【狙撃】(そげき)

Snipe.

視認して何者であるかを確認した上で目標を狙い撃つ事。
拳銃小銃の基本的な射撃方法であり、機関銃でも行われることがある。
厳密には戦線を構築したり撤退の経路を確保した上で比較的長距離から撃つ事を指し、白兵戦間接砲撃は含まない。
また、フルオート射撃も除外する場合が多い。

さらに狭義では、専門的な訓練を受けた狙撃手狙撃銃などを使用して重要な目標を遠距離から狙い撃つ行為を指す。
一般の目に触れやすい対テロ任務においては特にこの傾向が強い。
自国市街地での突発的な対テロ戦闘では砲兵攻撃機が投入困難なため、狙撃手が事実上唯一の火力支援となる事も多い。

狙撃と戦争神経症

意外に知られていない事だが、狙撃という行為は戦場において最も強烈なストレスを伴う行動の一つである。
戦場に身を置く人間のほとんどは、「戦場で死ぬかも知れない」というストレスへの耐性を獲得している*1
しかし一方で、自分の手で人を殺す罪悪感によるストレスにはほとんどの兵士が耐えられない。
訓練を受けているため撃てと命じられれば射撃するが、殺人に繋がる行動を反射的に回避してしまう。

アメリカ南北戦争における逸話。
とある激戦区で、敵と味方がそれぞれ各一個中隊ずつ横隊で並び、約10mの距離を挟んで対峙した。
そこに指揮官の号令がかかって交戦が開始され、2個中隊分の小銃で一斉射撃が行われた。
にも関わらず、その一連の射撃で死傷した兵士は誰一人としていなかった。
敵の顔が眼前にあった事が悪かったのだろう、兵士達が思わず銃口を敵の頭上に逸らしてしまったのである。

狙撃手は訓練もさる事ながら、そうした罪悪感を抑止する心構えが何よりもまず必要とされる。
平静さを保ったまま狙撃を行う事ができない人間が圧倒的多数で、射殺後に後悔から戦争神経症を発症する事も珍しくない。
狙撃の精神的重圧に対する耐性は先天的なセンスに負う部分が多く、訓練で克服するのは困難である。


*1 耐えられない人間のほとんどは軍事教練にも耐えられないため、実際に戦場を訪れる前に脱落する。

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