【中東戦争】(ちゅうとうせんそう)

第二次世界大戦後、イスラエルとアラブ諸国(エジプト*1、シリア、ヨルダン)との間に勃発した一連の戦争。
代表的かつ大規模なものだけでも4回に渡って勃発し、散発的な戦闘を含めれば現在まで終結していない。
実際、レバノンを巡るイスラエル・シリア間での緊張状態は現在も予断を許さない状況にある。

開戦はイスラエルの建国から3日目で、これ以後、現在に至るまでイスラエルは戦時体制を継続している。

主要な会戦

第一次中東戦争(パレスチナ戦争/イスラエル独立戦争)1948年
概要
期間1948年5月15日〜1949年3月10日
場所主にパレスチナやイスラエル
結果イスラエル軍の勝利
交戦戦力イスラエル
援助国:チェコスロバキア
エジプト、シリア、イラク、レバノン、トランスヨルダン、サウジアラビア、
イエメン、モロッコ、イギリス・エジプト領スーダン
援助国:パキスタン
戦力イスラエル側29,677人(開戦時)
117,500人(停戦時)
アラブ諸国側不明
損害イスラエル側死者6,373人(軍人約4,000人、民間人約2,400人)
アラブ諸国側不明

パレスチナに入植中であったユダヤ人集団が一方的にイスラエルの建国を宣言、それを認めないアラブ人勢力と支援する周辺国がイスラエルの排除を目的として武力侵攻。
イスラエルの兵力はアラブ諸国の1/5以下であったが、士気戦術と資金力によって対抗*2
アラブ諸国の攻勢は跳ね返され、双方が国連の介入を受ける形で一応の終戦を迎えた*3

第二次中東戦争(スエズ動乱)1956年
概要
期間1956年10月29日〜1957年3月
場所主にシナイ半島
結果軍事的にはイスラエル側、政治的にはエジプト側の勝利。
スエズ運河はエジプトの国有化へ。
交戦戦力イスラエル、イギリス、フランス
エジプト
援助国:チェコスロバキア
戦力イスラエル側175,000人
イギリス側45,000人
フランス側34,000人
エジプト側70,000人
損害イスラエル側死者197人
イギリス側死者56人、負傷者91人
フランス側死者10人、負傷者43人
エジプト側死者1,650人、負傷者4,900人、捕虜6,185人

エジプトの指導者、ナセル大統領がスエズ運河の領有を宣言。
これに対し、運河に利権を持つ英仏がイスラエルを扇動、両者の利害が一致しエジプトに侵攻した。
エジプト軍は、英仏の兵器供与を受けたイスラエルに対して防戦ままならず、スエズ以東のシナイ半島が占領された。
しかし、国際社会が英仏イを非難*4。これを受けて三国が撤退し、戦争は終結した。

第三次中東戦争(六日間戦争)1967年6月
概要
期間1947年6月5日〜6月10日
場所シナイ半島、ガザ地区、ヨルダン川西岸、ゴラン高原
結果イスラエル軍の勝利
シナイ半島、ガザ地区、ヨルダン川西岸、ゴラン高原を占領
パレスチナ難民の増加
国連での安保理決議242号の採択
交戦戦力イスラエル
主要交戦国:アラブ連合共和国、エジプト、シリア、ヨルダン、イラク
戦力イスラエル側現役兵50,000人、予備役兵214,000人、作戦機300機、戦車800輌
エジプト側240,000人
シリア側75,000人
ヨルダン側55,000人
損害イスラエル側戦死者776〜983人、負傷者4,517人、捕虜15人
アラブ連合側戦死21,000人、負傷45,000人、捕虜6,000人、航空機400機以上(推定)

アラブ諸国の侵攻計画を事前に察知したイスラエルが先制奇襲計画「レッド・シート作戦」を実行し、開戦。
イスラエルの攻勢対航空作戦によって、エジプト空軍は一日にして約400機の航空機を喪失。
航空優勢を完全に喪失したアラブ諸国は、そのままシナイ半島全域・東エルサレム・ゴラン高原を奪われ、停戦。

この戦争に際し、フランスのド・ゴール政権はイスラエルへの経済制裁措置を発動。
これに伴う武器禁輸で、イスラエル空軍は機体供給源を喪失した。
これを契機に、イスラエルの航空機メーカー・IAI社は国産戦闘機の開発に乗り出した。
同社は後にネシェルクフィルなどを世に送り出す事となる。

