【戦略哨戒】(せんりゃくしょうかい)

Strategic patrol
戦略核兵器を搭載した戦略爆撃機戦略潜水艦などを巡回させ、いつでも核攻撃が実施できるように備えること。「戦略パトロール」と表記されることも多い。
一般的な「哨戒」(敵がいないか見回ること)とは全く異なる任務である。
その目的は、大きく分けて二つ存在する。

ひとつは、ミサイルの能力(搭載力や射程距離)が小さかった頃に、仮想敵国領空領海付近に戦略兵器を配置しておき、一朝有事の際はすぐさま核攻撃をできるように備えて相互確証破壊を成立させることであった。
核兵器を搭載したB-52などに代表される戦略爆撃機の乗員は、核戦争の先陣を担うとして非常に強いストレスにさらされていたという。
また、哨戒飛行中の事故により搭載された核爆弾が機外に離脱し、結果、所在不明になってしまうという事故が起きるリスクも顕在していた。(アメリカ軍ではこうした事故を「ブロークンアロー」という符丁で呼んでいた)

こうした、爆撃機による戦略哨戒はミサイルの搭載力や射程の向上にしたがって頻度が減少し、米ソ冷戦の終結とともに見られなくなった。
しかしながらロシアのプーチン大統領は2007年8月、北極海上空での戦略爆撃機による戦略哨戒を復活させた。これはエネルギー資源をめぐっての、周辺諸国に対する示威行動と見られている。

もうひとつは、自国の核兵器を配備した基地(弾道ミサイルの発射基地や戦略爆撃機の配備された空軍基地)が急襲された場合に備え、核兵器を分散秘匿配置することである。
この任務には主に秘匿性の高い戦略潜水艦があてがわれ、現在でも各々の核兵器保有国が実施している。

この方法も、冷戦期にはさまざまなアイディアが考案されている。
アメリカでは
C-5戦略輸送機に弾道ミサイルを搭載、いざというときには空中から投げ落とし、落下中にロケットエンジンに点火して発射する方式」
「地下に網の目のように張り巡らされたトンネルの中を、発射装置を積んだ車両がランダムに走り回り、いざというときには地面からミサイルが顔を出す『もぐら叩き』方式」
「本物のミサイルを収めたサイロとは別個に、ダミーのサイロを多数作っておく『当て物』方式」
などが考え出された。

一方のソ連では、鉄道網に貨車に偽装した発射装置を連結した列車を走らせ、線路のあるところからならどこでも発射できるシステムが考案された。


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