【戦略哨戒】(せんりゃくしょうかい)

Strategic patrol.

直訳すれば、戦略的な意味を持つ哨戒活動。
慣用表現としては核戦争の勃発を察知し迅速に対処するための軍事活動を指す。

戦略爆撃機による戦略哨戒

冷戦前半には、核兵器を搭載した戦略爆撃機による空中哨戒が盛んに行われていた。

当時、まだ弾道ミサイルの技術は未完成であり、核兵器を投射するために有人航空機が必要とされていた。
このため、いつ第三次世界大戦が勃発しても迅速な報復攻撃を行えるよう、また敵国の核攻撃で基地が消滅した際に反撃手段が失われてしまわないよう核武装した戦略爆撃機が常に哨戒飛行を行っていた。

なお、航空機には墜落事故のリスクがつきものであるため、ミサイル技術が安定すると共に戦略爆撃機の運用は縮小されていった。

核兵器の喪失を伴う事故(秘匿名称「ブロークンアロー」)が戦略爆撃機の運用で発生していた事が冷戦終結後に明かされている。
旧ソ連でも同様の事故が発生していたものと予想されるが、東側における核兵器運用の実態は必ずしも明らかでない。

なお、ロシアは2007年に北極海上空での戦略爆撃機による戦略哨戒を復活させている。
これは探知、迎撃システムが整備された現代では純軍事的にはあまり意味のない行為で、周辺諸国に対する示威行動と見られている。

戦略潜水艦による戦略哨戒

冷戦後半以降、戦略哨戒の担い手は戦略潜水艦へと交代していった。
弾道ミサイル技術と宇宙開発の進歩により、適切に配置された潜水艦は世界中どこにでも核を投射できるようになったためである。

また同時期、軍事衛星の実用化により、地理的情報の長期秘匿が極めて困難になった。
核ミサイルサイロや空軍飛行場などは位置が特定されたため、核戦争の初期段階で喪失するものと予想されるようになった。
相互確証破壊を維持するためには所在不明の核兵器が必要だが、現代でそうした秘匿が可能なのはもはや戦略潜水艦のみである。

陸路による戦略哨戒

戦略爆撃機から戦略潜水艦へと移行していく過渡期に、以下のような核兵器秘匿法が試行されている。

しかし結局のところ、どの方式でも陸上で核弾頭を管理運用する必要があるため、ヒューミントの回避が困難である。
このため、運用人員を海中に隔離できる潜水艦ほどの秘匿性は持ち得なかった。


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