第四次中東戦争(ヨムキプール戦争 / ラマダン戦争)1973年10月
概要
期間1973年10月6日〜10月24日
場所ゴラン高原、シナイ半島(スエズ運河周辺)
結果軍事的にはイスラエル、政治的にはエジプト・シリアの勝利
エジプト・イスラエル平和条約の締結
第1次オイルショックの発生
交戦戦力主要交戦国:イスラエル
支援国:アメリカ合衆国
主要交戦国:アラブ共和国連邦(エジプト・シリア)
部隊派遣国:イラク、ヨルダン、モロッコ、レバノン、サウジアラビア、
リビア、クウェート、アルジェリア、スーダン、チュニジア
支援国:ソビエト連邦、キューバ、北朝鮮、パキスタン
戦力イスラエル側人員310,000〜350,000人(動員時)
戦車2,000輌、装甲車4,000輌、野砲570門、戦闘機・攻撃機352機
エジプト側人員315,000人
戦車2,200輌、装甲車2,400輌、野砲1,210門、戦闘機・攻撃機550機
シリア側人員140,000人
戦車1,820輌、装甲車1,300輌、野砲655門、戦闘機・攻撃機275機
イラク側人員20,000人
戦車300輌、装甲車300輌、野砲54門
ヨルダン側人員5,000人
戦車220輌、装甲車200輌、野砲36門
その他のアラブ諸国人員25,000人
戦車370輌、装甲車120輌、野砲100門
損害イスラエル側戦死2,523〜4,000名、負傷8,800名、捕虜・行方不明508名
戦車840〜1,000輌、装甲車400〜2,000輌、野砲50〜75門、戦闘機・攻撃機103機
エジプト側戦死5,000名、負傷1万2,000名、捕虜・行方不明8,031名
戦車650〜1,100輌、装甲車450輌、野砲300門、戦闘機・攻撃機223機
シリア側戦死3,100名、負傷6,000名、捕虜・行方不明500名
戦車600〜1,200輌、装甲車400輌、野砲250門、戦闘機・攻撃機118機
イラク側戦死300名、負傷1,000名、捕虜・行方不明500名
戦車200輌、装甲車:不明、野砲:不明
ヨルダン側戦死28名、負傷49名、捕虜・行方不明なし
戦車54輌、装甲車:不明、野砲:不明
その他アラブ諸国戦死100名、負傷500名、捕虜・行方不明:不明
兵器:不明

イスラエルの警戒が緩む贖罪の日(ヨムキプール)を狙ったエジプトの奇襲攻撃で開戦。
航空機250機を動員したエジプト軍の先制奇襲で、イスラエル軍は多大な損害を受ける。
一方、ソ連から兵器供与を受けたシリア・エジプト両軍はゴラン高原、シナイ半島を一部占領した。
イスラエルはソ連製の新兵器に対応出来ず、開戦3日で航空機40、戦車400以上を喪失。

しかし、アメリカが大規模な介入を行い、イスラエルは戦力を盛り返して反撃に移る。
エジプトの占領地は全て奪還され、シリアは首都目前、エジプトはスエズまで押し戻されて停戦。

なお、この教訓からイスラエルは自国の防衛戦略に適合した国産主力戦車「メルカバ」の開発に着手。
また、対戦車ミサイル対策として爆発反応装甲を実用化した。
戦車部隊と歩兵部隊の協同作戦の重要さも再確認され、各国で戦車部隊の行軍に追随できる歩兵戦闘車装甲兵員輸送車の開発、配備が推し進められた。

日本への影響(オイルショック)

日本は遠く離れた中東の情勢にさほど深く関与せず、軍事的にも外交的にも中立の立場を貫いた。
しかし、石油資源の多くを中東からの輸入に依存する関係上、全く影響を受けないわけにはいかなかった。
世に言う「第一次オイルショック」である。

第四次中東戦争の折、アラブ圏の産油国は石油価格の引き上げと、イスラエル支援国家への石油禁輸を決定。
日本は石油禁輸こそ受けなかったが、原油価格高騰に伴う物価上昇によって経済に大打撃を受けた。
これにより、1960年代から続いた日本の高度経済成長期は完全に終わってしまった。

また、この時期には石油輸入の途絶が懸念され、下記のように国民生活にさまざまな影響が引き起こされた。
それらはデマゴーグの影響も大きく、総じて風評被害と言うべき性質のものであった。

  • トイレットペーパーや洗剤などの買占め・売り惜しみ。
  • 定期刊行出版物(新聞・週刊誌・漫画雑誌など)のページ数大幅削減。
  • ガソリンスタンドの日曜・祝日休業。
  • デパートのエスカレーター運転休止。
  • テレビの放送時間短縮*5
  • ネオンサインの早期消灯。

関連:YS-11 観艦式


*1 1979年、第四次中東戦争の停戦を受けてエジプトとイスラエルは和平条約を締結。
  翌年には両国の国交が正常化され、1982年にはシナイ半島全域がエジプトに返還された。
  イスラエル・エジプト間の戦争は完全に終結し、現在まで大規模な交戦は行われていない。

*2 世界各地に散らばるユダヤ人の協力資金で第二次世界大戦の余剰兵器を大量購入。
  驚くべき事に、ユダヤ資本であったにも関わらず、ナチ時代のドイツ製兵器であるBf109等も(正確にはチェコスロバキア製のアビアS199だが)購入している。

*3 この時、停戦監視のために組織された「国際連合休戦監視機構(UNTSO)」は、国連初にして現在まで活動が継続されている平和維持活動である。
*4 特にソ連は「イギリスを攻めるのに海軍は必要なく、今はミサイルさえ有れば良い」と、暗に核兵器の使用すらほのめかした。
*5 この時、「電力節減のため」として、NHKは日中午後の数時間と深夜11時以降の放送を休止し、民放も深夜0時以降の放送を休止した。

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