【鉄道】(てつどう)

道の上に鉄製*1の軌道(レール)を敷く事。
便宜上、そのように敷かれた軌道を利用して走る車両や、そうした軌道・車両を利用する物流システム全般も指す。

予め土地を確保してレールを敷く必要があるため、インフラ整備のために極めて多大な時間と初期投資を必要とする。
一方、鉄道車両は悪路を想定する必要がなく*2、また道路ではとても走れないような長大な車両を運用する事ができる。
整備された鉄道網は、同じ条件下で自動車を使う場合の1/10程度の低コストで輸送を行う事ができる。

18世紀後半から19世紀に掛けて登場し、初期は馬車や人力車で行われていた荷役の負担を軽減するために用いられた。
エンジンの技術と結びつく事で世界中に広まり、現代でも交通網の要として広く利用される。

兵器としての鉄道車両

鉄道の登場は軍事革命的な出来事でもあり、国家総力戦を戦う上で重要な要素であった。
武器・弾薬・食料・人員・資材など、大量の物資を高速で非常に効率良く輸送することが不可欠だったためである。
このため、一時期は兵站戦略上の方針に基づいて輜重兵科工兵科が軍用鉄道網の整備・運用を受け持っていた。

また、極めて多大なペイロードを活かし、巨大な兵器を搭載して戦闘に直接参加する鉄道車両も登場した。

当時の戦車では搭載困難な大型の榴弾砲を台車に搭載した「列車砲」。
あるいは装甲化した機関車が高射砲カノン砲機関砲を牽引する「装甲列車」など。

しかし、戦闘兵器としての鉄道車両は、その機動に致命的な欠陥を抱えていた。
レール上での直進・後退しかできないため、列車は回避機動を取る事も隠れる事もできない。
戦車航空機ヒットアンドアウェイに徹した場合、対処は事実上不可能であった。
この弱点が第二次世界大戦において浮き彫りになり、鉄道は軍事の第一線から退いていった。

現代に至っては、軍隊はレールを敷く時間すら確保できないほど活発に機動するのが普通である。
このため、鉄道の本領であった兵站輸送においても、機動性に優れた自動車や航空機に置き換えられつつある。

とはいえ、交戦を想定しない場合には現代でもコスト・パフォーマンス面で最優に近い。
このため、平時の領土内交通では兵站網の構成要素として現在も鉄道が活用されている。

また、現代でも列車砲の後継として、弾道ミサイルを搭載した列車が運用される場合がある。
弾道ミサイル1発は少なくとも5〜7トン以上の重量を持ち、車両輸送はあまり現実的でないためである*3
こうした弾道ミサイル貨車の中には戦略核兵器を搭載したものも含まれるという。

関連:戦略哨戒


*1 近年ではコンクリート製のレールも開発され、モノレールなどで使用されている。
*2 レール上を直進するだけなので、進路変更や右折・左折を行う機能すら必要とされない。加速と減速さえ可能ならそれで良いのである。
*3 日本の運転免許区分で例えれば、ミサイル1発ごとに大型貨物自動車1台を確保しなければならない計算になる。

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