【前線】(ぜんせん)

battlefront.

紛争状態における領土の境界線。「戦線」とも。
法的・政治的主張ではなく、軍事防御による実効支配のみを問題とする。

基本的に、前線は師団規模以上の地上部隊によって防御体制が敷かれている。
前線後方での兵站活動が破壊されないよう、敵の浸透を阻止するのがその任務である。
戦争とは多くの場合、甲乙二つの戦線が激突し、どちらかが崩壊に至る事を意味する。

大規模な浸透を許してしまった場合、敵のいない場所まで撤退し、改めて前線を構築し直す事になる。
また逆に、突撃して敵の戦線を突破した場合も、後続部隊が敵地を占領して新たな戦線を構築する。
もちろん後方に無限の土地があるわけではないので、前線の崩壊はしばしば戦争の趨勢を決定的に左右する。

なお、国境が半ば固定された前線となったのは第一次世界大戦以降から。
「前線」という言葉自体、元々はこの戦争の西部戦線で現出した異常事態を指す語であった。
新兵器の機関銃を前に突撃不能になった両軍は、迂回路を作るため横方向に延々と塹壕を伸ばし続けた。
結果、内陸奥深くから始まった塹壕が北海沿岸まで続くに至り、両軍が「地図上に引かれた一本の曲線」を境として睨み合うに至った。
軍事史において、これが歴史上はじめて明確に構築された「前線」であると考えられている。

それ以前の戦争は、各所に点在する要塞とそれをつなぐ道路上で発生している。
国境全域に兵力を分散させても敵の突撃浸透を防げなかったため、戦力は一塊に集結する必要があった。
結果、両軍の機動可能戦力の大半がある地点で一挙に「会敵」し、その激突によって勝敗が決している。

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