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【潜水艦】 †
Submarine*1.
水中に潜伏し、必要な時に浮上し、再び潜水できる艦艇。
船体にバラストタンクを持ち、これに海水を注入すると重くなって沈み、排水すると軽くなって浮上する。
基本的には以下のような任務に投入される。
- 仮想敵国の海上活動を監視する
- スパイや特殊作戦要員を秘密裏に上陸させる
- 制海権を失った状況下で敵の監視をかいくぐって物資・兵員を輸送する
- 巡航ミサイル・弾道ミサイルによる敵重要施設への空爆
- 商船・輸送艦を沈める通商破壊戦
- 機雷を散布して港湾・海峡を封鎖する
- 敵艦隊に対する陽動攻撃
- 損傷して撤退する敵艦への追撃
- 戦略核兵器を発射可能な状態で海中に秘匿する
- 敵の潜水艦を捜索・排除する
多くの技術的脆弱性を抱えた兵器であり、まだその技術体系が「枯れて」いない新しい分野でもある。
高度な科学技術上の差異が性能に直結するため、設計・建造できる国家は極めて限られている。
それらの事情と、そもそも秘匿を前提とするため、潜水艦は徹底的なRE対策が行われている。
建造過程はもちろん、搭乗員、艦のシリアルナンバー、果ては部品の形状*2ですら軍事機密である。
海上が常にレーダーと軍事衛星の監視下にある現代では、事実上唯一撤退が可能な艦艇である。
潜水艦を運用できない海軍は偵察・陽動が不可能になり、作戦運用を行う事ができない。
また通常の水上艦隊においても、対潜護衛能力は全滅を避けるための最重要課題である。
関連:群狼戦術 てつのくじら館 サブマリナー 哨戒機 対潜機 対潜魚雷 対潜ヘリコプター
動力系統 †
潜水艦は、静粛な電動機を駆動系とするのが普通である。
電源は発電用の内燃機関から取るのが一般的だが、騒音を避けるため、戦闘態勢では機関を稼働させず、事前にいったん二次電池に蓄電した上で用いられる。
酸素の消費を節約するため、スターリングエンジンや燃料電池を用いる艦もある。
しかしながら、酸素は(乗員の生存にも必要なため)有限であり、必要に応じて吸気管を水面上に突き出して換気を行う。
黎明期には換気技術が未発達だったため、潜水を維持できる時間が非常に短かった。
そのため海上で浮上したまま巡航し、作戦上必要な時にのみ潜水していた。
例外的に、原子炉と蒸気タービンを搭載した原子力潜水艦も存在する。
これは電力供給に制限がなく*3、また海水を電気分解して酸素を生成できるため換気を必要としない。
一方で、原子力潜水艦は動力区画の小型化が困難で、また、原子炉も休止させることが困難なため静粛性は損なわれ、発見されやすくなる。
探知 †
海水はレーダー波を吸収するため、潜水艦はほとんどレーダーを利用できない。
従って、敵艦を発見・追尾する主な手段はソナー(音波探信儀)である。
戦時でなければ望遠鏡を海上に張り出す「潜望鏡」が利用される事もある。
かつては戦闘時にも潜望鏡が用いられたが、現代のレーダーは小さな潜望鏡も発見してしまうため控えられている。
兵装 †
水中から艦載砲を撃つ事はできないため、主な武装は魚雷・艦対艦ミサイルである。
第一次世界大戦頃は魚雷の信頼性が低かったため、浮上して艦載砲を撃つ場合も多かった。
しかし、1940年代以降は魚雷の進歩及び探知技術の進化と共に艦載砲は廃され、潜水したまま攻撃するのが常道となっている。
1930〜1940年代の日本では、一部の艦で航空機(水上機)も攻撃兵装として用いられたが、これも現在では廃れている(潜水空母・伊四〇〇?の項も参照)*4。
潜水艦の区分 †
- 戦略潜水艦
- 原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)
- 弾道ミサイル潜水艦(SSB)
- 原子力ミサイル潜水艦(SSGN)
- ミサイル潜水艦(SSG)
- 原子力弾道ミサイル潜水艦(SSBN)
- 攻撃潜水艦
- 原子力攻撃型潜水艦(SSN)
- 攻撃型/哨戒潜水艦(SS)
- 対潜潜水艦(SSK)
- 原子力攻撃型潜水艦(SSN)
- その他の特務艦
- 特務/実験潜水艦(SSA)
- 原子力特務潜水艦(SSAN)
- 支援潜水艦(TSS/ATSS)
- 小型潜水艇(SSM)
- 沿岸潜水艇(SSC)
- 特殊任務用潜水艇(LSDV)
- 深海救難艇(DSRV)
- 特務/実験潜水艦(SSA)
*1 アメリカ海軍での艦籍記号は「SS」。
*2 例えば、ハッチの厚さがわかれば最大潜行深度が推定でき、そこから装甲強度、撃沈に必要な爆薬量なども類推できる。
*3 放射性物質の臨界反応によって水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回して電気を取り出すので、動力の生成に酸素が直接関与しない。
*4 ただし「潜水艦からの飛翔体運用」という発想そのものは現在の攻撃潜水艦や戦略潜水艦に受け継がれている。