【電動機】(でんどうき)

Motor.

電気エネルギーを消費して回転運動を行う機関。モーター
電流を電磁石に流して磁気を発生させ、その磁力による反発をトルクとして利用する。

同様の原理で、回転運動ではなく一回性の直線運動を行う「リニアモーター」も存在する。

この場合、「一回性」とは反発して飛び出した部品などがそのまま戻ってこない事を意味する。
ピストンのような往復が必要な場合はトルクモーターにピストンを繋ぐ方式が採られ、リニアモーターは用いない。

電動機そのものはロスが少なく、環境負荷や危険も少なく*1、なおかつ制御も容易という、原動機としては極めて理想的な要素を備えた機械である。
また、必要とあれば直径1cmにも満たないサイズで安定稼動させることもできるほどコンパクトに作れるため、特に小型機械の動力源として高いシェアを占めており、家庭や工場などでも広く利用されている。
しかし、電力の供給・確保に難があるため、全体として内燃機関のシェアを奪うまでには至っていない。

電力を得る発電機として現在主流なのは、巨大な蒸気タービンガスタービンである。
これらの発電方法は「燃料→熱→回転運動→電流」という複雑な変換プロセスを経るため、ロスが非常に大きい。
加えて、電気エネルギーは効率よく蓄積・保存するのが極めて困難である。
自然エネルギー発電や高効率電池などの新技術が待たれる所である。

軍事分野での利用

「動力源の長期間の蓄積が難しい」という点が兵器の運用上著しく不適格なため、軍事的需要は比較的少ない。
基本的には電子機器など、構造的に電力の利用が不可避な場合の「ついで」で運用される。
また、エンジン駆動時の余剰出力を電流に変換して電動機を含む電子機器を運用する事も多い。

例としては以下のような機器が挙げられる。

また、未だ実用段階にない研究段階の技術としては以下のようなものも想定されている。

  • 電磁カタパルト
    従来の高圧蒸気や油圧、バネの反発力や火薬の爆発力に代えて、リニアモーターで航空機失速しない速度まで加速させて離陸を補助するもの。

    バリエーションとして、ロケットエンジンの代わりにリニアモーターで人工衛星や宇宙船を大気圏外へ打ち上げる「軌道エレベーター」あるいは「マスドライバー」と呼ばれるものもある。

  • 電磁投射砲
    装薬の代わりに、または装薬と併用してリニアモーターで砲弾を加速する火砲
    サイエンス・フィクションでは「レールガン」などと呼ばれている兵器である。

    1980年代のアメリカでSDIの一環として、大陸間弾道ミサイル軍事衛星を撃破するための手段として研究が行われていた。

*1 都市の電力網や電池からエネルギーの供給を受けることができ、危険な燃料の管理を必要としないため。
*2 潜航中は燃料を燃焼させる酸素の供給が難しく、内燃機関を動かすことが困難なため、あらかじめ二次電池に充電しておいた電力で電動機を動かして航行する。

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