【全滅】(ぜんめつ)

annihilate

ある特定の用途・目的に利用できる資源や人材が何一つ残っていない状態。
日本語では「壊滅」と呼ぶ事もあり、他者を全滅させる事を「殲滅」と言い換える事もある。

軍事において「全滅」という場合、部隊に戦える人間が誰もいなくなった状態を指す。
無論、実際にそのような事態が発生する最大の原因は戦闘による損害である。

ただし、「全滅」は必ずしも部隊全員が皆殺しにされた事を意味しない。
ECMの影響や通信機器の破損などで部隊MIAに陥れば、それは事実上の全滅である。
撤退後送に際して混乱が生じた場合、所在の確認が取れるまで便宜的に全滅とみなす事は多い。
また、部隊が敵に降伏した場合も、経緯はどうあれ「戦えない」事に変わりはないので全滅とみなされる。

必要な装備・施設を失って規定の作戦行動を完遂できなくなった場合も軍事的には全滅とされる。
たとえば空港燃料備蓄が尽きた場合、死傷者数に関係なく空軍としては全滅である。

訓練や演習では、便宜上「戦力*1の2〜3割が失われた」時点で全滅と判定される事が多い。
劣勢に陥った部隊の勝機は漸減するため*2、指揮官は皆殺しにされる前のある時点で敗北を確信する。
それがどの時点かは個々の状況によるが、基本的には損耗率30%程度が勝利を望める限界とされる。

ただし、これは増援の到着が望めず、またそもそも撤退が可能である場合にのみ適用される。
状況によっては殲滅されるまで死守を続ける事もあり得るし、逆に無血の降伏も起こりえる。

通常、こうした全滅判定は一時的なものであり、後方での再編成によって戦力を取り戻すものと期待される。
ただし、兵站や制度上の事情から部隊再編成が断念される可能性もある*3


*1 基本的にはある指揮官が指令を与える直接の部下1名を基本単位とする。
  中隊長の視点で見るなら配下の小隊長、戦闘機編隊なら個々の戦闘機パイロットが問題となる。

*2 ランチェスターの第二法則によれば、彼我の戦力差は時間経過と共に拡大していくものとされる。
*3 例えば、1個師団のほぼ全員がKIAとなった場合、その師団はもはや再建不可能とみなされる。
  仮に戦闘可能な状態で生き残っていた兵がいたとしても、比較的欠員が少ない他の部隊に組み込んで再編成したほうが合理的であろう。


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