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*&ruby(せんりゃくしょうかい){【戦略哨戒】}; [#g9328067]
Strategic patrol.~
~
[[戦略核兵器]]を搭載した[[戦略爆撃機]]や[[戦略潜水艦]]などを巡回させ、いつでも核攻撃が実施できるように備えること。~
「戦略パトロール」と表記されることも多い。~
一般的な「[[哨戒>偵察]]」(敵がいないか見回ること)とは全く異なる任務である。~
直訳すれば、[[戦略]]的な意味を持つ[[哨戒>偵察]]活動。~
慣用表現としては[[核戦争]]の勃発を察知し迅速に対処するための軍事活動を指す。

**目的 [#oc0f529e]
戦略哨戒を行う目的は、大きく分けて二つ存在する。~
**[[戦略爆撃機]]による戦略哨戒 [#i68bb6fe]
[[冷戦]]前半には、[[核兵器]]を搭載した[[戦略爆撃機]]による空中哨戒が盛んに行われていた。~
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ひとつは、[[ミサイル]]の能力([[搭載力>ペイロード]]や射程距離)が小さかった頃に、[[仮想敵国]]の[[領空]]・[[領海]]付近に戦略兵器を配置しておき、一朝有事の際はすぐさま核攻撃をできるように備えて[[相互確証破壊]]を成立させることであった。~
[[核兵器]]を搭載した[[B-52]]などに代表される[[戦略爆撃機]]の[[乗員>エビエーター]]は、[[核戦争]]の先陣を担うとして非常に強いストレスにさらされていたという。~
また、哨戒飛行中の事故により搭載された核爆弾が機外に離脱し、結果、所在不明になってしまうという事故が起きるリスクも顕在していた。([[アメリカ軍]]ではこうした事故を「[[ブロークンアロー]]」という符丁で呼んでいた)~
当時、まだ[[弾道ミサイル]]の技術は未完成であり、[[核兵器]]を投射するために有人航空機が必要とされていた。~
このため、いつ第三次世界大戦が勃発しても迅速な報復攻撃を行えるよう、核武装した[[戦略爆撃機]]が常に哨戒飛行を行っていた。~
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こうした、[[爆撃機]]による戦略哨戒は[[ミサイル]]の搭載力や射程の向上にしたがって頻度が減少し、米ソ[[冷戦]]の終結とともに見られなくなった。~
しかしながらロシアのプーチン大統領は2007年8月、北極海上空での[[戦略爆撃機]]による戦略哨戒を復活させた。~
これはエネルギー資源をめぐっての、周辺諸国に対する[[示威行動>砲艦外交]]と見られている。~
~
もうひとつは、自国の核兵器を配備した基地([[弾道ミサイル]]の発射基地や戦略爆撃機の配備された[[航空基地>飛行場]])が急襲された場合に備え、核兵器を分散秘匿配置することである。~
この任務には主に秘匿性の高い[[戦略潜水艦]]があてがわれ、現在でも各々の[[核兵器保有国]]が実施している。~
なお、航空機には墜落事故のリスクがつきものであるため、ミサイル技術が安定すると共に[[戦略爆撃機]]の運用は縮小されていった。

**核兵器の秘匿方法 [#ad89f803]
上記の通り、現在では核兵器の分散秘匿配置については[[戦略潜水艦]]を活用するという方式が確立しているが、冷戦期にはさまざまなアイディアが考案されてきた。~
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アメリカでは~
-([[C-5]]、[[C-141]]などの)大型[[輸送機]]に弾道ミサイルを搭載、いざというときには空中から投げ落とし、落下中に[[ロケットエンジン]]に点火して発射する方式
-地下に網の目のように張り巡らされたトンネルの中を、発射装置を積んだ車両がランダムに走り回り、いざというときには地面からミサイルが顔を出す「もぐら叩き」方式
-本物のミサイルを収めた[[サイロ]](格納庫兼発射台)とは別個に、ダミーのサイロを多数作っておく「当て物」方式~
>[[核兵器]]の喪失を伴う事故(秘匿名称「[[ブロークンアロー]]」)が[[戦略爆撃機]]の運用で発生していた事が冷戦終結後に明かされている。~
旧ソ連でも同様の事故が発生していたものと予想されるが、東側における核兵器運用の実態は必ずしも明らかでない。

などが考え出された。~
なお、ロシアは2007年に北極海上空での[[戦略爆撃機]]による戦略哨戒を復活させている。~
これは純軍事的にはあまり意味のない行為で、周辺諸国に対する[[示威行動>砲艦外交]]と見られている。~

**[[戦略潜水艦]]による戦略哨戒 [#p96fbfb6]
[[冷戦]]後半以降、戦略哨戒の担い手は[[戦略潜水艦]]へと交代していった。~
[[弾道ミサイル]]技術と宇宙開発の進歩により、適切に配置された潜水艦は世界中どこにでも核を投射できるようになったためである。~
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一方のソ連では、シベリア鉄道に代表されるご自慢の[[鉄道]]網に、貨車に偽装した発射装置を連結した列車を走らせ、線路のあるところからならどこでも発射できるシステムが考案された。
また同時期、[[軍事衛星]]の実用化により、地理的情報の長期秘匿が極めて困難になった。~
核ミサイルサイロや[[空軍]]の[[飛行場]]などは位置が特定されたため、[[核戦争]]の初期段階で喪失するものと予想されるようになった。~
[[相互確証破壊]]を維持するためには所在不明の[[核兵器]]が必要だが、現代でそうした秘匿が可能なのはもはや[[戦略潜水艦]]のみである。

**陸路による戦略哨戒 [#zb5609d9]
[[戦略爆撃機]]から[[戦略潜水艦]]へと移行していく過渡期に、以下のような核兵器秘匿法が試行されている。~

-通常の[[航空機]]に搭載可能な[[弾道ミサイル]]
-広大な地下トンネル網内に秘匿された車載型[[弾道ミサイル]]
-実際には核弾頭を配置されていない大量の偽装[[サイロ]]
-[[鉄道]]で輸送される貨車に偽装された[[弾道ミサイル]]発射装置

しかし結局のところ、どの方式でも陸上で核弾頭を管理運用する必要があるため、[[ヒューミント]]の回避が困難である。~
このため、運用人員を海中に隔離できる[[潜水艦]]ほどの秘匿性は持ち得なかった。


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