【多目的空母】(たもくてきくうぼ)

  1. 1975年以降のアメリカ海軍における正規空母の別名。
    それまでの攻撃空母対潜空母などを再統合したものであることに由来する。

  2. 近年になって提唱されている、航空母艦と他の艦艇(主に揚陸艦)の能力を組み合わせてマルチロール化した艦に対する通称。

    20世紀末の米ソ冷戦終結後、全面戦争の可能性が低減し、かわりに非対称戦争や災害派遣などへの対応が求められるようになり、機動力の高い兵器システムである空母に対して求められる能力は変化しつつある。
    多様な艦艇を有する艦隊で総合的な戦闘能力を示せるアメリカ合衆国を除けば、空母と揚陸艦などを展開させて立体的な作戦能力を誇示することは難しい*1
    そこで、ユニットコストの高い空母を最大限に活用するためのマルチロール化を図ったものが多目的空母といえる。

    こうした経緯から、軽空母揚陸艦の能力を兼ね備えた、軽空母よりも大きく正規空母よりも小さい艦であることが多い。*2
    例としてイタリアの「カヴール」(空母兼輸送艦)や、スペインの「フアン・カルロス1世」(空母兼強襲揚陸艦)が挙げられる。
    また、日本の「いずも」級は、ヘリコプター空母輸送艦・補給艦・病院船の能力を兼ね備えたものになるとされている。

    関連:航空巡洋艦 航空戦艦

*1 そもそも、複数の正規空母を保有できる国もアメリカ以外に存在しないのが現実である。
*2 アメリカのタラワ級・ワスプ級といった強襲揚陸艦STOVL機の運用能力を持っているが、これらは揚陸部隊への近接航空支援を目的としたものであり、空母のように多様な任務を前提としたものではない。

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