【全地球測位装置】(ぜんちきゅうそくいそうち)

Global Positioning System(GPS).
人工衛星を利用した航法支援装置。理論上、地球上のどこでも正確な現在位置を割り出す事ができる。
船舶や登山用では地図や海図との併用を想定して緯度・経度のみを記す小型の端末がよく用いられる。
自動車や携帯電話など地図の不備が予想される場合、画面上に現在位置に合わせた地図を表示するタイプのものが主流。

GPSのシステムは常に電波を送信し続ける専用の人工衛星に依存する。
衛星からの電波には人工衛星が飛行中の軌道と、内蔵の原子時計で算出された正確な送信時刻の情報が含まれる。
これを受信した端末は、送信から受信までの経過時間*1と電波に含まれる位置情報から、人工衛星の所在、および受信端末との距離を算定する。
これを3基の衛星に対して同時に行う事で、受信機が存在する位置の経度・緯度・高度を全て算出できる。
ただし、実際には時計の誤差が無視できないほど大きいため、時計の誤差修正のためにもう1基の衛星を用いる。
また、地球上のどの位置の上空にも常に4基以上のGPS衛星が存在する必要があるため、実際に必要な衛星の数は30基を超える。*2

現在はアメリカ空軍?が構築したシステムが民間に開放されているが、これは各国にとって望ましい事態ではない*3*4
日本・ロシア・EUなどの宇宙開発先進国では、自国所有の衛星のみで同様のシステムを構築するための研究開発が進められている。

関連:GPS誘導爆弾

ディファレンシャルGPS

Differential GPS(DGPS).
GPSの測定精度を高めるための手法の一つ。
位置(緯度・経度・標高)の確定した基地局でGPS衛星の電波を受信し、補正情報を生成する。
受信機は自身のGPS情報を基地局からの補正情報によって検証し、誤差を相殺する。

日本では海上保安庁が全国27ヶ所の基地局を保有し、主に日本列島近海を航行する船舶向けに中波ビーコンで送信している。
別個の静止衛星*5から送信される情報を利用したり、既存のラジオ放送局が利用しない周波数帯域で送信する方法*6もある。

GPSにまつわる誤解

日本におけるGPSの代表的な利用例として、自動車に搭載される「カーナビ」がある。
これに関連して、以下のような話が伝えられている。

  • GPS衛星は、カーナビを積んだ車にその車の位置情報を送っている。
  • GPS衛星がカーナビのルートを引いている。
  • GPS衛星は車の位置を逆探知できる。
  • GPS衛星とカーナビが通信をしている。
  • アメリカ軍CIAがGPSから収集した情報を使って何か陰謀を企んでいる(多分エリア51かどこかで)

実態を言えば、GPS端末の情報を無線電波やインターネットで送信する事は可能であり、実際に行われている。*7
送信された位置情報のハッキングも原理的には可能であり、実際に行われていないという保証はない。
しかし、それをGPS衛星が受信する事はない。
GPS衛星には内蔵された時計の時刻や飛行中の軌道データを送信する機能しかないためだ。

結局のところ、カーナビの機能のほとんどはカーナビ自体に内蔵されたコンピューターに依存している。
なんらかの情報漏洩や不備があったとしても、それはやはりカーナビの小さな機械に起因する。


*1 光速は常に一定であるため、経過時間から正確に距離を逆算できる。ただし時計の精度やコンピューターの処理能力による誤差は不可避である。
*2 理論上は、最低24基あれば地球上全域をカバーできるとされている。
*3 開放当初はアメリカの軍事政策上の理由から、米軍の軍用受信機以外で算出すると必ず数十mの誤差が生じるように設定されていた。
  この設定は現在撤廃されているが、将来、復活しないという保証はどこにもない。

*4 また、2008年以降の全世界的景気後退の影響を受けて米軍のGPS衛星運用予算が削減されたため、老朽化した衛星の更新が遅れ、GPSを利用したあらゆるシステムに影響が出る恐れがあると指摘されている。
  このことも、各国でのGPSの代替となる衛星測位システムの構築を後押ししている。

*5 日本では測位衛星「みちびき」が打ち上げられた。
*6 日本では1997年〜2008年まで、JFN(全国FM放送協議会)系列のFMラジオ局が、カーナビ向けにサービスを実施していた。
*7 実用例としては、運輸業などで使われる「車両位置監視システム」や、児童・高齢者向けのセキュリティシステムなどがある。

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