[[戦略]]規模の[[兵站]]担当

また、これとは別に、[[海兵隊>アメリカ海兵隊]]には[[陸>陸軍]][[海>海軍]][[空軍]]の全機能(([[輸送>輸送艦]]・[[揚陸艦艇>揚陸艦]]部隊(船舶の運用は[[海軍>アメリカ海軍]]に委任)、[[マルチロールファイター]]を擁する航空部隊及び[[機械化歩兵部隊>歩兵]]・[[空挺部隊]]を擁している。))がまとめられており、「全世界への緊急[[展開]]を任務としたミニ統合軍」というべき組織になっている((ただし、運用上では上記の「地域・機能別統合軍」の一構成要素でもあり、[[統合参謀本部>アメリカ統合参謀本部]]の指揮下で行動している。))。

***日本国 [#v83cb7a7]
現在の[[自衛隊]]においては、自衛隊法第22条(特別の部隊の編成)により、[[統合幕僚監部]]の下に二つ以上の軍種([[陸上自衛隊]]・[[海上自衛隊]]及び[[航空自衛隊]])を組み合わせた部隊を編成することができる、と定められている。~
これにより編成される部隊は「統合任務部隊(JTF)」と呼ばれ、必要とされる兵力は防衛大臣からの命令によって各自衛隊から差し出され、統合幕僚長の下に単一の司令部・指揮官を持って編制される。~
法令上、[[統合幕僚監部]]の下に二つ以上の軍種を組み合わせた「[[統合任務部隊(JTF)>統合任務部隊]]」を編成できる。~
兵力は防衛大臣からの命令によって各自衛隊から差し出され、[[統合幕僚長>大将]]の下に単一の司令部・指揮官を以って編制される。~
~
JTFが編制されるのは以下のような時とされている。~
-[[防衛出動]]、[[治安出動]]、警護出動などの出動命令時
-国民保護等派遣
-海上警備行動
-海賊対処行動((現在、ソマリア沖・アデン湾で[[海上自衛隊]]が主体となって組まれているJTFでは、[[P-3C>P-3]][[哨戒機]]の基地を警備するために[[陸上自衛隊]]から人員が派出されており、加えて数名の[[海上保安官]]が[[護衛艦]]に乗り組んでいる。))
-[[弾道ミサイル]]等の[[破壊措置>ミサイル防衛]]
-災害派遣・地震防災派遣・原子力災害派遣((2011年3月の東日本大震災で編制されたJTFでは、一時は10万名近くもの兵力が組み込まれ、総兵力の1/3が動員されることになった。))
-訓練

JTFは[[有事]]などの際に都度編制される組織であるが、これ以外にも、自衛隊法第21条の3を根拠にした「常設の統合部隊」があり、現在、以下の2部隊が運用されている。
-自衛隊指揮通信システム隊
JTFは[[有事]]などの際に都度編制される組織であるが、他にも以下の2部隊が「常設の」統合部隊として運用されている。
-[[自衛隊]]サイバー防衛隊
-自衛隊情報保全隊

***ベルギー王国 [#i0043ced]
[[冷戦]]終結に伴う緊張緩和により、軍の縮小再編が行われていた。~
この一環として、2002年には軍組織全体を単一の統合軍化し、以下四つの部隊からなる単一の軍隊として再編成された。~

-ベルギー陸上構成部隊(旧ベルギー[[陸軍]])
-ベルギー海上構成部隊(旧ベルギー[[海軍]])
-ベルギー航空構成部隊(旧ベルギー[[空軍]])
-ベルギー医療構成部隊

なお、[[海軍]]所管の航空機はすべて航空構成部隊へ移されている。

***カナダ [#i8310426]
1968年、それまであった陸海空軍が統合されて「カナダ軍」となったが、当初は[[階級]]呼称や軍服等をめぐって様々な不満が噴出したという。~
その後紆余曲折を経て、現在は「事実上の軍種」として、従来の陸海空軍の呼称が用いられている。~
この他、「カナダ統合作戦軍」「カナダ[[特殊作戦]]軍」という作戦上の統合部隊を擁している。


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