【曹長】(そうちょう)

Sergeant Major.

軍隊自衛隊における下士官の階級のひとつ。
NATO階級符号では「OR-8」に該当する。

長期の幹部教育(士官学校などの卒業)を前提としない兵士の階級としては多くの国で最高位である。
典型的には一兵卒として入隊し、10〜20年程度の軍歴を積んだ上で、抜きんでた技量・統率力を持つ者が選抜される。
近年では、曹長から勤続の長い者には「(最先任)上級曹長」など、さらなる昇進(NATO階級符号では「OR-9」)がある軍隊もある。

主な職務は分隊・小隊程度の小規模な部・隊における、統率上必要な雑務と助言である。
曹長の直上に士官教育を受けた尉官が配属されるが、これは普通「まだ現場を知らない新任士官」である。
実務能力でも人間的信用でも遙かに優る曹長に対してどう接し、どう指揮するかは士官の出世競争における最初の課題である。

一種の都市伝説だが、「前線における士官の死因として最も多いものは部下による上官殺しである」という風説がある。
実際、兵士が怒りに任せて衝動的に犯したと思しき殺人事件は多々あるし、証拠不十分な疑惑も含めれば枚挙に暇がない。
そうした部下の憤懣を見張り、宥め、指揮系統の自壊を防ぐ事も曹長に不可欠な資質である。
―――つまり、曹長自身も上官に殺意を抱いている場合、それを見張って未然に阻止できる者はいない。

日本における「曹長」

現在の陸上自衛隊航空自衛隊において、実際に旧陸軍の曹長に相当するのは1等陸曹(1等空曹)である。
これは、陸(空)曹長が新設されたのが1980年の事であり、それまでは1曹が自衛隊における下士官の最高位であったためで、陸(空)曹長はその上の上級曹長に相当する。
なお、旧海軍の下士官は兵曹という独自の呼称を使用し、これに上等、一等、二等を頭に付記して区別しており、上等兵曹が曹長に相当していた*1
従って、海上自衛隊の1等海曹は正しくは上等兵曹に相当し、海曹長は上級上等兵曹に相当する。


*1 この区分になったのは1942年10月以後で、それまでは一等、二等、三等の区分であった。

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